巨人
「なにしてんの?」
それは、一番上等な服を着た兵士だった。
真っ青な髪を一つに纏め、左目には眼帯をしている。
目付きが鋭く、その手には大きな槍が握られていて、『蜻蛉切』と描かれているのが分かる。
「ダ、ダイダラボッチ様!」
兵士達が道の脇に退く。
つーか、こいつが偉いのか?
人って、わかんねえのな。
「じ、実は!この十字架を下げた奴が貴方のお友達の化け猫様を殺したのです!」
一般兵士の頬は少し紅潮していた。
それも無理は無い。
なぜなら、一番上等な服を着た兵士の彼女は、どこか雹と似ているスタイルを持っていたのだ(つまり、スタイル抜群)。
まあ、こんなに綺麗な上司なんだしな。
「な、なんだって!ならば、コイツはあっちが斬る!」
ダイダラボッチと呼ばれた少女は、巨大化した。
それは、眼帯を付けている醜い巨人。
持っていた蜻蛉切もまた、巨大なサイズ。
・・・アレ、振り下ろされたらひとたまりも無い。
シャルに助けてー、と言いたい視線を送るが、シャルは何かを期待しているかのような表情。
雹は・・・。
俺の横にいた。
「アイツを倒そっか、レイたん♪」
雹はうれしそうだ。
・・・さ、さっぱり、分からん。
なんで、そんなに嬉しそうなんですかい?
俺にはさっぱりわからねえや。
「・・・明確な殺意を持つ相手には、明確な殺意で、だ」
俺は首の十字架に手をかける。
すると、一振りの日本刀へと姿を変えた。
大きさこそ、蜻蛉切よりは短い。
受け止めれるかどうか心配だけど、アイツがまた妖怪なら、破魔札が聞くはずだ。
「何をグダグダと・・・!お前らはそこに下がっていろ!」
ダイダラボッチが命令すると、一般兵士達はサッ、と脇に退いた。
慣れた動きだ。
つーか、完全にダイダラボッチ任せなんだろうなァ?
俺がダイダラボッチの槍を振り下ろしてくる攻撃を受けていると、兵士達のボヤキが聞こえた。
「ほんと、都合がいい上官だよな。」
「ああ。俺らの言うこと、何でも聞いてくれるんだぜ」
うるせーな。
つか、可愛い子にいろいろやらしてんじゃねえよ!(by俺)
俺なら、可愛い子に何もさせねえぜ!
むしろ、俺が全てするさ!
・・・っていうのを、雹とシャルとダイダラボッチには聞こえないようだ(当たり前だ。俺の聴覚はフツーと違うし)。
「なあ、ダイダラボッチ。もしもさ、お前が知らぬ間に誰かに使われてたら、お前はどうする?」
「!」
はあ。
気付いてたのな。
なのに、よくぞ使われてたもんだ。
「お前なんかに何も分かるまい!」
またもや、ダイダラボッチは槍を振り下ろす。
というかね。
同じ攻撃は二度も当たると思うなよ?
残念ながら、な。
俺はすぐさま、槍に破魔札を貼り付ける。
すると、破魔札から電撃が走ったのか、ダイダラボッチは悶えている。
「く、くわあ・・・」
辺りを見回すと、一般兵士は一人もいない。
帰ったのか?
嫌な奴らだな、マジで。
フツー、置いていくのか?
こんな見事なやられっぷりを見せる美女を。
「お、お前を殺す・・・!」
ダイダラボッチは最後の一念で槍を俺に振り下ろす。
だけど、破魔札の力でそれは消失した。
どうやら、破魔札はアヤカシの力を消し去る能力があるらしい。
謎しか膨らまねえよ、畜生。