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年下男と年上女~チャットから生まれた悲恋日記  作者: 星野 満


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7. 茂からの別れ話

※ とうとう茂は千鶴に別れを切り出しました。千鶴はどう反応するのでしょう?

✧─ VOL7 ─✧




「千鶴、僕たち別れよう」


「え、なぜ?」


 思わず私は頭が真っ白になったが、なんとか聞き返した。


「理由は色々ある。なによりコロナ前の君は、いつも僕と逢うと不機嫌でつまんなさそうだった」

「そんなことない」


「いや、映画を見て、僕が話しかけても相づちも打たないし、僕の家で映画を見るとすぐ寝ちゃうじゃないか」


「それは──疲れてるから……」


「そんなに疲れるなら、デートは中止してと断れば良かったんだ。僕はいつも君を送迎してる。逆に僕の方が疲れてるのに、君は行きの車の中でも寝てばかり。これは流石に失礼すぎるだろう!」


「あ、ごめんね。私、寝ちゃってたかも」

「それに僕の映画サイトのコメント欄もこの頃、ちっとも書かなくなったよ」

「あ……」

「というよりは、最近は僕のサイトすら見てないよ。以前は僕が更新すると必ず反応くれたのに。君は誰よりも一番早くコメントくれた……言いたくないけど、あれってPV数を映画関係者は観てるんだ」


「あ、ごめんなさい。そうね、最近は見てなかったかも」


 ──確かに、サイトの未読は本当だ。

 

 でもそれは……私にも少なからず理由があった。


✧ ✧


 この一年以上、茂のサイトは随分有名になり映画会社から試写会のチケットや、初日舞台挨拶の取材依頼も来るようになった。


 そうなると茂は平日も有給を使ってカメラ片手に俳優たちの写真を取り、その試写会の記事ばかり書くようになった。



「ゴメン……でも茂のサイト、昔とはちょっと違ってきたよ」

「どう違うっていうの?」

「映画の試写会で俳優や監督写真ばかり出して、昔みたいに映画本体の批評しないじゃない。前は独自の切り口で面白かったのに……最近は取材のせいか、おべっかばかり……」


 あ、これ不味い──。

 

 私は茂に言ってはいけない事を、うっかりしゃべったと途中で黙った。


「そんなの当たり前だろう!取材依頼が来るのは、制作側が僕のサイトを気に入って『どうか宣伝してください!』って意味なんだから」


「そうだけど……」私の声は小さくなる。


「わかったよ、千鶴が僕の取材を嫌ってるのは前から知ってたけど、僕の努力を理解してくれないんだね」


「違う、それは違う。私……」


「もういいよ、君は当初から僕の映画の一読者としてよく感想くれた。僕は君がサイトの一番の理解者だとずっと信じてた──だから僕は【ツルミンさん】に会いたくなった。──だけど君は何もわかってなかったんだ。仕事と両立しながら、ここまで業界に名が知られた僕の苦労なんて……何もわかってない!」


「茂……私……」


「ふう……」茂は大きな溜息をついた。


「千鶴、やっぱり僕たち終わりだよ。もう別れよう、理由は説明した通りだ。それにいま僕は新人研修が大変だし、映画サイトの更新もある。前みたいに呑気(のんき)に君と週末デートしてる暇はないんだ」


「………」私は何もいえなかった。


 茂のいう事はすべて的を得ていたからだ。


「正直、この一年ずっと別れを考えていたんだ。千鶴にいつ言おうかって。──でも、どうしても君と別れる決心が僕はつかなかった……だって……君は既に僕の一部になってい……から……」


 最後の言葉は、茂の声は、どんどん消え入りそうだった。


 ──あ、茂が悲しんでる。


 茂は哀しい気持ちになると、声がとぎれて聞き取れなくなる。


 私はすぐに分かった。


 ゴメン、茂。 ゴメン悲しませていたんだね。


 

 その後、茂は少し黙っていたけど──ようやく普通の口調に戻った。


「そんな時にコロナになった。僕もこれで踏ん切りついたよ! コロナになったのは運命なんだろう」


「茂……」


「千鶴、今まで色々ありがとう。こういっては何だけど、千鶴の料理、最初よりずいぶん上達したね! ほんとうに美味しかった。これまでたくさん感謝してる。君との想い出は楽しいことばかりだったよ。最後は悪いがお互いこのまま会わずに別れよう。──あ、僕ばかり一方的に喋ってゴメンね。最後になにか君も話してくれ、何でもいいよ、僕の悪口でも、文句でも、何でもいい」


「茂……」


茂はしばらく私が話すのを待ってたが、私が何も応えなかったので、とうとうしびれをきらしたのか。


「何もないのかい?──ウン、ならいいや、はは無理しないでくれ。──それから君の荷物なんだけど。パジャマとかエプロンや靴とか他にもあるけど、どうする? 全部僕が宅配で送ろうか? あ、お金は全て僕が払うから気にしないでいい」


「あ……」


 私はすぐには応えられなかった。


 ただ、とうとうこの日が来たんだ──と私は悟った。

 

 

 ツーッと一筋の生温かい涙が私の右頬をつたわっていく。


 ──ああ、ここまで思いのほか、とっても長かったな。



 あの新宿の『談話室・橘』で初めて茂と出逢ってから早七年──。


 ようやく私と茂の恋愛物語の最後の日が訪れたのだ。




※ 申し訳ありません。7話が最終回でしたが余りにも文字数が多すぎて……。

  8話で最終話とさせていただきます。m(__)m


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― 新着の感想 ―
すれ違いの原因のひとつに、シゲルくんの映画サイトの人気も影響してたんですね…。ほんとなら喜ばしいことのはずなのに、それだから内容も変わってしまったり、シゲルくんにしたら、千鶴ちゃんが応援してくれなくな…
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