宇宙リサイクル
『デイブ、聞こえるか! 応答しろ! ああっ、デイブー!』
新造されたばかりの宇宙ステーション。その外部にスペースデブリが衝突し、損傷が発生した。
宇宙飛行士のデイブは修復作業に向かったが、別のデブリが再び直撃。彼の体は凄まじい勢いで宇宙空間へ吹き飛ばされてしまった。
視界が激しく回転し、地球の青き輝きがぐるぐると遠ざかっていく。しかし、どうすることもできず、やがて彼の意識は途絶えた。
深い暗闇の中を漂うデイブ。そして――
「ここは……」
目を覚ますと、そこは柔らかな光で満たされていた。彼は一瞬、自分が天国にいるかと思った。しかし、静かな声がそれを否定する。
『ここは我々の宇宙船内です』
「我々……? 誰だ、誰なんだ……体が……体が動かないぞ!」
動かせたのは頭だけだった。硬い音と振動が響く。どうやら自分は今、台の上に仰向けになっているらしい。
『落ち着いてください。すぐに動けるようになります。我々は宇宙空間を漂っていたあなたを発見し、保護と治療を施したのです』
「治療……? ああ、そうだ、事故が……助けてくれてありがとう」
デイブは少し落ち着きを取り戻したが、まだ混乱が拭えない。助けてくれた彼らは、おそらく宇宙人だろう。なぜ言葉が通じるのかはわからない。脳を解析されたのだろうか。もしそうだとすれば、驚異的な科学技術だ。しかし、これから自分はどうなるのだろうか……。
嫌な予感に、彼はごくりと唾を飲もうとした。しかし、できず、ただ意を決して訊ねた。
「あの、地球に帰してもらえるか……?」
すると、宇宙人は穏やかに頷いた。
『ええ、もちろんです』
「そうか……よかった……」
『ですが……』
「な、なんだ? 何か問題があるのか?」
『あなたの宇宙服は完全に機能を失い、肉体は凍傷や損傷により壊滅的な状態でした。我々は命を救うため、大規模な処置を施しましたが……』
「大規模な処置……?」
『ええ、あなたの体を完全に作り直さざるを得ませんでした。だから、感覚が以前とは大きく異なるかもしれません。そろそろ動けるはずですが……』
デイブはおそるおそる手を動かしてみた。視界の端で何かが動く。
まず影が見え、次に指がゆっくりと視界に入ってきた。しかし、それは自分が知るものとはまったく違っていた。
「これは……金属? 義手か?」
震える手を、ゆっくりと目の前に掲げる。銀色の関節がぎこちなく曲がり、僅かに反射する光が、まるで無機質な冷たさを嘲笑うかのように不気味に煌めいた。
「まさか、他の部分も……」
『ええ、それで――』
彼は慌てて起き上がり、全身を見下ろした。腕、胴体、膝、足――そのすべてが完全に金属に覆われていた。
「そんな! こんなことがああぁぁ……」
思わず顔を押さえた瞬間、硬い音が響いた。顔もまた、冷たく無機質な金属に覆われていたのだ。
「おれは、ロボットになったのか……?」
呆然としつつも、感情が残っていることにわずかに安堵した。次に怒りが込み上げてきた。しかし、命の恩人にその怒りをぶつけるわけにもいかない。デイブは握った拳をゆっくりと下ろし、視線もまた床に落とした。そのとき、ふと気づいた。
「ん? この足、どうして左右で形が違うんだ……?」
片足は妙に細く、もう片方は無駄にゴツかった。高さは合わせてくれているようでバランスは取れるが、妙な感じだ。手もまた左右で異なる部品が使われているようだった。
『すぐに慣れると思います。左右非対称なのは、宇宙ゴミを再利用してあなたの体を作ったからです』
「え、宇宙ゴミ?」
「はい。今、我々の星ではエコ政策が重視されているのです。かくいう我々も、宇宙ゴミの回収業者なんですよ』
「つまり、おれはリサイクル品ってことか……?」
『ええ、それで、地球に戻すことは可能ですが、できれば我々の星に来ていただきたいのですが。我々のエコ精神の象徴として、ぜひ……』
デイブは悩んだ。
もしかすると、彼らの星に行ったほうが扱いがいいかもしれない。
地球は今、ロボット産業と宇宙開発が急速に発展している。どんどん便利な世の中になり、人口が増加している一方で、自分のような作業員は使い捨て同然に扱われている。
こんな姿で戻ったところで、最終的に行き着く先はゴミ捨て場かもしれない……。




