フロストサーンジュとの遭遇
こんにちは!塩サバを食べようと冷凍庫から引っ張りだして解凍してたら緑色っぽくなってて焦った三つ目小僧です。
朝の光が差し込む中、カルヴァンは焚火の温もりに包まれて目を覚ました。近くにはリリスが、焚火に薪をくべながら静かに微笑んでいる姿があった。
「おはよう、リリス。」カルヴァンは優しく声をかける。
「おはよう、カルヴァン。ちゃんと休めた?」リリスは焚火を見つめたまま、少し照れくさそうに答える。
「うん、おかげ様で。リリスが焚火の番をしてる姿を見ると、何だか懐かしい感じがするなあ。」カルヴァンは少し笑いながら、リリスとの思い出を思い返す。
「ふん、そんなに懐かしいなら、あたしが特別に朝食を作ってあげてもいいわよ?」リリスがニヤリと笑みを浮かべて言うと、カルヴァンはすぐに首を振った。
「いやいや、僕が作るからリリスはゆっくりしていて!」カルヴァンは慌てて返事をすると、リリスは肩をすくめて「じゃあ、任せてあげるわ」と、あっさり引き下がる。
カルヴァンは手際よく持っていた食材を使い、簡単な朝食を準備し始めた。リリスは彼の手元をじっと見つめ、微笑みながら待っている。
「できたよ、リリス。どうぞ。」カルヴァンが差し出した料理を、リリスは受け取り、軽くうなずく。
「ありがとう、カルヴァン。」2人は朝食を共にし、自然に囲まれたこの時間を楽しむ。食事を終えた後、カルヴァンは地図を広げ、次の目的地を確認した。
「リリス、これからカルン村を目指そう。アルバンシア王国との国境付近にある村みたいだ。」カルヴァンが指差した地図を、リリスも覗き込む。
「カルン村ね。村に着いたら、まずは休息を取って、その後の計画を立てるのが良さそうね。」リリスは提案し、カルヴァンも同意する。
「それに、美味しい物も食べられるかもしれないわ。」リリスが小さく笑い、カルヴァンも楽しそうにうなずく。
「それも楽しみだね。」
2人は荷物をまとめ、旅を再開した。朝の光に照らされる緑豊かな森の中、小道を歩きながら、自然の風景を楽しみつつ、時折何気ない会話を交わす。
「ここは本当に綺麗な場所だね。」カルヴァンは木々の間から差し込む陽光に目を細める。「母さんと過ごした深淵の森とはまた違った魅力がある。」
「そうね。でも、あたしは深淵の森の方が落ち着くわ。あそこにはあたし達の思い出が詰まっているもの。」リリスは少し感傷的になりながらも、微笑む。
「確かにそうかもね。深淵の森での生活は大変だったけど、母さんが一緒だったから頑張れたんだ。」カルヴァンは懐かしそうに思い返し、リリスも頷く。
「エレナには感謝してるわ。彼女がいなければ、あんたと出会うこともなかったし。」リリスが素直に気持ちを伝えると、カルヴァンは少し照れくさそうに笑った。
「リリス、君がいてくれて本当によかったよ。今はこうして二人で冒険しているのが楽しいんだ。」
「当然ね。」リリスは胸を張り、微笑む。その後、二人は再び歩みを進め、やがて道は緩やかな丘陵地帯へと変わり、遠くにはアルバンシア王国の山々が見えてきた。
「見て、あの山の向こうがアルバンシア王国なんだね。」カルヴァンが指をさすと、リリスも視線を向ける。
「カルン村はその手前にあるみたいね。山々を越えれば、アルバンシア王立魔法学校にも行けるわね。」リリスは、エレナの願いを叶えるために強くなりたいと心に誓い、カルヴァンもそれに応じるようにうなずいた。
「うん、僕たちならできるよ。」カルヴァンがリリスに微笑みかけ、彼女もまた笑顔を返す。
広がる草原には、色とりどりの花々が咲き誇り、風が吹くたびにその香りが漂ってくる。カルヴァンとリリスは、しばらくその風景を楽しみながら歩みを進めた。
「本当に綺麗な草原だね。」カルヴァンは自然の美しさに感嘆し、「深淵の森の先にはこんな素晴らしい場所があったなんて。」
「うん、本当に。でも油断は禁物よ。いつ何が起こるかわからないんだから。」リリスが注意を促すと、カルヴァンも真剣な表情でうなずく。
「うん、気を付けて進もう。」カルヴァンが警戒を強めたその時、突然周囲が暗くなり、冷たい風が吹き始めた。二人は立ち止まり、周囲を警戒する。
「何かがおかしい…。リリス、気を付けて。」カルヴァンは緊張感を高める。
「わかってるわ、カルヴァン。」リリスもすぐに戦闘態勢に入る。
その瞬間、巨大な影が二人の前に現れた。それはフロストサーンジュ、冷たいオーラを纏う巨大な猿型の魔物だった。氷の槍を手にして、今にも攻撃を仕掛けてきそうだ。
「こいつは…!?」カルヴァンが驚愕の声をあげる。
「フロストサーンジュよ!かなり強力な魔物だから気を付けて!」リリスが叫ぶと同時に、フロストサーンジュが吠え声をあげ、氷の槍を二人に向けて放った。
「リリス、距離を取って!ファイアボール!」カルヴァンは即座に火属性魔術を放ち、フロストサーンジュに直撃させる。しかし、その強力な防御力は炎をものともせず、さらなる攻撃を仕掛けてきた。
「ダークネス・スラッシュ!」リリスも闇属性魔術で応戦するが、フロストサーンジュの防御力は高く、ダメージはほとんど与えられない。
「グォォォォォ!」フロストサーンジュは次々に氷の槍を放ち、二人を追い詰める。カルヴァンは再び火属性魔術で反撃するが、状況は厳しいままだった。
「くそ…このままじゃ…!」カルヴァンが焦りを感じ始めたその時、リリスが叫んだ。
「カルヴァン、気を抜かないで!」カルヴァンはリリスの声に励まされ、エレナとの訓練を思い出す。彼は精霊たちとの深い共鳴を試み、新たな力に目覚めようとするが、その代償として全身に強烈な痛みが走り、意識が朦朧としてきた。
「精霊達よ…力を貸してくれ…、エレメンタル・フレア!」カルヴァンの身体が光に包まれ、強力な精霊魔術が発動される。巨大な火柱がフロストサーンジュに直撃し、魔物を倒す。
しかし、カルヴァンもその場に倒れこんでしまった。
「カルヴァン、しっかりして!あんたが倒れたら…!」リリスは慌ててカルヴァンのそばに駆け寄り、彼を支える。彼の顔は青ざめ、息も荒い。
「カルヴァン、頑張って…お願い、目を開けて!」リリスは必死に呼びかけながら、彼の状態を確認する。しかし、カルヴァンの体温は異常に高く、意識を失っている。
「こんな時に…どうすれば…!」リリスは焦りと不安に押しつぶされそうになりながらも、冷静に近くの木陰へ彼を運び、寝かせる。
その時、リリスはフロストサーンジュの手元に何かを見つけた。そこには黒い魔法の紋章が刻まれており、淡く光っている。
「これって…一体…?」リリスは一瞬不安な表情を浮かべるが、すぐにカルヴァンの看病に戻る。
「カルヴァン、お願い…目を覚まして…」リリスは彼の手を握り、顔を覗き込む。彼の呼吸は少しずつ落ち着いてきたが、意識は戻らない。
リリスはふと、エレナの姿を思い浮かべた。エレナがいれば、どう対処していただろうか。しかし、今はリリスが頑張らなければならないのだ。
「エレナがいてくれたら…でも、今はあたしが頑張らなきゃ…!」リリスは決意を新たにし、できる限りの手当を施す。冷たい布でカルヴァンの額を冷やし、水を口元に運び、彼が少しでも楽になるよう努める。
「カルヴァン、あんたはエレナの意志を継いで、この世界をよくするって決めたんでしょ?こんなところで終わらせるわけにはいかないわ!」リリスは彼の手を強く握りしめ、その顔にやさしく触れる。彼女の眼には涙が浮かんでいた。
「カルヴァン…お願い、目を覚まして…」リリスが必死に願うと、カルヴァンの指がわずかに動いた。
「リリス…?」カルヴァンの目がゆっくりと開き、彼の視線がリリスに向けられる。
「カルヴァン!よかった、目を覚ましたのね!」リリスは安堵の表情を浮かべ、彼の顔を覗き込む。
「ごめん、リリス…。迷惑かけちゃったみたいだね。」カルヴァンは力なく微笑み、リリスも優しく彼に答える。
「そんなことないわ。あんたが無事でよかった。でも、無茶しすぎないで。あたしがいるから、もう少し頼ってもいいのよ。」リリスの言葉に、カルヴァンは微笑みながら頷いた。
「ありがとう、リリスがいてくれて本当によかった。」
リリスは照れながらも、真剣な表情で頷き返す。
「これからも一緒に頑張りましょう。」2人はお互いの手を握り合い、これからの旅路に向けて新たな決意を胸に抱いた。
そして、再び立ち上がり、共に旅を続けるために歩みを進めた。