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【第31話:魔獣契約とは】

 町の宿屋の二階、ランタンの光が木のテーブルを淡く照らしていた。戦いの傷跡を癒すため、三人と一体はしばらくここに滞在することに決めていた。

 窓の外では、遠く鍛冶場の音が響き、夜の市がまだにぎやかだった。


 八十郎が広げた地図の上に、リーナが指を置く。「この町から北西に行けば、魔獣被害が出ているという村があるらしいわ。調査してみる?」

 「その前に、俺たちの戦力を整理しよう」トウマが椅子に深く腰掛け、腕を組んだ。


 八十郎は彼に視線を向ける。「君の灼牙、あの力は圧倒的だった。どういう仕組みなんだ?」


 トウマは少し間を置き、グラスの水を一口飲んでから答えた。

 「魔獣は契約して使役することができる。でも大きく分けて二種類あるんだ」

 「二種類?」リーナが首をかしげる。


 「一つは、俺の“灼牙”のようなタイプ。言葉を話さない。召喚すれば、決められた能力を使ってくれるけど、それだけだ。命令は単純な指示しか通らない」

 「……なるほど。火器のようなものか」と八十郎が呟く。


 「もう一つは、言葉を話せる魔獣。召喚すれば一緒に戦ったり、戦術を相談したりできる。でもレア中のレアだ。俺はまだ契約したことがない」

 トウマは肩をすくめる。「灼牙も強いが、知恵がないから扱い方を間違えると暴走する。だから今の俺は力押しが多い」


 その説明に、八十郎とリーナは顔を見合わせた。

 「……ラグナス」リーナが小声で呟く。

 「そうだな、ラグナスだ」八十郎も頷いた。


 トウマが眉をひそめる。「ラグナス……? 聞いたことがある名じゃないな」

 八十郎は笑って、「この世界で、言葉を話し、共に考える魔獣に出会ったことがあるんだ」とだけ言った。

 リーナは続ける。「彼は敵じゃなかった。むしろ……私たちを助けてくれた」


 トウマは少し驚いた表情になり、視線を落とした。「言葉を話す魔獣か……お前たち、本当に面白いものを見てきたんだな」


 八十郎は地図をくるりと回し、指で円を描いた。「僕たちが次にやるべきことは三つ。アルマの育成環境を整えること。魔獣被害の調査。そして、ラグナスのような存在にもう一度接触できる可能性を探すことだ」


 アルマがその言葉を聞きながら、小さく手を挙げた。「ワタシ……もっと人間のこと、魔獣のこと、学びタイ」

 八十郎は笑みを浮かべ、頷いた。「ああ、君にも経験してほしい」


 ランタンの灯が揺れ、四人の影がテーブルの上で交わる。

 過去の因縁と未来への希望を抱えながら、彼らの“次の章”が静かに形を取り始めていた。



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