焚火の誓い
2話目の投稿です!
カルヴァンとリリスはシャドウウルフや多くの魔物を倒し、深淵の森をさらに進んでいた。
日が暮れる頃、2人はキャンプを張ることにした。
カルヴァンはキャンプの準備をしながら言った。
「ここで一晩休もうか。今日はたくさん戦ったから、体力を回復させないとね。」
「そうね。少し休憩が必要ね。」
それを手伝いながらリリスが答えた。
2人は焚火を囲み、温かい火のそばで体を休めながら、夜の静けさを楽しんだ。
カルヴァンが焚火に薪をくべると、パチパチと心地よい音が響く。
「リリス、少し話をしない?この旅を始めてから、お互いのことをあまり話してない気がするんだ」とカルヴァンが提案した。
「そうね。あたしも少し話したいことがあるわ」とリリスが同意する。
「まずは僕から話すよ。実は僕、元々はこの世界の人間じゃないんだ」とカルヴァンが続けた。
「えっ?どういうこと?」とリリスが驚いて尋ねる。
「僕は元々この世界とは違う次元にある世界の日本って国に住んでいたんだ。その世界ではシンジって名前の高校生だったんだけど、不慮の事故で死んでこの世界に転生したんだ。気がついたら赤ん坊の姿で、ここ深淵の森で魔女エレナ…母さんに拾われたんだ」とカルヴァンが説明する。
「転生…か。そんなことがあるのね」とリリスが感心して応えた。
「母さんは僕を実の子のように育ててくれた。彼女はすごく優しくて、でも厳しいところもあって、魔術や魔法の訓練や勉強もすごく熱心にしてくれた。そんな母さんの願いは、人々が魔女や魔術に対する恐怖を克服し、平和な世界を作ることだったんだ」とカルヴァンが語り始めた。彼の話には、エレナの優しさや、魔術や魔法の訓練、勉強の厳しさ、そして何よりも彼女の意志が込められていた。
「母さんの意志を継いで、願いを叶えるために僕はもっと強くなって、この世界を変えていきたいんだ」とカルヴァンは決意を新たにする。
「エレナの願いか…。あたしも彼女には感謝してるわ。彼女がいなかったら、あたしは今ここにいないかもしれないもの」とリリスが静かに答えた。
「君のことについても聞かせてくれる?」とカルヴァンが尋ねた。
リリスは少し考え込んだ後、静かに語り始めた。
「あたしは悪魔界の女王、アークデーモンのリリス。悪魔界で生まれ育ったけど、いつも自分の力がどれほど強いのか試してみたかった。でも、それだけじゃない。悪魔界でも力を持つ者には責任が伴うのよ」
「責任…?」とカルヴァンが問い返す。
「ええ。多くの悪魔達は人間と共存するか、互いに干渉しない関係を望んでいるの。だけど、一部の人間が悪魔を召喚し、その力を利用しようとするせいで、多くの悪魔達が苦しんできた」とリリスが説明する。
「どうしてそんなことを…?」とカルヴァンが驚いて聞いた。
「人間たちは悪魔の力を手に入れようとして、儀式を行うの。でもその儀式のせいで悪魔達の意志を無視して無理やり引きずりだされる。召喚された悪魔は自由を奪われ、強制的に使役されることになるのよ」とリリスが続けた。
「そんなことが…」とカルヴァンが驚愕する。
「だからこそ、あんたの力を借りて、そんな行為を止めたいって思ってるの。エレナの意志を継ぐことで、人間と悪魔が共存できる世界を作りたいのよ」とリリスが決意を込めて言った。
「君がそんなに深い思いを持っているなんて知らなかった。けど、きっと君と一緒なら…僕たちは成し遂げられるよ」とカルヴァンが力強く応えた。
リリスの言葉には以前よりも柔らかい響きがあった。彼女自身もその変化に気づき、少し戸惑いも覚えたが、同時にその感情が心地よくもあった。
しばらくの沈黙の後、リリスはふと考え込んだ。
「カルヴァン、あんたは元の世界に帰りたいとは思わないの?」
カルヴァンは少し驚いたが、すぐに答えた。
「思わないよ。元居た世界での僕は、惰性で生きてるようだった。使命感や何かを成し遂げたいなんて考えとは無縁で、ただ毎日同じことの繰り返し。生きてるけど、まるで死んでいるような日々を過ごしていたんだ。転生して母さん拾われ、今はその意志を継ぐ決意をして、明確な目標を持っている。そして君と出会い、共に冒険してる今が凄く充実した日々なんだ。」
リリスはその答えはきて、カルヴァンに対する尊敬と好意がますます深まるのを感じた。
「そう…。あんたがそんなふうに思っているなんて、あたしには想像もできなかった。」
カルヴァンは真剣な眼差しでつづけた。
「リリス、君がいてくれるおかげで僕はより頑張れるし、もっと強くなれる。君と一緒にこの世界をよくしていきたい。」
リリスはその言葉に再び微笑み、焚火の明かりに照らされた彼女の顔には新たな決意が宿っていた。
「そうね。あんたと一緒なら絶対にやり遂げられるって信じてる。」
2人は互いの決意を新たにし、焚火の前で静かに時間を過ごした。夜の深淵の森は静寂に包まれ、彼らの絆が一層深まっていくのを感じた。