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苦味に飢えている

作者: 秋暁秋季

注意事項1

起承転結はありません。

短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。


注意事項2

味覚の変化って割と一瞬なんですよね。

僕の隣人は結構なグルメである。取り分け珈琲に関しては煩く、拘りを見せ付ける。最もそれが如実に出たのは、とある喫茶店の珈琲を嗜んでいた時のこと。行き付けの店が閉まっていたので、姉妹店を訪れた。姉妹店ならば出すものも変わらないだろうと高を括っていたのだが、彼女に言わせると違うらしい。どうにも味が薄い様で、その後は暫く首を傾げていた。

「……ありゃカップに満ちる様に、水の配分変えてるな。折角良い素材なのに、勿体ない」

それからはまた、本店に舞い戻って珈琲を嗜んでいる。御満悦である。

「昔から珈琲が好きだったの?」

余りにも味に煩く拘りも凄いので、何の気なしに聞いてみた。すると彼女は首を横に振った。

「いや、全然。圧倒的紅茶派だった。今は紅茶の方が味分からないけどね」

そう言って、苦いと有名な珈琲をちびちび啜っていた。


初めて苦味を知ったのは自宅の自家製珈琲を飲んだ時だった。苦味に我慢が出来ず、その場を転げ回って足をバタ付かせた事を覚えている。誠に失礼ながら、あれは人が飲むものでは無いと、幼心に判断した。

「なんで素知らぬ顔で飲めてんのか分からない。あれは人が飲むものじゃない」

「そのうち良くなってくるんだよ〜。大人になると分かるよ〜」

そう呑気に言われた。

それから月日が経って、幾つかの純喫茶の珈琲を嗜んだ時の事。その内の一つに、思わず心を引き付けられた。苦いものが苦手な私でも、味わって飲める程に美味なものだった。

これ以上のものはない。これに勝るものは無い。そう思って頻繁に店を訪れた。けれどもある時、ふと違和感を覚える事があった。

口に含んだ時、舌に重く伸し掛る苦味が感じられなかった。ただ水の様な軽さと共に、舌を転がり、淡雪の様に消えていく。

苦味が、足りない。目の覚める様な、黒が足りない。そう思った時に、あの時の言葉を思い出す。

――そのうち良くなってくるんだよ〜。大人になると分かるよ〜。

今ならその気持ちが分かる。足りないと思う程に、私は苦味に飢えている。


「初めて飲んだ時、目を回したんだ。『苦味強め』って書かれてるけど、『珈琲はみんな苦いでしょ?』って思ってたんだ。その比じゃなかったんだよね。今まで飲んだ中で随一に苦い」

そう言いながらも、目はうっとりと蕩け、恍惚とこの世界に浸っている。

「今は、これぐらいが丁度良いかな」

「大人になったんだよ」

辛いのと苦いのを求めるのは、ストレスのせいなのだそうです。

そりゃー、毎日毎日、こんなに暑ければ体だってストレス感じるよ!! 限界迎えるよ!! 控えろよ、暑さ!!

という気分です。


『苦いものを飲めない、食べられない』という方、もし耐性を付けたいならば、自分が美味しいと思える苦さから慣らしていくと良いですよ。

そうするとある時突然、強烈な苦味が欲しくなります。

『え……苦くない。確かに苦い。苦いんだけども、これくらい無いと物足りない……!! 寧ろ美味しい……』

と衝撃を受けるようになります。


そろそろまた、紅茶を飲みたいです。

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