アルバンのカボチャ日記
[大切なお友達]
カボチャ、君たちは何を思い浮かべるだる?
カボチャの煮たやつもカチコチのやつ? もしかして、ジャックオランタンだったりして。
それでね、それでね僕の名前カボチャっていいの!
とある夜の街。
キラキラと輝く星たちが飾られた夜空に三日月が昇っている。
この一番高い土地に建つ大きなお城のようなお屋敷がありました。名をカボチャ一族。
代々受け継がれた由々しき名前。
そんなお屋敷には不思議な一人息子の男の子がいました。
名をアルバン カボチャ。
そんなアルバンは今最も不思議なことがあります。
それは友達のカボチャが動かないことです。
それもそのはず友達とはカボチャそのものなのですから。
オレンジ色の大きなカボチャ。ザラザラとした触りここちが丁度いい品物です。
あっ、でも食べれませんよ? これは作り物ですから。
生まれた時、この一族には一人一個特注でカボチャを作るのです。色も様々で、緑や白、オレンジや赤。
沢山のカラフルなカボチャの中から職人が魂を込めて作るカボチャは世界で一つの品物になる訳ですよ。そんな生まれた時から一緒のカボチャをアルバンは友達だと思っているのです。
とある日。
月が沈み完全に街が寝静まった頃のこと。
暗闇が消えて、光が差しているアルバンの部屋には、ほのかにオルゴールの音が流れています。そして、動かないはずの布団がモゾモゾと動いていました。
「みんな、寝ちゃったかな?」
アルバンは大きなベットから足を出しました。
そして体を起き上がらせて、隣にあった箒を小さい手でしっかり握り始めます。
綺麗な杏色の瞳がキラキラと外を見つめて、くるぶしが隠れる程度のブーツに足を通しました。大きな窓を開けて、カーテンが靡きます。
友達のカボチャを背負い、アルバンはどこかに飛んでいってしまいました。
「わー外が明るいねェ」
ニコニコと笑いながら箒で空を飛ぶアルバンは大切そうにカボチャを抱えています。いつの間違えたのでしょう?
太陽に照らされて、キラキラと光っている長めの金髪に大きく笑う口。
「君と喋れるようになるよ!」
「だって今から、叔父様のところに行くんだもん」
「ふふっ、楽しみだね〜」
「………」
「わぁ、いい匂いがする!」
下を見るとツンツンした木の森の中、煉瓦のパン屋さんが建っていた。
「いいねー、人間さん達楽しそうねェ」
ー
美味しそな匂いに我慢できなくなったアルバンはパンを一つ買いました。
店員のおばさんからは、
「偉いね、お使いかい?坊や」
と褒めてもらいました。
嬉しそうにニコニコしながら笑う姿を見ておばさんはアルバンにパンを一つプレゼントし、
「ほら、これはおまけね」
「ありがとね〜」
と微笑んでくれたとか。
〈カラン〉となる金に輝く鈴の音を聞きながらドアを開けて外に出ます。少し離れた木の麓でパンを口に運んでみたら、とても美味しではないですか! アルバンは落ちそうになるほっぺを抑えながら、メロンパンとドーナツの二つを見事に完結して見せました。
ー
あれから何分飛んでいたでしょう?
アルバンは少し疲れたかのような顔をしています。そりゃぁそうですよ。
だってまだ八歳なんですから。
ですが、少し骨張ってきた手は強くカボチャを掴んでまいます。これが友情なのでしょうか?
「あっ、見えたねェ〜」
アルバンは急に楽しような声を出して、足をバタバタしだしました。
その綺麗な目の先には、山頂に小さな小屋がポツンと一つ。
「ほら、あそこが叔父様の家だよ〜」
カボチャに見せるように指を指したアルバン。それは赤子に物を見せるような行為でした。
箒を急降下させ、地面に向かって降り始めたアルバン。
地面についたまだまだ小さい足は小さく綺麗に咲いたミオソティス ミオマルクを一輪踏み潰してしまいました。
ですが、潰したはずの花がもう一度立ち上がりました。
あれ? よくよく見てみたら、藍玉ではないですか! 全ての花びらが宝石でできていて、決して枯れることない花ですね。
それにしても美しい。
風が吹きぶつかると〈キャラキャラ〉と笑っているように鳴る花。とても綺麗な草原です。
そんな大きな草原を歩き、小さな小屋についている木製のドアを叩きました。
石煉瓦造りの家に大きな煙突。明らかに魔法使いが住んでいるような不思議な小屋。
「叔父様〜、起きてる?」
またカボチャを背負い箒を手に持っています。とても可愛い姿のアルバンは足踏みをしています。
そんな時ドアがガチャリと開きました。その先からはいかにも魔法使いらしい姿のお爺さんが出てきました。白い髭に三つ編みされた綺麗な白い髪。瞳はアルバンと同じ杏色。
「なんじゃ?アルバンか」
「うん!」
「ほら疲れたじゃろ。ココア入っているぞ」
「ホント!ありがとッ」
「孫にこんな事を言われるとは。ありがたいの」
家の中に入ると、フワッと優しい木の匂いがする。木製の家具にカラフルな装飾品が綺麗にマッチしている室内。沢山の蝋燭のついたシャンデレラの火は全て消えている。
沢山飾られている杖はしっかり手入れしているのがよくわかりるくらいキラキラしています。
赤い小さい丸いマグカップには美味しそうにココアが注がれている。
アルバンは目を輝かせ、椅子に座ってココアを飲み始めました。
フーフーと冷まし少し飲んだアルバンは目を一層輝かせました。
「叔父様これ美味しいねェ」
「そうか、よかった」
「!へへっ、」
頭を撫でてくれた大きな手はポカポカしていて温かかった。
髪の流れる方向に合わせて撫でられるのは、嬉しいようだ。
「で、一人でしかもこんな時間に何故きたのだ?」
「ん?あぁ。この子に命が宿らないんだ!」
机の上に出したカボチャを見て叔父様は目を大きく開きました。
「…そのカボチャにか?」
「うんッ」
「フォッフォッ、そうか。」
「そうなんだよ」
「どうしようかのぉ。」
「だから本貸して?」
「いいぞ」
「こっちじゃ」
と手招きする叔父様の後をついていくと、外観より大きい室内には螺旋階段や沢山の可愛らしい縫いぐるみに沢山が並んでいた。
螺旋階段を降りた先には大きな両開きの扉が現れる。
少し鈍い音を立てて開く扉。魔法とは不思議なもので、手も使っていないのに勝手に扉が開いていく。扉を開けた先、大きな本棚が数十個並んでいた。一冊一冊がしっかりと分厚い。
ワクワクとしてしまう光景だろう。
「ここら辺とかどうじゃろか?」
「ありがとねェ」
「どういたしまして」
ー
「ねェ叔父様!」
「ん?何か見つけたか?」
「魂は炎のように燃えているんだって!」
「なるほど」
「じゃあ、カボチャの中に炎を入れるか?」
「ウーン」
「あ」
「あ?」
「顔を彫りたい!」
ー
宝石の草原には一つのレジャーシートが引かれていました。
そこには二人の人影。真ん中にカボチャを囲い、周りには沢山の彫刻道具が置かれています。
「叔父様どうしよう!」
「こういうのは直感だぞ?」
「じゃあ」
ザクザクと鳴るカボチャと集中しているアルバン。
ー
「できた!」
アルバンの周りにはカボチャのカスがたくさん落ちています。
できたカボチャを空に掲げ、少し歪だが自分でやった事が重大なのだろう。
とても満足した顔をしている。綺麗な杏色の瞳には一つのカボチャが一杯に写っている。
「魂はどうするのじゃ?」
「どうしよう…」
「これはどうじゃ。」
叔父様は大きく開いた袖の中から蝋燭を出した。
少しだけ先が溶けた蝋燭だ。
「いいの!叔父様ありがとう」
「いいじゃよ。火もつけるかのぉ」
「うんっ」
杖の先から火が出て、蝋燭の先に灯りが灯った。そしてそれをカボチャの中に入れる。
ボワっと灯りがついたカボチャはとても神秘的だ。
「きれい」
「そうだね」
「ねェ、名前つけていいかな?」
「いいと思うぞ」
「じゃあ」
“ジャクオ!ジャクオがいい”
「いい名前じゃな」
「これはランタンにも使えるねェ」
「そうじゃな、では“ジャックオランタン”はどうじゃ?」
「いいねェ、これできっと命が宿ったよ……」
「よかったのぉ」
「う、ん」
大きくて安心する手で撫でられたアルバンは火が消えたように眠りについた。それはそうだもう深夜なのだ。
子供にとっては大変な夜更かし。
それから小さな魔法使いアルバンの箒の後ろには、いつもジャックオランタンがついていたとか。
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