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VanpireHunter

「・・・わたしたちの国、ヴラド王国はヴァンパイアが支配している国です。近年、隣国のヴラッディリア公国の王がわたしを嫁に欲しいといってきました。わたしは丁重にお断りしたつもりなのですが、彼は全く納得していないようで。そして、19年前。ヴラッディリア公国がわが国に攻撃を始めました。

最初こそ、わたしたちが善戦だったのですが、ヴラッディリア公国が持つ、古代兵器により、我が国は全滅寸前までに追い込まれました。そこで、わたし達は探したのです。『キマハ』を。キマハとは、同属殺しを可能にする、異端の存在。貴方がたの世界でも聞いたことがあるはずですよ?」


シャルの言ってることがわかんねえな。


・・・ていうか、俺らの戦争と理由っつーか、大体似てるよな、戦況。


ったく、なんなんだよキマハって。


元々、変な名前だなーって思ってたが、もっと変な意味があったなんてな。


「それってさ、ダンピールだっけ?」


「はい!・・・キマハの意味は、『将軍』、『同属殺し』と分かれています。幸いなことに、ヴラッディリアはキマハの存在を否定しているのです。彼ら曰く、『キマハはいらない。我らには、古代兵器が存在しているのだから』だそうです。ほんっと、気持ち悪言ったらありゃしません。確か、貴方とわたしが出会った場所は街でしたよね?」


やたらと嬉しそうだなァ・・・、シャル。


惚れるぞ、コラ。


・・・まあ、確かにそうだな。


あそこ、どちらかと言うと廃墟っぽかったし。


「あそこは、キマハ・・・つまり、貴方の先祖が建てた要塞なのです。貴方はダンピールのキマハの血を確かに引いているのは、我々には分かりました。・・・ですが、何世代も飛ばしているので血が薄れているのです。ヴラッディリアに勝つには、キマハの力が要るのですが、薄れては効果がない。だから、わたしはなんとか、貴方をこの王国に召喚し、貴方を悪魔にするしかありませんでした。・・・申し訳ありません、わたしの身勝手で」


ぺこり。


シャルは俺に謝った。


ったく。


言語が通じているのを見ると、同じ地域での戦争なのかな?


まあ、昔やったRPGとなんか話が被っているような気がしないこともないけど、いいや。


俺はわしゃわしゃとシャルの頭を撫でてやった。


「謝るんじゃねえよ。俺をこの世界に呼び寄せて、悪魔にした理由は分かった。用は、ヴラッディリアを潰せばいいんだろ?」


傭兵をしてたんだから、引き受けよう。


無理な仕事ではなさそうだ。


この悪魔としての力はまだ分からない。


だからと言って、あそこで死にそうだった俺を蘇らせてくれたシャルのことだ。


よほど、ヴラッディリアの王が嫌いなんだろうな・・・。


こんな可愛い娘、泣かすんじゃねえや。


犯罪だ、こんにゃろう。


「ということは、引き受けてくださるんですか?」


シャルは俺の手に手を置き、眼をウルウルさせ、上目遣いで見る。


俺より背が高いってのに。


可愛さは幼いな。


「まあな。ザラでもねえから、こんなのは。この俺に出来ねえことなんか、あるわけねえんだよ、残念ながらな。まだ俺の悪魔としてのチカラはよくわかんねえけど、シャルを信じるよ」


ニッコリと笑って、またシャルの頭をワシャワシャする。


シャルは涙を浮かべ、俺に抱き付いてきた。


「・・・貴方しか頼れるのは居ないんです。」


俺は目を閉じ、シャルを抱き寄せる。


昇ってくる太陽から守るかのように。



寝室。


ヴァンパイアは太陽を嫌う。


そのため、夜明けになるとヴァンパイアは眠りに付くのだ。


ガラス張りの窓で見晴らしがいい部屋をあてがってもらったのだが、全ッ然眠れねえ・・・。


カーテンを閉めているので、真っ暗。


それでも、目が利くのは悪魔だからだろう。


相変わらず、尻尾は生えているし、目は赤い(鏡で見た)。


俺が今着ているのは、民族衣装のようなものだとか。


真っ黒で背中に『千年桜』と描かれている、袖なしの羽織。


真っ黒で彼岸花の模様が描かれている、ズボン。


俺が先ほどまで着ていた、服は今、畳まれていて、タンスに入っている。


それにしても。


「かやぶきの屋根って、すげえな・・・」


城下町は、俺が居た街とは違い、静かな雰囲気が漂っている。


周りの壁を見る限り、アレが侵入を防いでいるのか・・・。


尻尾をゆらゆらと揺らめかせていると、俺は変なものを見つけた。


机に置かれた、奇妙な武器である。


槍といえば槍で。


刀と言えば刀で。


剣といえば剣で。


鎌といえば鎌で。


槌と言えば槌で。


正直、分かり辛いものだった。


「なんなんだ?この武器は・・・」


光線剣(ビーム・ブレイド)はない。


光線剣(ビーム・ブレイド)はないのだろうか?そうだとすると、『何か』が遅れているのかもしれない。


机に置かれた、一冊の本。


題名は『キマハ』。


どうやら、絵本のようだ。


『むかしむかし。ちをほっするものたちが、ひとつのちいきにふたつのくにをつくり、くらしていた。

あるひのことだ。ひだりちいき、とよばれるくにのおうさまがみぎちいき、とよばれるじょおうさまとけっこんしたいといった。じょおうさまは、ひだりちいきのおうさまがだいきらいだったので、ことわりました。おこったおうさまは、かんかんになり、じょおうさまのくにをおそいました。さいしょは、ゆうりだったじょおうさまのくに。おうさまは、こだいからつたわるぶきをしようし、じょおうさまのくにのへいしたちをころしつづけました。さんげきのような、こうけい。じょおうさまは、キマハ、とよばれるせんしをよびだすことにしました。キマハはいせかいにすんでいて、まさにさいきょうといってもいいほどのたたかいっぷりでした。キマハはひだりちいきのしょうぐんたちをあっとうてきなちからをもつ、ひだりてでたおしていきました。いよいよ、おうさまのしろです。へいしたちをひだりてでいっそうして、ついにえっけんのまに。おうさまはせんとうたいせいでした。キマハはみずをえたさかなのように、おうさまをひだりてのきょうりょくなちからでたおしてしまいました。くににもどったキマハは、じょおうさまとむすばれ、しあわせにくらしましたとさ』


俺は絵本を読み終えた。


まさに、今の状況と同じだ。


だけど、今は眠い。


布団にもぐりこむと、俺はすぐさま眠ってしまった。




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