雪女の用心棒
妖艶なお姉さんキャラ、参戦です。
もしかすると、初めてかもしれない。
こんなキャラ(*二次創作のオリキャラを除く)。
翌日。
俺は城から抜け出し、城下町へ。
色々、売ってた。
うん。
ちょうど、城下町の奥に行くと、何かを売っているようだ。
「はい、昨日捕まえたばかりの雪女!肉欲をそそるような身体が堪らないねえ!」
奴隷商人っぽい。
見物人が囲んでいるのは、雪みてえに肌が真っ白な女。
嫌悪の目線で商人を見ていない。
全てに絶望したかのような目だ。
「さあさあ!早い者勝ちだ!」
商人は彼女に頬擦りをする。
彼女は抵抗をするそぶりを見せない。
おいおい。
これじゃ、思い通りにされるぞ、お前。
俺は気付けば、群衆の中に飛び込んでいた。
「お?お兄さん、あんたも買うのかい?」
今は夜。
夜だと、俺は悪魔の姿に変化しないらしい。
「だーれが買うって言った?掻っ攫いに来たに決まってるじゃねえか」
商人の首に俺は手を伸ばす。
商人の顔はどんどん、青ざめていく。
「キ、キマハ・・・・・!」
辺りの商人の仲間は、スーッと現れる。
武器を構えて。
全員が全員、刀を持っていた。
俺の居た国となんか、同じことしてね?
昔の時代の。
俺は首の十字架が光っていることに気付いた。
それを取ると、十字架は刀へと姿を変える。
光線剣と同じ、形に。
刃は光ではないけれど。
数人が一斉に襲い掛かってきた時、俺は物心付いた時から研ぎ澄ましていた勘のおかげだろうか。
擦り傷だけで澄んだ。
攻撃を受け止め、押し返す。
そして、そこから刀を弾き返す。
受けとめ、押し返して、弾く。
この工程を俺は延々と繰り返した。
「ハァハァ、ようやく掃除完了・・・」
疲れて、息が荒いまま、俺は雪女の元へと行った。
「なぁ、大丈夫か?」
「私に砕けた口調で話しかけようなんて、良い度胸ね、坊や。・・・嘘よ。私を助けてくれた、王子様なんだから、それくらいは許してあげるわ。」
改めて、俺は彼女を見つめる。
確かに、スタイルがいい。
緊縛されているが、そこがエロスを引き立てる。
「ねえ、お姉さんの身体、綺麗だから見蕩れちゃってるの?別にいいけど。焦らすのはやめて」
な、なにいってんだコイツ!?
さっきから、町の奴らが俺と付き合ってるかのように見てるぞ!?
どうしてくれんだ!
まあ、先に解くか。
俺が雪女の縄を解いていると、彼女は無言だ。
ようやく、俺は解ききった。
軽く15分は経ってるよ、うん。
「やっぱり、自由っていいわね。そう思わない?ご主人様♪」
「は、ハァ!?なんで、俺がご主人様!?明らかにアンタの方が、年上だろうが」
驚いた。
まさか、こんな美女にご主人様って言われるとは思わなかったし。
・・・城に連れ帰ったら、シャルに殺されそう。
妬きそうだよ、あの子。
「ん?彼女がいるみたいね?それなら、私とは浮気しちゃえばいいのよ。私、坊やのことが気に入っちゃったし」
「坊やじゃねえよ!」
「じゃあ、なんて私は呼べばいいのかな?」
意地悪な笑みを浮かべて、雪女は俺に聞く。
キマハの名を聞いて、さきほどの奴らはあんな反応をしていた。
コイツもあんな反応をするのだろうか・・・?
「レイドだよ。ただの」
「その前に木間派って付くんでしょう?隠さなくてもいいわ。お礼として、私が貴方のお姉ちゃん兼メイドしてあげる♪」
「メイドはしなくていい!」
「・・・お姉ちゃんはして欲しいのね?」
ニヤニヤする雪女。
チッ、揚げ足取られたか。
「ていうか、名前なんていうんだよ。俺だけ名乗らせるなんて、酷すぎる」
「そうね、レイたんは甘えたいものね。私は雪女の雹。なんて呼んでも、私は許してあげるけどね、絶対零度のレイたん♪」
俺が十字架が刀へと化したモノを持っていない、左腕に雹は抱きついた。
絶対零度って、お前もまたアルフレッドの手先か何かなのか!?
・・・あーあ、思い出したくねえや。
「ここに居られましたか、クロス様。」
衛兵だった。
俺に有無を言わせず、雹ともども連行された。
城では、シャルが凄い心配そうだった。
「クロス様!ああ、心配しましたわ!怪我はないかしら?」
俺の全身を舐めるように見やがる・・・。
遠くで真っ白な獣ががるるる・・・と吠えている。
こわっ。
「ねえ、レイたん。今度、私と海行かない?」
「・・・真夏に海行ったら、絶対溶けるだろ。自分の立場を弁えろ、雪女」
思いっきり、罵倒を浴びせたはずなのに、何故か雹は喜んでいた。
・・・マゾなのだろうか。
「きゃー。もう、痺れるわ。レイたんの子なら、生めそう・・・」
雹は俺の背中に回りこむ。
オイイイイイイ!!!!
初対面の美女に言われちゃったよ!
「駄目!クロスはわたしのモノなんですからね!」
シャルは取られまい、と応戦。
雹はニヤニヤしながら、シャルの胸を突く。
「私の半分もないくせに、生意気言うんじゃないわ。貴方じゃ、レイたんを誘惑するのは不可能ね。」
す、すげえ・・・。
一国の女王と雪女が男を取り合ってるよ・・・。
・・・俺をですけど、なにか?
「クロス(レイたん)は、どっちを選ぶの(んですか)!?」
二人は一斉に俺に向かって、振り向く。
なんて答えればいいのやら。
ていうか、雹め。
俺のメイドになるとか言っておきながら、メイド服着る気がねえんだな。
着物の露出がすげえし。
メイドと言うより、女中と言ったほうがいいと思う。
俺は決めた。
雹とだけは、旅行に行かない。
おそらく、シャルとも行かないに違いないだろうがね。
旅行には、だけど。
「待て。なあ、シャル。」
「はい?」
「お前、城から出たことは?」
「ありませんが」
うおおおし!
箱入り娘ェェェェ!
「じゃ、行くか。外」
「え、行って宜しいでしょうか?」
「ったりめーだ。世間を知るんだよ。な、雹?」
「あ、はい」
不意を突かれた雹はかなり可愛い。
きょとん、としているからだろうな。
城下町は提灯が沢山出ている。
祭りでもしてんだろうか?
俺は窓を開けて、シャルに手を差し出す。
「行くぞ、外に」
「分かりました、クロス様」
ぽっ、と頬を赤らめたシャルの手を握り、俺は外に出る。
その後を、さきほどまで商品にされていた雹が慌てて続く。