裏切り@Joukansama
俺とシャルと雹は、ダイダラボッチの面倒を見てやることにした。
いや、正しくは看病か。
近くの小川で水を汲んできて、ダイダラボッチの頭に載せる。
今、ダイダラボッチはチカラを使い果たしたのか、普通の女の子の姿だ。
顔を近づけてみると、眼帯をしているのが凄く痛々しく見える。
今は、俺の上着をかけてやっている。
寒いといけねえからよ。
「・・・ん」
ダイダラボッチが目を覚ました。
「クロス様!」
シャルがててて、と可愛らしい様子で俺のほうに歩いてきた。
ダイダラボッチが目を覚ましたのが分かったのだろうか?
雹は寝てるけどな。
「お、お前は・・・!」
ダイダラボッチは身じろぐ。
まるで、俺のことが怖い、と言いたげだ。
「よう、お目覚めかい?つーか、お前の槍凄いよな」
「・・・何故だ。何故、私を殺さなかったんだ!」
ダイダラボッチは、眼帯をしていない目から涙を流した。
「俺を殺す気がなかったからな、目が」
「!」
ダイダラボッチは、両手を顔に当てて泣き出した。
「わ、私は・・・。いつも、いつもバケモノと呼ばれてっ・・・、寂しかったんだ。」
「へえ、それなら俺らの言うこと聞けばいいじゃないか?」
その声は、先ほどの兵士だった。
シャルと雹の腕を掴んでいる。
「悪魔のオンナの味、どんなのなんだろうなァ・・・」
兵士は舌なめずりをしている。
俺じゃないよ?
あっちのな。
「離せ!馬鹿者!」
これは、シャルだ。
ダイダラボッチの兵士は、言うことを聞くはずが無い。
こんなことを言われて、離す奴はそもそも捕まえない。
雹は無言だ。
どこか、期待しているかのように俺のほうを見てる。
期待しても何もでねえけど?
そのとき、雹はダイダラボッチの兵士の腕を凍てつかせ、雹は液体となり、手の中をすり抜けた。
そして、俺の横に移動して、元の姿に。
「成功♪」
「(き、きたねえ・・・)」
チラリ、とダイダラボッチのほうを見る。
どうやら、アイツも同じことを考えていたらしい。
「アーッ!一番、好みだった奴が逃げやがった!」
「待て。まだ、コイツがいるだろう」
ダイダラボッチの兵士達は、本性を現した。
その姿は、下級だと思われる鬼。
だって、棍棒が妙に短いしさ。
「ダイダラボッチ、こんな奴ら、斬ってもいいか?」
ダイダラボッチは、俺の横に何故かくっつくほど近づいて来て、俺の耳にささやく。
優しい声で。
「・・・ダイダラボッチではなく、えいなと呼んではくれないか?」
どうやら、可愛い所もあるらしい。