「だって優しいだけじゃん」と婚約破棄されたので、まずは罵倒するところから始めることにします
「俺、お前と婚約破棄するから。なんかさぁ、飽きたんだよね」
久しぶりに出会って開口一番、王城の庭園でブスード王子はそう言った。庭園の木々から木の葉がひらひらと落ちてきて、秋の訪れを告げていた。
急に王城へ呼び出されたから覚悟はしていたけれど、本当に婚約破棄されるとは。理由も飽きたからなんて、相変わらずふざけた男ね。
「だってお前、優しいだけじゃん?どうでも良いことで、いちいち褒めてきてさ。面倒だしウザいし――ほんと、つまんないんだよね」
――貶しているつもりなのだろうけれど、褒められているみたいで悪くないわね。もっと褒めなさい。そうすれば婚約破棄の一つや二つ、許してさしあげますわ。
「今だってほら、俺がこんなに貶しているのに笑顔のままでさ。お前は感情のない人形かなんかなの?悔しかったらなんか言ってみたら?」
「……何でも言っていいのですか?」
「何でも言ってみろ。どうせくだらない褒め言葉しか言えないくせに」
「でしたら失礼して。――素晴らしい心のブスード様、縮めて心のブス。婚約の意味を分かっていない脳足らず。今までありがとうと言う価値もないけれど、ありがとうございました」
私は笑みを崩さずにそう言った。
気まずい沈黙。
「……言い過ぎじゃない?」
「そうですか?まだ心の底からあふれ出る優しさが抜けず、反省している所でしたけれど」
「……王族を侮辱した罪で訴えても良い?」
「何でも言ってみろ、という自分の発言にすら責任を取れない、落ちぶれ王子だと宣言してくださるのであれば。こんな情けない王子に成長してごめんなさいと、国王と王妃に土下座をされるのであれば」
「……やめとくよ」
ブスード王子は私から目をそらし、庭園を遠い目で眺める。庭園は一面、色とりどりの落ち葉が絨毯を作っていた。
「お前、案外強いんだな」
「私は普通ですよ。――ブスード様が弱いだけです」
「……なぁ、やっぱり婚約破棄は止めにしよう」
「嫌です。一度言った事も守れないのですか?」
「せめて夏の終わりまで一緒にいよう。それから考えようじゃないか」
ポツリとつぶやくブスード王子。
私はにっこりと笑みを浮かべる。
「絶対嫌です。もう、秋がきてしまったので」
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