星空と黒き晩餐
こんばんわ!今日も暑かったですね!みなさんも熱中症には気を付けてくださいね!
旅の途中、カルヴァンは母エレナから教わった魔術の理論と基礎を思い返しながら、ついに実践に移る決意を固めた。彼はこれまで魔法ばかり使ってきたが、今度は本格的に魔術を習得しようとしている。
隣には、召喚された悪魔族のリリスが控えていた。本来ならば強大な魔術を操れる彼女だが、カルヴァンのマナによって強引に召喚されたため、その力は大幅に制限されている。しかし、その豊富な知識と経験は、カルヴァンにとって貴重な助けとなるものだった。
「リリス、これがお母さんから教わった魔術の理論だけど、実際に使うのはこれが初めてなんだ。今までずっと魔法だけで戦ってきたからさ。」
カルヴァンは不安げにリリスに話しかけた。
「あんたならできるわよ。あたしがちゃんと見てるから、安心して試してみなさい。」
リリスの言葉に少し勇気をもらい、カルヴァンは深呼吸をしてから呪文を唱え始めた。すると、彼の手のひらから炎がゆっくりと生まれ、周囲を照らし始めた。
「これが…魔術の力か…。」
カルヴァンは驚きと興奮を隠せない。
「うん、いい感じよ。あとはもっと練習して、精度を上げていけば完璧ね。」
リリスは満足げに頷いた。
さらに、カルヴァンは最近、精霊魔術を使えるようになった。これは、精霊の力を借りて行使する特殊な魔術で、魔女の力を継承したカルヴァンが初めて使用できるものだ。
しかし、その反動は大きく、彼にはまだ不安が残っていた。
「精霊魔術も使えるようになったけど、まだ慣れてなくて…使うとすごく疲れるんだ。」
カルヴァンは疲れた顔で訴えた。
「精霊の力を借りるのは難しいわ。でも、あんたならきっと使いこなせるようになるわよ。無理だけはしないでね。」
リリスの優しい励ましに、カルヴァンは魔術と精霊魔術の両方をバランスよく習得する決意を新たにした。
数日後、カルヴァンとリリスは深淵の森を進んでいた。
アルバンシア王国を目指す二人だが、森は広大であり、進むごとに新たな試練が待ち受けている。しかし、その夜は静かだった。焚火の温かい光が二人を包み、空には無数の星が瞬いている。
「カルヴァン、今日はあたしが料理を作ってあげるわ。」
リリスは楽しそうに言った。
「リリスが?それは楽しみだね。」
カルヴァンは少し驚いたが、笑顔で答えた。とはいえ、心の中では少し不安を感じていた。リリスが料理をするのは初めて見る光景だったからだ。
リリスは鼻歌を歌いながら手際よく食材を準備し始めた。ウサギの肉を取り出し、焚火で焼いている彼女の姿は楽しそうで、どこか誇らしげだ。
「ふふふ~ん♪ あたしの手料理を食べたら、カルヴァンもきっとあたしに惚れ直すわね♪」
リリスの無邪気な声に、カルヴァンは微笑みながらも内心では焦げ臭い匂いが漂ってくるのを感じていた。彼女が真剣な顔で料理を仕上げる姿を見て、カルヴァンは少し不安を覚えながらも期待を込めて待っていた。
「できたわよ!ウサギ肉のステーキ!」
リリスが自信満々に差し出したのは、真っ黒に焦げた物体だった。見た目はまるでダークマターのようで、なぜか禍々しいオーラまで漂っている。とても食べ物とは思えない代物だった。
「これ…本当にウサギ肉のステーキ?」
カルヴァンは恐る恐る尋ねた。
「そうよ!あたしが特別に作ったんだから、美味しいに決まってるわ!」
リリスは自信たっぷりに頷いた。カルヴァンは彼女の期待に応えるため、震える手でそのステーキを口に運んだ。見た目の不安を無視して一口食べてみたが、その瞬間…
「うっ…!」
カルヴァンは味わう間もなく、意識を失ってしまった。リリスは驚いてカルヴァンに駆け寄った。
「カルヴァン!?ちょっと、大丈夫!?しっかりして!」
完全に意識を失って倒れ込んだカルヴァンを見て、リリスは困惑しながらも自分の料理に対する自信を失わない様子で彼を揺さぶった。
「こんなことで倒れるなんて、あんた軟弱ね…。そんなに疲れてたのかしら?」
リリスはカルヴァンが疲れて寝てしまったのだと勘違いし、優しく毛布を掛けてあげた。
「まあ、次はもっと美味しく作ってあげるんだから!」
彼女は少し反省しつつも、カルヴァンを心配そうに見守り続けた。
こうして、これからもカルヴァンはリリスの手料理を食べることになる。しかし、その度に恐怖と戦わなければならないのだが、それはまた別の話…。
翌朝、カルヴァンはゆっくりと目を覚ました。
頭が少し重いが、なんとか大丈夫そうだ。目を開けると、リリスが焚火を起こしている姿が目に入った。
「おはよう、リリス。」
「おはよう、カルヴァン。昨日はよく眠れた?」
リリスは心配そうに問いかける。
「う、うん…何とかね…。」
カルヴァンはぎこちなく微笑みながら答えた。
「本当に?昨日は気絶しちゃってたけど、そんなに疲れてたのかしら?」
リリスは首をかしげる。カルヴァンは少し引きつりながらも、笑顔で返した。
「そ、そうだね…たぶん…。でもおかげで今日は元気だよ!」
リリスは満足そうに頷いた。
「それなら良かった。じゃあ、今朝も特別にあたしが朝食を作ってあげるわ。」
リリスが朝食を作ろうとするのを見て、昨夜の恐怖が蘇るカルヴァンは、慌ててリリスに提案した。
「あ、いやいや、待って!昨日のお礼に今度は僕が作るよ!」
リリスは少し驚いた様子だったが、すぐに笑顔で返した。
「そう?じゃあお願いね。」
カルヴァンは手際よく朝食を作り始めた。持っていたパンとハムを使い、簡単なサンドイッチを仕上げる。
「はい、できたよ。簡単なものだけど、食べてみて。」
リリスは興味津々でサンドイッチを手に取り、一口食べた。
「うん、美味しい!カルヴァン、あんた料理もできるのね。」
リリスは満足げに微笑んだ。
「ありがとう、リリス。」
カルヴァンは少し照れながらも答えた。
「じゃあ、次はあたしがもっと美味しい料理を作ってあげるわ。」
リリスの意気込みに対し、カルヴァンは心の中で再び不安と恐怖を感じながらも、彼女の熱意を尊重して頷いた。
「う、うん…楽しみにしてるよ…。」
今回カルヴァンが初めて魔術を使用した理由はエレナの魔女の力を継承するまでは魔術を使用することができなかったからです。
そのためにエレナには理論や基礎などを学び、実際に今まで彼が訓練で使用していたのは魔術ではなく、魔法でした。