1-14-3 それぞれの旅(3)
ボナコンの胃の中、未消化で残されている人型の機械やアンドロイドらしきものは半分溶かされてたり、ぐっちゃぐちゃに圧縮されてたり、これは人骨だろうか、骨の周りに腐り果てた肉片とその汁がベチャッと付着してて夢にでも出て来そうな光景。クソ……さっさと見つけて外に出てぇ……。新鮮な空気が恋しい……。
“凄まじい量の残骸の山ねぇ。あなたも後一歩遅ければこうなってたんでしょう?”
「お前、アタシのこと何処まで鑑定しやがったんだ?」
“さぁねぇ。でもあの子が言ってた女の子の声、しないわね。死んじゃったのかしら。”
「縁起でもねぇこと言うんじゃねぇっ!!!!」
“あらあら、冷たそうな顔してるのに熱いのねぇ。いいわぁ、そういうの。だから色んな人があなたに信頼を置くのね。”
こんのクソムシ、オークのケツの穴にでもぶっ込みてぇな……。なんでこう、いちいちイラッとするようなことをペチャクチャ喋りやがんだ?
常識の欠片もありゃしねぇし、なにより、ウゼェったらありゃしねぇ。クソが。
“あら、ごめんなさいね。”
フンッ、無視するに限るな。
“虫だけにね。”
チッ…………。
この胃の中のもの、出来るのならみーんな死んでんなら浄化してやりたいな。無くても、せめて外に慰霊碑ぐらいは作ってやりたい。労力的に無理か。
“浄化の火の使い手ならちょうどあの集落の隣に居るわ。今はちょっと出かけてるけどね。”
フンッ…………。
…………火属性と光属性の魔道士か……すげぇ奴も居たもんだな。
……そういうやつは真っ当な仕事を持ってんだろうな。チッ、あいつらも魔力がほんの僅かでもあればあんなに落ちぶれずに済んだのにさ。
本当に神様も何も居やしねぇ。偉そうなことを語って人を分別するクソ聖職者どもめが。くたばれクソども。
「――――――。」
……何か声のようなものが聞こえたぞ?
「おい、声が聞こえねぇかっ!?」
“……ちょうど、わたしも言おうとしてたところ。”
「たすけ……れ……。」
確かに聞こえた。女子供の声……何処だ、何処からだっ!?
“慌てない。時空属性の特権その2、レーダー。エネミーレーダーもお宝レーダーも人レーダーもなんでも使えるの。”
便利な野郎だな……。チッ、アタシも欲しいが……どうせSランク特権とかなんだろうがな。
“惜しいわね。これはXSランク特権よ。”
こんのクソムシが……本当に一体ナニモンだ?
”さてレーダーで人探し…………居た。大きなロボットとロボットの間に挟まってる。”
「引っ張り出せるのかっ!?」
“そこは重力属性の領分ね。それか、その子自身がコハルちゃん並みに強ければ吹っ飛ばせるかも。”
クソムシに付いていくと、スクラップの山に挟まれた黒髪の女の子が息絶え絶えでこちらを見ていた。その顔と片手だけ外に出した腕は傷だらけで今すぐに手当てが必要な状態だ。クソッ…………いや、待て、普通なら重みで死んでるぞ。何でトン単位の物体に挟まれて生きてるんだ?
“この子、よく見たらネコミミが付いてるわね。獣人なら怪我の気は光属性……コハルちゃんが適任だけど、ブツも無いしわたしがやるしかないわね。”
ネコミミ……本当だ。遠くからじゃ分かり難いがしっかり頭に獣耳がついてる。獣人なら人間や魔族の類とは比べ物にならないほど強いから死なないのもあり得る話だ。それに猫の獣人なら怪力だってこともありうる。
“はい、治療するわね…………獣人にしては気の流れが変わってるわね…………これは…………凄まじい光属性の気だわ。これは溜め込み甲斐があるわねぇ。”
クソムシの前脚が僅かに光ったと思うとみるみる内に傷が塞がり、険しかった表情も徐々に和らいでいく。何も出来ないアタシがもどかしい。
「あれ…………オレは……?」
“あーら、女の子らしくない一人称ねぇ。ウフフッ、そういうの好きよ。”
「冗談言ってないで何とか出来ないのか?」
“さて、あなたは………………待って、何もかもが封印されてる。名前すらも分からない。どういうこと……いや、とりあえず、獣人ならこのスクラップの山ぐらいコハルちゃんみたいにぶっ飛ばせるわよね?”
さっきから名前が出てくるコハルって奴、この明らかに数十トンはある残骸をぶっ飛ばせたり治癒魔法が使えたり、一体ナニモンなんだ?
「あっ…………あぁ、ぶっ飛ばせないけど、退かせることはできる。」
女の子の上に乗った残骸は浮き、出していた手と挟まれていた手で持ち上げ、その数十トンの残骸を後ろに倒して脱出した。龍族でもないのに獣人にこんな力がある奴が居たなんて……。
“やったじゃない。えーっと、名前何て呼んだらいいかな?”
「名前…………何も思い出せない。オレは何処から来たのかも……分からない。」
“やっぱり、何もかも封印されてる。”
「封印されてるって、どういうことだ?」
“さぁね、ここまで執拗に封印を施してポイ捨てだなんて、普通なら殺してしまうけど、そうはせず、何らかの形でも生かしておく必要のあるってことかしら。”
キナくせぇな……。しかし名前まで封印しやがるなんて……。名前は生命そのものだ。名前を奪われたらこいつの命を奪われたのも同然だ。多少安直でも名前を付けてやりたい。
さてどうしたものか…………。
…………。
“あら、腕組んで真面目そうな顔して、どうしたのかしら?”
「うっせぇっ!! クソムシは黙ってろっ!!!!」
“あら、こわーい。”
あー……えー………………。
…………待て、こんな砂とスクラップしかない世界なのに、あのデカい機械の固まりにツタが絡んでやがる。何かについてた種が発芽して成長してんのか?
……日光も当たんねぇはずなのに、マギサ草じゃねぇけど強い植物もあったもんだな……。
…………そうだ。
「…………アイビー。木々や建物、廃されたもの何でも強く深く絡みつき、この死の荒野を生き抜く植物、アイビー、それでいいか?」
“へぇ、すんごく怖そうな目つきしてるのに可愛らしい響きの名前を思いつくのね。”
「嫌味か? あのスクラップみたいに踏み潰すぞこのクソムシが。」
「アイビー…………。」
“ほら、アイビーちゃんも嬉しそうな顔してる。”
あぁ?
あ…………そうだな。頬を赤らめて涙を浮かべて……本当にうれしいのか?
“嬉しいわよ、絶対。ほら、こんな空気の悪いとこ早くでましょう。”
「そうだな。アイビー、来な。ここから出るよ。」
「うっ、うん。」
さて、クソムシが言ってた女の子を助けたことだし……待てよ、何でクソムシが言う奴はここに女の子が迷い込んでるって分かったんだ?
“…………他にも何か居るみたいね。”
「おい、まだ居んのかっ!?」
“いいえ、別の何かね。構えなさい、怪我しないようにね。わたしじゃあなたは治せないわ。”
◇
密林の奥地。生ごみの匂いと土の匂いが混ざった異臭が漂う植物の森。その殆どがそのバナナの木。その間を縫うように縦に長いグラットンズベリーの小さな木…………とウサギの耳のような部位のある白い花の付いた謎の草が生い茂っている。
≪鑑定≫
名称:グラットンズベリー
説明:大喰らいの果実。このベリーは非常に繁殖力が強く、瘦せこけた土地であってもマギサ草並みに増え、周囲の植物を食らうように駆逐し埋め尽くす。これは多くの国で適性に管理された屋内プラント以外では植えてはならないと法で定められている。実は甘酸っぱく、様々なデザートや料理に用いられる。
効果:HPを約10回復
≪以上≫
屋外であれば本来ならもっと増えるんだろうけど、この程度で収まってるのはこの地の恐ろしいところか。
バナナと違い、ポツポツとラズベリーに似た実が付いてる。この実は収穫の時期内であれば、どれだけ食べても次の日にはまた実を付けているので、その意味も含めてそんな名前になったそうな。
……というか、この無数に生えてるウサギ草の鑑定はされないのか?
……されないな。変な形した草ってことで置いておくか。
生ごみを避けながら密林を突き進むと、一際大きな一本の大きな樹木が生えていた。日光も無いのに梨のような果実がポツポツとなっている。
≪鑑定≫
名称:名無しの梨
説明:新種の梨。名前はまだ無い。木は日光による光合成の他に地に含まれる魔力を吸い成長する。非常に栄養価が高く、瑞々しく、甘い。繁殖させ、販売すると儲かる予感。
効果:1個あたりHPを約100回復
≪以上≫
「おっ、見かけん顔じゃな。この梨は旨いぞ。」
集落の人だろうか。さっきとは違う、顔を上下逆にしたような髭の長いお爺さんが、柄の長いハサミを持って収穫していた。今度は不気味な感じが一切無いし、関わっても問題は……なさそうか。
「ほれ、お前さんにも一つやるわい。」
「あっ、ありがとうございます。」
近くで見たら物凄く大きい。大味ではなかろうかと思うが、鑑定では甘いと出ている。
「ふぉっふぉっ、驚くなかれ、この木はこの前まで無かったんじゃが、なんと、つい三日程前に突然生えてきたんじゃ。これは神様の所業に間違いない、コハル殿とこの森は我等の救世主じゃ。ぬふぉふぉふぉふぉぉぉぉっ!!」
間違いなくコハルさんの仕業だ。おとぎ話の豆の木のようになってしまったマギサ草とこの妙に巨大な梨の木は原因が同じなのだろう。
コハルさんは集落で炊き出しをしているとは聞いたけど、この森がここまで広がって果実を実らせているのは彼女の所為だというのは集落の人は知らないのか。本当に、クソポーション様様だ。
……鑑定結果には何も書いてなかったけど、食っても大丈夫なんだろうな?
「ぬふぉふぉ。では、お気を付けて。アデュー。」
アデューとは?
どこの言葉かは分からないが、お爺さんは軽く敬礼するように去って行った。
梨はとりあえずバッグに入れて探索を続ける。
……ナシとベリー以外特に収穫は無く、端に辿り着いた。
この密林は、この大きな梨の木を中心にあのベリーの木とバナナの木で形成されているみたいだ。他の木はやはり日照不足か魔力不足で無理だったのだろうか。
…………うわっ、危ないっ!!
わたしは地面を這う長いツタに足を引っかける。何とか既の所で踏ん張り転倒を免れた。
その白いツタを目で追うと、それは地面から出て地面に帰ってるようだった。根っこの一部だろうか。更に追うと、地面から薄緑色のツタが出てバナナの木に巻き付いていて、一部がその木に穴を開け入り込んでいる。気付かなかったが、バナナの木をよく見ると、どれもそのようにツタに寄生されていた。
≪鑑定≫
名称:スィートウィッチ
説明:寄生イモ。主に柔らかい樹木や草本に寄生するツル植物。バナナのような大型の草本は格好の寄生対象となる。地下茎は非常に長く、枝分かれし多くの肥大化した地下茎を付ける。その地下茎は食物繊維が豊富で非常に甘く、寄生対象があればどの環境でも良く育つ。寄生対象は成長を阻害されるので、主な寄生対象であるバナナの木の周囲に生えていた場合、バナナには実が付かない。
効果:1個あたりHPを約200回復、MPを約100回復
≪以上≫
成程ね、だからバナナには実が成ってないのか。でも何でウィッチなんだろうかね。帰ったらユーリアにでも聞こうか。
こんなに硬い根なら何かに使えるかも。切れるといいんだが……。
試しにナイフで切ろうとするも、やはり鉄のワイヤーみたいに硬くて切れない。ギルドでの依頼でも使う大切なナイフなので諦めよう。次はレーザー銃だ。少し距離を取って、根を狙う。
パチンッ
発射された光線は白い根に当たるも、光線がはじけ飛ぶように打ち消され、傷の一つ入らない。何製なんだこの根は。
……もういいや、ノアが心配だし戻ろう。
◇
植物園を出る。ノアと妖光蝶と共に何かをやっている。妖光蝶はノアの前で羽ばたかせ、何もない方向に突風を吹き付けていた。
「えーっと、こうかなー?」
“そうそう、いい感じ。あー、そうそう、イイッ!! 超いいわ。蝶だけに。”
ノアは左手を前に突き出すと、途端に突風が発生して大きな砂埃の塊が前方向に飛び出す。妖光蝶はノアの方を向き、上出来だと言わんばかりにその場で舞った。
妖光蝶は新たな風魔法を教えてるみたいだ。声を掛けて良いのかどうか戸惑う。
“そうそうそうそう、こんなに超出来の良い子は初めてよ。長年あんな暗い洞窟に封印されてて超退屈してたけど、ノアちゃんに会えて帳消しどころかおつりが出た気分ね。超バタフライしたい気分だわ。蝶だけに。”
続けて、ノアは全身を風属性の色である透明に近い薄緑色のオーラを全身に纏う。何をするというのか。
“そーら、行くよーっ!!”
妖光蝶が舞ったと同時に妖精のような透明に近い青い羽を六枚出し、目にも留まらぬ速さで飛び立った。
「ちょっ………ノアっ!?」
“キャハハッ!! サイッコーじゃん。いい、めっちゃいい、超いい。蝶だけに。”
その場には妖光蝶だけが残された。
ドンッ!!
空間そのものが振動するような爆音が轟く。この音には聞き覚えがある、帝国の戦闘機が通過した時のソニックブームがそれだった記憶。
まさかとは思うが、ノアか?
“チョーはやーい…………。”
人があんな音速で飛ぶとどんなに頑丈でも潰れそうなものだけど、これも風魔法の成せる業なのか。
“あっ、蝶だけに。”
空を見ると、重い雲が教会の真上とは違う箇所に小さな穴が開いて日光が降り注いだ。天をもぶち抜くとは……。
そして数秒後、またもう一箇所に穴が開き、暫くして目で追える速度まで落ち、天女が地上へ降りるように、ふわりとわたしへと接近し、そして抱き着くように着地した。
「ルピィちゃんといっしょにとびたいなー。」
“秒でグシャるわ。やめときなさい。”
全身に鳥肌が立つ。
おそらく、生首だけがこの場に残されて、帰ってくる頃には潰れた胴体すらも
残ってるかが怪しい。ノアは不服そうに頬をプクッと膨らませた。マジかこいつ……。
それにしても、あの雲を越えて空高く舞い上がった。どんな景色が見えていたんだろうか。北にトゥリシア王国のキノコみたいな多層構造の建築物は見えたんだろうか。
“さーて、ルピナスちゃん、ノアちゃんの新魔法、どう?”
「普通に怖いわ。それよりも……ねぇ、ノア。何が見えた? あの雲、突き破ったよね?」
「うん、あおかった。」
“地球は、超青かった……蝶だけに。”
「えっ? 何か無かった?」
「ずーっと、ずーっとあおいの。」
ノアは両手を広げて大きさを表現する。その手の軌道が何だか丸い。まさかとは思うが成層圏まで行ったのか?
一体どんな教え方をしたらこんな身体強化魔法を覚えるのか?
“企業秘密。この理論確立すんの超大変だったんだからねー。蝶だけに。”
「ノア、ちょっと覚えた魔法使ってもらえないかな? さっきのは抜きで。」
「うんっ!!」
まず、
・突風を撃ち出す魔法。相手が巨漢でも数メートルは吹き飛ばしそうな威力はある。撃つ場所によっても様々なものを吹き飛ばすので、わたしが許可を出すまでは使わせないようにしよう。
・自らの背中の位置から自らに向かってやや強い突風を吹かせる魔法。これは空を飛ぶ際のブースターとしての魔法か。これも危険なので許可制か。
・数メートル先に旋風を巻き起こしてゆっくりと前に進む魔法。もはや竜巻。これも以下省略。
・自らを中心に旋風を起こす魔法。ノアはわたしを強く抱きしめ、妖光蝶はノアの頭にとまり、ノアは強い竜巻を生じさせる。植物園に被害が出るからやめてと言うと途端に竜巻が収まった。以下略。
・風の刃を発生させる魔法。左手の手のひらで“つ”の形を作るように窄め前に突き出すと、白いブーメランのような形をした刃が一直線に飛び、ある程度飛んだところで小さくなり消えた。危ないので覚えさせたくは無かったが、竜巻の類よりはマシか。でも以下略。
・風の刃を雨のように降らせる魔法。両手を開き、空高く翳す。そして手のひらから大量の白い刃が天に向かって飛び出し、地上へ方向転換をして地面に降らせる。非常に危ない。ノア作“うちゅう”の効果か知らないけど一発も当たらなかった。これは封印。
・風のバリア。自らを中心に風魔法を用いた円形の三次元バリアを張る。抱き着かれてるので内側からだけど、指で触ると弾かれる。これは……これぐらいはいいか。
ほとんど使えねぇ…………。
“何でよーっ!! 威力的な問題だったら、ノアちゃんなら使いこなせるよ?”
「ノアだから怖いんだが。」
わたしと、ユーリア以外は無関心だけど、例えばキューブパズルの邪魔されただけで平気で人の顔ぶん殴るし、それがこの異様なまでの高威力な魔法に変わったら災害以外の何物でもない。わざとだろうが事故だろうが、ノアの邪魔をする度に更地にされてしまったら、人々が惧れて、下手すれば邪神扱いだろうな。
それで、本当になんで妖光蝶がこんな高度なものばかりを短時間で教えられるの。
あとテイムしたのはわたしだよね。わたしにも風魔法を教えて欲しいけど……まぁ、風属性を持ってないし……いいんだけどさ。
“テイムはね、気まぐれ。でも結果オーライよ、ノアちゃんがあんな飛行能力を見せるなんて。久々に胸が高鳴ったわぁ。”
そんな雑でいいのか?
“あなたにも教えてあげたいけど、風属性を持ってないんじゃ無理ね。”
……諦めよう。
「ノア、一番最後に使ったもの以外は、わたしが使っていいって言った時だけ使ってね。本当に、危ないから。超危ないから。」
“蝶だけに。”
「ウザいから黙ってろ。」
「うん、わかった。」
“うん、わかんない。”
声のトーンからして少し残念そうだけど、災害級のものばかりなので仕方がない。
“えっ、スルー?”
妖光蝶はノアの頭から離れて、わたしの頭にとまった。クッソ軽い蝶だな、こいつ。
“ここだけの話だけど、ノアちゃんの奥深くから風のエルフの血脈を感じるわ。今時珍しいわね、シルフの血だなんて。”
「シルフの血って何だ?」
“ディアマンドの人々を含めエルフェイムのエルフって、それぞれの属性を司るエルフ、というか精霊がいるのよね。その中の一つの風属性を司るのがシルフ、またはシルフィード。昔は多かったのよ、あたしを含め、エルフはみーんな何かしらの血が入っているの。”
「エルフって、お前は蝶じゃないなら何者なんだ?」
“ダークエルフ。とは言え、ハイエルフとの混血だからノアちゃんと似た小麦色ぐらいのただのエルフね。今はローリエさんと同じで呪われてるのよ。あたし。そんなことよりも、はぁ、胸が高鳴るわぁ、今すぐにテイムの契約をあの子に変更したいぐらいよ。冗談だけどね。フフンッ。じゃあね、またちょっと遠くへ行ってくるわ。”
「おい、ちょっと待てっ!!」
飛んでいってしまった。何なんだあいつ……。
◇
ノアの手をしっかりと握り、密林を抜け、最初に入った場所から外に出る。
収穫はベリーとナシとゴブリン爺さんの電波と、妖光蝶からノアに与えられた魔法か。
そういえば、妖光蝶……ダークエルフだっていってたし、名前はあるんだろうけど……。
“あー、忘れてた。あたし、プラムっていうの。ローリエちゃんが月桂樹ならあたしはスモモ。超関係無いけどね。蝶だけに。”
…………プラム、お前は一体どこに居るんだ?
“いや、ノアちゃんの頭に乗ってるし。”
ノアの頭を見ると確かに羽を広げたプラムが居た。行ったんじゃないのか?
“一つ言い忘れたの。最初のボケ老人はぶっちゃけどうでもいいけど、二人目のあの顔を上下逆にしたような爺さん――――”
「なっ、何だっ!?」
地響きを伴う大きな爆発音が東の方角から聞こえた。
「うるさい。」
“なっ…………えっ、マジ?”
東の方角を向くと、集落よりもまだずっと向こうのあの工場から黒煙が上がっていた。事故か何かか?
“ちょっ、あの爆発よりも、もんのすごい量の霊魂のような野良の魔力が湧き出てる方がヤバいわ。ちょーヤバい。”
霊魂は見えず、魔力も遠すぎて感じ取れないが、空の雲よりもどす黒い煙は不安な気分にさせてくる。
“あっ、蝶だけに?”
遠いので影響は無さそうだし、このまま集落の調査もやってしまおう。
“あっ、えっ? 無視? 虫だけに?”




