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前編

 二十一世紀のある年にA博士とその助手Bは、数百年前に死亡したとされるある大富豪の墓を見つけることに成功する。彼らは足掛け五年を費やした。A博士はその間に妻子に逃げられ、助手Bは七年つき合っていた恋人と別れる羽目になった。

 中世最大の富豪とも呼ばれる彼の墓にきっと莫大な財産が眠っている、しかし長い間その墓は発見されて来なかった。

 見つけるきっかけとなったのは、その大富豪の生まれ故郷にあったある枯れ井戸だった。墓はその故郷にあるに違いないと踏んだ彼らは、二年がかりで見つけるがそこはただの廃村。いくら探索しても廃墟と木しかあらず諦めかけていた二人が見つけたのがその井戸だった。見た目はただの水簿らしい枯れ井戸だったが、試しに深度計を降ろしてみたら地下数十メートルまでつながっていたのだ。

二人は確信する。この井戸の先に、大富豪の墓があるに違いない、と。一度装備を整えるために二人は拠点に戻る。



「まさか、こんな井戸が地下深くにつながっているなんて」 

 助手Bは降下用のロープをおろしながら、感嘆の声を漏らす。

「驚きだねえ」 

博士も驚きの声をあげる。

「しかし、博士。本当にこの先に大富豪の墓が?」

「確証は持てないけど•••、多分あるんじゃないかな。行って確かめるしか無いかなあ」

博士はいつものように呑気に答える。           

「ここが駄目でしたら、八方塞がりですね。私の婚期が終わる前に見つかるといいのですけど」

ため息まじりに助手は言う。博士は助手がもうすぐ三十路なのを知っていたので、声もかけられない。


 ロープを降ろし終え、早速二人は降下を始める。その職業柄これぐらい二人には朝飯前である。とは、言え博士はもう人生の三分の二を過ぎた五十代。体育会系元自衛官の助手が先導して安全を確認する。事前に発火マーカーを井戸に落として、酸素があることを確認しているため多少は安心して降りることができそうである。



 無事降り終えた二人は早速ヘッドライトをつけて探索を開始する。早速奥につながる道を博士が発見する。

「どうやら、奥につながっているようですね」

「これは、どうやら当たりみたいだねえ•••」

「早速、進みますか?」

「勿論そうしよう。なるべく日がくれる前に一段落ついておきたいからねえ」

「わかりました」

助手が先頭を歩き、それに博士が続く。墓荒らしを嵌めるためのトラップを助手は警戒しながら進む。もう数百年も昔の墓では機能していないことが多いのだが、過去に博士と潜った墓には生死をさまよう程のものがいくつもあったので、決して注意を絶やさない。

驚く程綺麗に舗装された道だ。幅も大変広い。側壁には一定の距離でランプがかけられていた。勿論明かりはついていないが。

「おお、このランプすごい年期はいってるねえ。あとで一個もらっていこうか?」

「そんな、ぼろよりこの先もっとすごいお宝が眠ってますよ。見つけたら一気に億万長者ですよ」

助手は大変たのしそうだ。それを感じとった博士は、

「君は少しお金にがっつき過ぎだと思うけどねえ」

と、つぶやいた。が助手は聞こえていないふりをした。



 歩くこと十分すこし、二人はなにやら壁にぶつかる。

「これは、壁ですかね•••?」

「いや、扉のような感じだねえ。開けられるかい?」

「見てみます。」

助手は、調べ始める。しばしのあと、


「木製のようです、もうほとんど腐りかけですが。トラップの類はないようです。簡単に開くと思います」

「よし、早速あけてみよう」

助手はうなずくと共に、ナップサックからなにやら取り出す。

縦横とも四五メートルをゆうに超すその扉に彼女はナップサックからとりだした指向性爆薬を半径一メートルの円状にしかける。


「さがっていてください。吹き飛ばします」

「やれやれだねえ、もう少し穏便に済ませれないのかい?」

「腐りかけとは言え、そこそこの厚さがありそうです。重機は、こんな狭いなか入ることはできないでしょうしそんなもの呼ぶぐらいだったらこうしたほうが安く、早くすみます」

「わかったよ、じゃ離れるよ」

 二人はすこし扉から離れて、起爆させる。くぐもった爆音とともに、少しばかりの煙が沸くが一瞬にして消える。

扉には綺麗な穴ができあがる。そして、そこからあふれんばかりの光がほとばしる。

 一瞬二人はあまりのまぶしさに目をつむる。


「••••••博士」

「不思議だねえ、こんな地下にこんだけの光があふれるなんて」

「私から離れないでくだいね」

「そんなに警戒しなくてもいいよ。確かに、不気味ではあるけどね•••」

「しておくに過ぎたことはありません」

助手はナップサックを脱ぎ中から、いくつかの部品に細かく分解された銃をとりだして組み立てはじめる。その脇で博士は一服し始める。しかし博士は禁煙していることを思いだしたが口うるさい妻はこの場にいないので、一本だけ自分に甘くすることにした。


 助手は民間用に払いさげられた自動小銃を肩にかけ、軽量化された防弾ベストを着る。

「いきましょう、博士」

「少し、仰々しい装備だと思うけどねえ•••では、行こうか」



二人は光溢れ出す半径一メートルの入り口へと足を踏みいれた。




つづく!!

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