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年下男と年上女~チャットから生まれた悲恋日記  作者: 星野 満


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6/8

6. 久しぶりに電話をかけたら

※ここからは茂と千鶴はすれ違っていきます。

 ✧─ VOL6 ─✧




 お決まりの週末ドライブデートを数年間、続けた茂と私。


 こう何年も週末デートを繰り返すとお互いトキメクなんてなくなる。

 安定といえばいいが、ワンパターン過ぎて最初の二、三年の何をしても楽しかった時間は減った気がする。


 私も茂も同じ気持だった。


 付き合い始めから盛り上がったドライブ車中の“ビートルズ歌当てゲーム”もしなくなった。


 さすがに耳音痴の私でも毎回同じビートルズの曲を聴けば、どの曲をポールとジョンが歌っているかは覚えた。すると茂もこの一年くらい、あんなに車中でかけていたビートルズの曲を流さなくなった。


 毎週末の映画やアニメ鑑賞デートばかりでは新鮮さも失っていく。

 時には気分転換も兼ねて二、三度一泊旅行もしたが、二人共、根っからのオタク気質なのか、旅行より家でまったりしたいタイプだった。


 平日は遅くまで残業をしている茂にしたら尚更だろう。

 送迎途中のレトロなファミレス以外、外食もほとんどしなくなった。

 

 ただ旅行をしない一番の理由は私だ。

 旅行にいくと決まって体調を崩したのだ。

 

 茂は口では『僕もあまり旅行は好きじゃないから』と笑っていたが、それは本心ではないのかも。 

 

 茂は優しいからさりげなく気を使う。

 私が何か嫌だと分かると、すぐに気付いた。


 いつしかそんな茂の優しさと、思いやりを当然のように私は受け止めていた。



✧ ✧

 

 付き合って七年目ともなると全てがマンネリ化していく。


 更にお互いの環境も変わっていった。


 実家の父親の持病が悪化して、母も一人きりになると心細いという。そのため、私がちょこちょこと実家に立ち寄り、週末デートもままならなくなった。


 たまにデートしても、私も疲れやすく以前のように、夜通し映画を見る気力はなくそのまま寝むりこけてしまう時もしばしばあった。


 そんな私にいつしか茂も不機嫌となり気を使わなくなっていく。

 

 すると、私たちはちょっとした事でケンカをするようになった。時には何日も口も聞かない時もあった。

 

 そうなると悪循環でお互い傷つきたくないから会話すらもしなくなる。

 ドライブ中も音楽を流すだけで、必要以外はほとんど話さなくなった。



 そうこうしている内に、世界はコロナ禍という新たな未知のウイルス【新型コロナウイルス感染症】の世界的流行がおきた。



✧ ✧


 コロナ禍は私と茂の運命を変えたといってもいい。

 

 父が感染して入院した──。


 私には姉が一人いたが、既に結婚して地方に住んでいる。

 さすれば、同じ東京に住んでいる独身の私が、気弱になった母の面倒をみなければならない。

 

 平日も母の為に、実家に寝泊まるようになった。

 従って茂との外泊デートも中止になる。



 また、茂にも職場で変化があった。

 春になると部署異動があって茂は役職も上がり社員教育をする立場になった。


 研修が多忙なせいか、以前は頻繁にあったメールの連絡さえこなくなった。


 そんな時──。

 土曜日の午後、私は茂に電話をかけた。


✧ ✧



『あ、茂、元気?』


『千鶴?……久しぶり、珍しいな、君から電話なんて』

『あ、うん。最近連絡なかったし。メールの返信もなかったから』

『……仕事で忙しかったんだ、色々……』

『そうなのね……研修大変だね』

『まあね……でも充実はしている』

『そうか……』


 なんだか、ひっかかる。

 

 ──茂の声がやけに冷たく感じる。


『茂、もしかして彼女できた?』

 

 私は自分でも思いがけない言葉を口走った。


『え……なんで?』

 受話器の茂の声が少し戸惑っている。


『だって、こんなに連絡してこないって、私たちつきあってから初めてじゃん』


『…………』

 茂は無言で答えない。


『茂、聞こえてる?』

 

 私は声を少し荒げた。

 久しぶりの電話のせいか茂の声は聴こえづらかった。

 あまり私から茂に電話をかけないせいもあるのか。


『あのさ、なんでそんな事を聞くの? そんな人僕にいるわけないだろう!』


 茂はびっくりするほど声を荒げた。


『あ!』


 茂が私に怒鳴(どな)るなんて、めったにないから私は驚いた。


『千鶴はさ、僕がなんでこんなに長く連絡しなかったか本当にわかんないの?』


『え?』


『やっぱりそうか……』

『え、わかんないよ』

『あのね、僕は千鶴に怒ってたんだ』


『──怒ってた、私、茂に怒ることした?』


 寝耳に水だった。


 ──茂が私に怒ってる?


『したよ。一カ月も連絡しなければ、普通そう思うだろう?』

『え、だってコロナだったから、てっきり感染が怖くて連絡がないんだとばかり』


『はあ? コロナだってメールくらいするだろう』

『あ、そうだね……』


 確かに言われてみればそうだ。

 コロナで会えずともメールや電話は可能だ。



 でも、なんだろう──。

 私の方はコロナになってから、実家の親の事で日々奔走していた。


 些細なことばかりだがマスクがどこに行っても買えないから、薬局にいって店が開く前にマスクを買う客の列に並んだり、母が病院へ行く時も、コロナにかからないよう慎重を期していた。


 正直いうと、実家にいる間は茂を忘れて連絡すらしなかった。

 

 だって、これまでは必ず茂からすぐに連絡くれたから。

 でも確かにそれは私の傲慢……だったと思う。


 私は無言の間、最近の出来事が頭を駆け巡っていた。



 その時、茂はぽつりといった。


『千鶴、僕たち別れよう』


『!?』


 私の心は一瞬、氷のように固まった。



※ここ迄お読みくださりありがとうございます。

どうか引き続きお読みいただけると嬉しいです。

(.❛ᴗ❛.)

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― 新着の感想 ―
同じことの繰り返しは、安心をすることもあるかもですけど、それが逆に退屈になってしまうこともあるんですね…。シゲルくんは仕事の忙しさ、千鶴ちゃんは家族の世話だったり。お互いが忙しかったり、大変な時にこそ…
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