2軍キャンプ
2月1日春季キャンプ開始日。
ファタンとの3打席勝負から時は流れるのは早く、入団会見やコーチ、監督に挨拶などが遠い昔の様に感じる。
そんな俺はいま2軍キャンプにいる。
「あれが永谷……さんか」
「壁当てしてる」
「お前話しかけろよ」
「やめてくださいよ先輩、俺どう接したいいかわからないです」
「私だってそうだよ」
全部聞こえてますよ。陰口だったらもっと陰で言って欲しい。
「何してるの?」
今の陰口が聞こえてないのかユニフォームを着ている男が話しかけてきた。
「あ!俺は山梨守高卒8年目。ポジションは捕手だけど、最近は外野やったりしてるよ。よろしく」
そう言った後右手を出して来たので、それに答え握手をした。
「よろしく」
元気な……いや何も考えてないんだなこれ。
「何してるだっけ?壁当てですよ」
「そうなんだ。良かったら俺とキャッチボールしてくれない?」
やっぱりこいつ何も考えてないな。よくこんなずっと壁当てしているぼっちに話しかけてしかもキャッチボールしようなんて言えるな。そろそろ飽きてきたし付き合うか。
「じゃーお願いします」
「おーけー」
そういい適切な……いや結構離れてるな。
「いきますよー」
そう言って投げた球は俺のミットに吸い込まれて行った。
「いい球投げますね」
俺は意地返しに強い球を投げてみる。
「そちらこそ走ってますよ!」
この距離でもこんな強く鋭く送球ができるのに2軍か遠いな1軍というのは。
_________________
_____________
_________
「ナイスボール」
俺は今山梨とブルペンにいる。
「すごいですよ。俺舐めてました!超高校級と言っても昔の話今通用するはずないって、でも受けてみてわかりました!1軍当落線上の力はあります!」
「ははは。ありがとうございます」
それって褒めてないよね。
「それにしても2軍なのにカメラの数がすごいね。全部永谷君を撮ってるのかな?」
そうだろうな記者会見であんな啖呵を切ったんだから。俺は記者会見で折角なら投手、野手共にやってみたいと発言した。正直言って失言だったな。
色々と入団方法がブラッ……グレーの入団経緯でそんな発言なんしたら注目されるよな。
「辛口で有名な廣瀬さんもいる。見てよほら『ラビットズの若手捕手山梨を痛烈批判!!リード、態度と一軍レベルではない』これひどくない?俺が一昨年、一軍デビューした時の記事」
うんうんなるほど。
この廣瀬さんは信用していいな。満塁の場面で投手を茶化したような態度した、ベンチでバッターが走塁中に転んだ時に大笑いしていたなど本文が順当かつ正当な批判となっている。こいつひどいな。
「一軍デビューなのにこれは酷いね」
「そうだよな」
まぁ誰だって最初は失敗するし。うん
『山梨より私は多神を正捕手にするべきだと思う』
「多神って誰?」
「この記事の通りうちの正捕手様」
「おい!あれ」
「2軍キャンプに」
急になんか騒がしくなったな
「あ!監督だ」
「山梨君去年より会えることを期待しています」
「はい!」
「永谷君記者会見以来ですね」
「そうですね」
「君があの時二刀流宣言をしたので私の方に質問が多くきて困ってるんですよ」
「すいません」
「いえいえ、プロですから夢を大きくないと困りますよ」
「なので二刀流を目指すのに相応しいのかテストをすることにしました。投手に関しては夜屋さんからそれなりの評価を受けてたのでバッターとしてのテストをしましょう」
「はぁ」
「場所はここ、日時は2週間後、対戦相手は私。何か質問はありますか?」
「いえ……え!監督と対戦するんですか?」
「はい。では対戦までに調整しとくように」
「おい。まじかよ」
「布田川監督ががマウンドに上がるぞ」
「編集長に電話しないと」
まじですかぁ
「布田川監督200勝投手だけど大丈夫?」
大丈夫なわけないでしょ。