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おまけ①

隣のクレイジーガール~藤田と宮島~の番外編です。本編を読んでいただいてからの方が良いと思います、と堂々と言えたらいいなと思います。本編もよくわからんので結局は何から読んでも変わらないと思います。・・・はいすみません、順番に読んでいただけると幸いです。


これは俺が小学校に上がってすぐの話。

本当に隣に住む藤田だけが知り合いだった頃の、今思うと可哀そすぎる友人関係をもっていた俺は、なかなかクラスで馴染むことができなかった。女子は愚か、男子でさえも余りに活発すぎてついていけなかった。

そういうときにいつも絡みつくのが、いわゆる苛めと言う類いだ。まんまとそれに引っかかった俺は、一時期日常的に人から避けられるようになってしまった。

その原因である奴はいつものように俺んちの居間のコタツで堂々と煎餅を頬張りながら、俺をにらみつけた。

「何、一人でぶつくさ言ってんの」

「いや、ちょっと昔のことを思い出して・・・」

 そういって藤田の右隣に腰をおろした。

「ふーん。あんたって昔からあたしがいないダメよね」

「・・・俺耳と頭がどうかしたかもしれん」

「そりゃ前からよ」

冗談だよばか。あと遠回しに藤田の間違いを指摘してんのに気付いてくれ。

「そーいや、あたしあんたを助けたような・・・」

俺はふとさっき思い出したことを、煎餅片手に再度鮮明に回想してみた・・・


・・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・

「へん、みやじまダッセー。こんな簡単なかけっこでこけてやんの」

「いいじゃん、みやじま鬼ごっこの鬼なら皆つかまんないもんな」

 砂場で盛大に(滑って転んだのではなく)バク転をかまして着地に失敗した(と俺は思っている)俺を寄って集って男子は笑っていた。

 言い返しても更にネタにされて無駄になると学んだ俺はじっとその場に居座った。しかし、頑丈な心までは習得出来なかったため、大抵こうして何分か経つと男子の嘲笑う視線に負けて泣いてしまった。

 今回も、正しくそのパターンで体育座りをして俯き喉と目頭に込み上げる熱い何かを吐き出した。

「・・・うっ、くう・・・」

「でた、おいまた泣いたぜ」

「男は泣き虫じゃ生きていけないってとーちゃんが言ってたぞ」

「そーか、じゃあみやじまは男じゃないのか」

 また笑いの渦が俺を取り囲んでる・・・もうどうしようもないとおもうと更に目が痛くなりいっその事死んじゃいたいと切に思っていたとき、右の方から男子の悲鳴と砂場に倒れる音がした。

 洪水のような瞼を必死に袖で拭うと、視界には倒れた男子に馬乗りになってる藤田が見えた。

「こんなよわっちくて、何が男だ。あたしに勝てないとか、ダッセーのっ」

 一回男子の上で跳ねると、ウゲッと蛙の潰れたような声がした。

「うわぁ、がっちゃん大丈夫か!」

「んだよ藤田、俺ら五人とお前一人じゃ絶対勝てねーよ」

 そーだそーだ、とブーイングが起きてる中、藤田は悠々と俺の前に立ちはだかった。

「・・・うっ、み、みおちゃん・・・」

 今でも覚えてる。そう、あいつは可愛く笑って―――

 ゴッチン、と俺の顔は派手な音を立てた。

 藤田に殴られたことが俺の目を真ん丸くさせて、痛さをも忘れさせた。

 周りの男子は呆気にとられてものも言えなかった。

「瞬ちゃん、痛い?」

 俺は一も二もなく頷いた。

「それじゃ、あたし殴っていいよって言ったら殴る?」

 いや、そんな無謀な仮定やめてくださいよ。

「・・・な、殴れないよ・・・」

 その答えに安心したのか、周りの男子に言う。

「ほら、こういう女子を殴れないような奴がホント男だよ。見習いなさい」

 別に女子だからって訳ではなく・・・という俺の弁解はきっと言わなくても皆に伝わっているはず。

 すると、遠くから数名の女子と担任の若い女の先生が駆けてきた。

「せんせー、ほらまたみやじまクンがガッちゃんやよっちんに苛められてます!」

「いつも言ってんのに先生信じてくれない」

「だって、吾妻くんや良也くん達がそんな事してるとは思わなかったから・・・あら、あなたたち何やってるの!」

 先生の呼びかけに藤田の呪縛から解放された周りの男子たちは、いつものように一瞬で顔をしかめさせて今にも泣きそうな顔をつくった(この早業で役者になれると思うようになってきた)。

「せ、せんせ・・・俺はただみやじまと遊んでただけで・・・」

「本当ですよ、鬼ごっこやってて。それでこいつここでこけたから助けようと」

 先生は困った表情をさせて俺の顔をみた。

「本当なの?瞬一くん」

 結局いつもの通り、証拠のない俺一人の言うことなんかきいてくれないだろう。まるでマニュアルがあるかのように俺は言った。

「いや、ただこけただけで・・・」

「証拠、ありますけど」

 藤田は堂々と俺の台詞を遮った。そして、思いっきり俺の顔をセンセーに近づけた。このとき女の先生はいい匂いがするなーと思ったのは内緒だ。

「ほら見てください、この口の端が切れて血が出てるでしょ。あがつまになぐられたんですよ」

 血?それってがっちゃんじゃなくて・・・まさか。

「あら、ホント・・・吾妻くん殴ったのね」

「えっ?俺殴ってねーよ・・・ってゆーか殴ったの藤田じゃん!」

 がっちゃんは見る見るうちに顔を真っ赤にさせて叫んだ。

「え、えぇっ?未央ちゃんそれは」

 嘘なのに堂々と勝ち誇ったように言った。

「せんせ、騙されちゃダメ。だってあたし瞬ちゃんを助けるために行ったんだよ。それであがつまが瞬ちゃん殴ってたからあたししかえしにあがつまに馬乗りしたんだもん」

「いや、されたけどね。それは違うじゃん!」

「されたの?やっぱり吾妻くん殴ったのかしら」

 なんて、恐ろしい女なんだろう・・・これじゃあ先生がガッちゃんを疑ってしまうのも当たり前だ。

「とにかく吾妻くん良也クンたちはちょっと先生のところに来なさい。宮島くんのことについて話があるわ」

「えぇ――――っ!」

 文句を言いながらも仕方ないのかもう大人しくついていった。俺と同じく藤田の策略にはまってしまったのをもう諦めたのだろう。

 女子も去って行き、俺と藤田だけが砂場に残った。

 一応助けてもらった、というのだろう。

「ありが・・・」

「ちょっと強く殴りすぎた」

 藤田は俺を何故か睨みつける。

「もしあたしが苛められたときに、あんたに助けてもらうんだから今あやまらないでよね」

 これが一頭最初に藤田の照れ隠しだと分かった瞬間だった。

・・・

・・・・・・・

・・・・・・・・・・・


「あんなに昔は照れ隠しが可愛かったのに・・・」

ため息をつくと、突如隣の赤面した奴からアッパーが飛んできた。


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