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091:花と贄

作者: 糸雨 冷

追憶の苑様(http://farfalle.x0.to/)より題名お借りしました。

いつだったか、世間的に幼いといわれる年齢の俺が今よりもずっと幼い頃、

『花と贄』・・・そんな名前の絵を見たことがある。

確かその絵に描かれていたのは薔薇の棘の囚われた少女というありきたりなもので、

なぜか無性に、見ていて悲しくなったのを覚えている。


「真昼、真昼。」


俺の呼びかけに彼女は癖のない白銀の髪を翻し、青の瞳に俺を移す。

それだけで俺の心臓はぎゅうと捕まれたように苦しくなり、同時にひどく満ち足りた幸せな気持ちになる。

真昼が好きで好きでどうしようもない。

恋が幸せなことばかりじゃないだなんて、十分すぎるほどにわかっている。


「ヒナ?どうかした?」


いつの間にか少し離れた位置にいた真昼は俺の目の前にやってきていて。

綺麗な青の瞳を丸くして俺を見上げる。

愛しいと、思う。

誰よりも真昼を、恋しいと思う。

恋の痛みも苦しみも知っているのに俺は真昼が隣にいてくれるだけで幸せで、

そんな人から見れば安っぽいだろう幸せを手放すことなんて到底できやしない。


「なんでもないよ、真昼。」


ふわり、緩やかな笑みで真昼の追及をごまかして。

幼い日に見たあの絵は、俺と真昼のことだったんじゃないかと今になって思う。

俺は薔薇じゃなくて雛菊だけど、同じように真昼を閉じ込め、逃がすことができやしない。














『花は贄姫が愛しくて、自分に囚われていてほしかった

だけど贄姫は花を守りたくてその囚われの場所から外に出て行った』

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