1-13-2 錬金術(2)
ノアは雲に向かって高く飛ぶ。
下を向くと教会がミニチュア模型のように見える。随分と高く飛んだもんだが、これでもゴーレムの目線ほどの高さ。こんな巨大なゴーレム、歩いただけでも災害だ。
あいつはわたしにでも斃せるとは言ったが……いざ前に来ると、どうもそう上手く行くとは思えない。
だが、当のゴーレムはわたしの方を向き、じっとこちらを向いているだけ。攻撃もする気配はない。敵意は無いのだろう……な。
だが、何が何でもこれは鎮めなければならない。被害が出る前に。
よし、初っ端から最大火力で攻める……いや待て、火属性の最大火力だと、手を天に掲げないと出せないものばかりだぞ。わたしはいいがノアにダメージが入るかもしれない。
“一応だけど、ノアちゃんはオルビスでも特性はエルフ、火属性弱点でその倍率もかなり大きいから工夫は必要よ。”
ルナクローラーの声が脳内に響く。あいつ、近くに居るのか?
“さっきもだけど、その程度の距離なら念話なんて余裕よ。後は自分で考えなさい。”
チッ……ガンナーなら何事もよく考えて行動出来ないと命取りだからな。
……というか、ユーリアはどこ行った?
『うわぁぁっ!!!! あれ、ここは……?』
わたしの真横にユーリアが現れた。
“行こうとしなかったから時空魔法で飛ばしたわ。じゃあ、頑張って経験値を稼いでね。”
『えっ、何? ……ちょっ!!!! えええええええっ!!!!!? あれと戦うのぉっ!!!!!!!!?』
ウォォォォン…………。
『待ってっ!!!! 死ぬっ!!!! 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬっ!!!!!!!』
「死ぬ死ぬうっせぇ。本当に死ぬぞ。」
ユーリアの絶叫がこちらの敵意として見做されたか、赤い単眼の方から唸り声のような音が響く。
ゴォォォォォン…………。
それに呼応して黄色い双眼の方からも唸り声が。あいつは余裕つってたけど、こんなデカブツ…………っ!!
『くっさぁぁああああああああああっ!!!!!!』
「くさい。」
「んぐっ!!!?」
生ごみゴーレムの唸り声と共に、周囲に鼻の奥を腐敗臭漂う舌で舐め回されているような、吐き気を通り越して気絶しかねない生暖かい臭気が漂う。アレとはまた別ベクトルの嫌な臭い。ノアに頼んで風で飛ばしてもらおうか。
こいつの息で充満してる時に火属性魔法なんて使ったら大爆発しかねないし。
『やっ、やばい……臭すぎてカエルとかカッパとかになりそう。』
「冗談はいいからやるぞ。お前のレールガンなら行けるだろ?」
『うっ…………そうだね。ゲホゴホッ、くっさ……。』
金属ゴミが集ったゴーレムの額に“come on!!”の文字とウサギの絵が描かれた看板が張り付いている。的としては丁度いいな。
それに対してこっちは生ごみゴーレムだ。とにかくこのとても臭い息を吹き飛ばさないと……こいつもよく見たら色んなところにリアルなウサギの縫いぐるみだとかウサギの絵が描かれた紙だとか……あの縫いぐるみ、赤黒い液体が垂れてるけどまさか……まぁ、あれも燃料の一部だ。成仏してくれ。
「ノアっ!!」
「うんっ!!」
いや、まだ何も指示していないが……。
だが、ノアの背後から生ごみゴーレムに向かって風が吹きつける。背後を見ると、大きな魔法陣がノアの背に生じていた。この状況を理解して的確に処理している。
“ノアちゃんはあなたの思ってるのよりもよく出来る子。ほら、呆けてないで攻めるのよっ!”
「あっ、あぁ、そうだな……おい、ユーリア、そっちはどうだっ?」
『あれ……どうして……?』
二本の触手を並行に長く伸ばしたユーリアのそれに何度も青白い弾を生じさせようとするも、うまく形成されずに散っている。
“地面から離れてるしプロジェクタイルになるものが無いか、単純にMPが足りないかのどちらかね。それぐらいは自己管理できるようになりなさい。他にもあるでしょ?”
あいつ、しっかり監視してやがるな。
『マジかよ…………。よし、IH魔法だっ!!』
アイエッチ魔法?
ゲゴゴゴゴ………………。
「くっ…………あんな吐息を吐くぐらいなら体内は……よしっ!!」
ノアに強風を吹かせてもらいつつ、手のひらを生ごみゴーレムに向けて片手で出せる程度の火球を飛ばす。この程度でも、うまく行けば一気に燃やし尽くせるはずだ。
グゴォォォォォォォォォォンッ!!!!!!
「あっつっ!!!! ノア、大丈夫かっ!?」
「うんっ!!」
生ごみゴーレムは炎上して一気に全身に回り、周囲を橙色に照らす。
全身に満遍なく可燃性ガスが溜まっているため、小さな火でも引火したのだ。それでいて生ごみが繋ぎ合わされた体はスカスカで風通しも良く、瞬く間に全身に回り火だるま。
爆発しなかったのは幸いだが、これはノアのおかげかもしれない。
鈍速の生ごみゴーレムは天頂から足元まで炎上、成す術もなく崩れ去り、ただの燃えるゴミの山と化した。所々突き出ていたウサギに関する物もあの本物らしきウサギの死骸も全て火の海の中。
それにしても何が何でも弱すぎる。これなら南区のゴロツキが魔道士の真似事をして覚えたような不安定な初級火魔法でも倒せる。ルナクローラーが糧にしろと言ったのはそういうことか。
グヌォォォォォォ…………。
『ほら、ほら、食らいなさいっ!!』
ユーリアはマギサ草の根を焼いた時のように触手同士を繋いでジャンカゴーレムの方を向いている。屑鉄の体はバチバチと火花を上げ、青白い炎のようなものが所々に生じて凄まじい熱と生臭い匂いを放っている。
『セントエルモの火だぞ~ッ!!』
そっちもそんな誰も知らないような用語を言えるぐらいには余裕か。放っといてもいいな。
ゴーレムの体の色んな所に小さな爆発が生じて破片が散っている。当たったら熱そうだから距離を取ろう。
…………破片……これなら……。
「ユーリア、今ならレールガンが使えるんじゃないか?」
『えっ……あっ、破片…………っ!!』
触手を伸ばし、瞬時に体勢を変える。散りゆく鉄屑がユーリアの胴の前に集まり、生じた青白い弾に吸われてどんどん大きくなる。
『やっぱり鉄分不足だったね……よしっ!!』
そういえば、コアは何処なんだろうか? やっぱり、あのウサギの看板の額?
生ごみゴーレムみたいに焼き尽くしたからコアの位置も何も無いが、レールガンの攻撃範囲やゴーレムの巨躯のことを考えると、位置を把握していないと無駄撃ちになってしまう。
『コアの位置は解ってんだよ。そこだろっ!?』
「おい、適当に撃つなよ。ルナクローラーの意見を聞くまで待てっ!!」
『さぁ、行くよっ!! さぁゴーレムくん、鉄分、摂ろうねっ!!!!』
あの鉄の塊にこれ以上の鉄分は不要だと思うけど。
『発ッ射ァァァっ!!!!!!』
ユーリアは青白い弾をウサギの看板ではなくゴーレムの赤い目に向かって発射する。
凄まじい轟音と共に、顔は看板もろとも吹き飛んだ。
『やっ、やったかっ!?』
…………
唸り声も無く、顔の無いゴーレムはその場で立ち尽くす。体は崩れない。
コアはそこじゃなかったかっ!
“いいえ、大当たりよ。顔で合ってるわ。”
あの看板はフェイクか……。
“フェイクもなにも、あの攻撃範囲と威力なら頭の何処当てても同じよ。それよりあなた、ゴーレムのこと知ってるんならクレイゴーレムの一匹ぐらい倒してるでしょ?”
いや、それぐらいは倒してるけど、クレイゴーレムかウッドゴーレムだけだし、もし弱点が違ったら大惨事だから様子をみてもいいとは思うんだが。
“本当に慎重な子ねぇ。まぁでも、守りのステータスが低いガンナーなら当然だわね。でも、あなた一人だけだとそんな猶予もないわよ。”
……まぁな。
“ガンナーは前衛が居てこそだから、それを蔑ろにしないことよ。”
……うぜぇなコイツ。分かってんだよ、そんなこと。
『うわっ、崩れ始めたっ!!』
ジャンクゴーレムの両腕は落ち、胴体も上から下へゴロゴロと崩れ落ちる。そしてただのジャンクの山と化してしまった。何とも、呆気ないものだな。
“戦闘終了、戻すわね。”
一体何を――――
――――
『あれ……?』
瞬きをした瞬間にあの畑まで戻っていた。さっき戦っていた場所は真っ赤に燃え上がり、その黒煙は雲と繋がっているかのように高く上がっている。
“はい、お疲れ様。えーっと、ルピナスちゃんのレベルは……あら、おめでとう。25から27、2も上がったわ。”
25もあったんだな。結構過酷な現場にも出て数え切れないぐらい仕留めたけど、初見のインパクトだけで弱い方から数えた方が早いコイツで2も上がるとは……。
“ユーリアちゃんは30から31、ノアちゃんは……上がってないわね。ノアちゃんも二人も頑張ったはずなのに思ったよりも経験値が少ないわねぇ。あれ、強さに反して経験値が多いからもっと上がるんだけどねぇ。”
ノアの場合、通常通り経験値が入るのなら大きく上がるはずだが、何故変わらないのだろうか?
“エルフェイム系統のエルフの場合は1レベル上がる際のステータス上昇幅が非常に高い分、かなりの量の経験値が必要になるの。だけど問題はそれじゃない。あなた、確実にコアは破壊したの?”
…………燃やしたから倒しただなんて……思ってたが、あの炎上ですら壊れてないとすれば……。
“…………戦闘続行。下手したらフレイマゴーレムかカーボニックゴーレムが誕生してるかもね。どちらもさっきまでの巨躯とは違って人並みだから侮りがちだけど、戦闘力が段違いだから気を付けなさい。わたしもよく監視しておけばよかったわ。”
……いちいち念話で割り込んで来てたし、遠くでよく見てるもんだと思ったわ。
“ちなみに、フレイマゴーレムとカーボニックゴーレムの弱点は水属性、氷属性、重力属性のいずれかね。重力属性は龍族や巨人族のような大型種に特に有効だから覚えておきなさい。”
誰も使えねーし……。
◇
再びルナクローラーに戦地へ送られる。荒野のど真ん中、ぼた山となったゴミの山は油でも撒いたかのように激しく炎上し、空を覆いつくす雲を橙色に染める。もうコアも砕け散ってしまったのではと思うが、気は抜かない方がいいんだよな……?
『あっ、ジャンカゴーレムの瓦礫の山、何かいっぱい落ちてる。あっ、これはっ!!』
「あぁ? 宝探しはこいつを片付けてからの方がいいぞ…………っ!!」
炎に照らされたゴーレムの残骸の周囲には中身が入ったECセルが大量に落ちていた。本当に大量、これ全部持って帰れば当分は困らないし売ったら相当な額になるぞっ!!
“宝探しなんてしている暇は無いわ。余裕があるのなら生命探知でも……いいえ、まだあなたには使えなかったわね。”
……まぁ、そうだな。だけど、魔物化するのを指咥えて待ってるだけなのか?
“さっき言った通り、弱点の氷属性か水属性の魔法でも使えれば消火できるし、やりようでは温度差でコアをカチ割れるから即戦闘終了に持ち込めるけど無理でしょ?”
……まぁ、無理だな。炭や灰と化したら体積はかなり縮まるからさっきみたいな空中戦になることは無いんだろうけど、地上敵に対して空中戦はかなり有利に戦える。ガンナーなら猶更だ。この燃えるゴミの山を突風でぶっ飛ばしてそれから空中で待機しよう。コアがゴミを集め出したらそこを狙い撃つ。
「ノア――――」
「うんっ!!」
「いや、だからまだ何も――――」
『うわっ、あっつっ!!!!』
燃え盛るゴミの山から発する温度が急激に上がる。顔を向けられない程の熱を放ち、火柱はより高く上がる。
「あつい。」
「そうだな。後退して距離をおこう。」
フォォォォォン…………
燃え盛るゴミの山から澄んだ唸り声がする。
≪鑑定≫
魔物名:フレアゴーレム
ランク:S
属性:火属性
ウッドゴーレムやダスタゴーレムが炎上することにより生じるパイロゴーレムやフレイマゴーレムの炎に高濃度の瘴気が混ざると生じる変異種。ゴミの中にSランク以上の者の死体が混ざっていることが多い。発生例は非常に少ないが、多くの奴隷が収容させた施設の焼け跡やゴミ処理施設で生じた例がある。
≪以上≫
「待てよ、フレアゴーレムって、Sランクじゃねーか。」
『そんな無茶苦茶なっ!!!!』
“フレアゴーレム……へぇ、本当にここは蛇も蚊も出るわねぇ。あなた、やっちゃいなさいよ。倒したらレベルは一気に40台に乗るわよ。”
馬鹿言え、鑑定も知識を披露するだけで役立たずだし、どうしろと?
『ちょちょちょちょっ!!!! ちょいちょいっ!!!!』
「ちょいちょいうっせぇな、何だよ…………何だあれは?」
炎から人影のようなものが出てくる。遠目で見た感じはコハルさんとそう背丈は変わらないが真っ黒、ゴーレムのように光る部位は無い。
炎の柱から煤がその人型の何かにあつまり、棒人間のような体は徐々に肉を得てすらっとした小柄な少女のような姿になり、頭部から左右に二本の長いツインテールのような何かが地面に向かって延び、体にはドレスのような意匠が形成され、そして最後にウサギのような長い耳が頭部から生える。それは不気味なほどに真っ黒。
まさかとは思うが、鑑定にあったSランクの人の死体って……?
“どこかの令嬢か護衛兼メイドが始末されて燃えるゴミとして捨てられたのが混ざってたのね。ウサギも混ざっちゃったみたいだけど。”
≪鑑定≫
魔物名:テルミナ・シャドウ
ランク:SS
属性:火属性、土属性、風属性
フレアゴーレムに含まれるS級以上の者、この場合はテルミナと呼ばれる者(ジョブ:メイド・姫騎士 ランクS)の影響を強く受け、シャドウモンスターとして転生した姿。
≪以上≫
『無茶も苦茶も何でもありかよ……。』
戦えるか馬鹿野郎。火属性に風属性とか相性が良すぎて灰にされかねない。
つーかどこのクソ野郎だよ、埋葬もせずゴミとして捨てた野郎は?
血も涙もありゃしない。つーか、姫騎士って何だよ? 姫って?
テルミナシャドウは右手を天高く掲げる。一体何をするつもりだ?
いや、見てる暇なんて無い。
「ノア――――」
「うんっ!!」
「いや、だからまだ何も……。」
ノアは再びわたしの脇に腕を通し、空高く飛び上がる。思ってた通りの動きだ。
褒めるのは一旦後にして、テルミナの方を見る。横のジャンカゴーレムの残骸がガタガタと振動し、中から一本の長い棒が飛び出てテルミナの右手に収まった。まさか、あの棒が武器なのか?
テルミナは棒を頭上に持ち上げ、回転させる。忽ち棒の両端は火に包まれ、橙色の円を書き、回り続ける。次第にテルミナの周囲には塵が舞い、風の渦が生じた。これは…………っ!
「ノア、下がるぞっ!! あの時のような炎の渦が発生するっ!! ゴミの山に隠れるんだっ!!」
「うんっ!!」
ノアは再び降下し、あのゴミの山の裏へと降りる。降下の途中でユーリアが浮いてたので掴んで安全地帯と思わしき場所へ連れてゆく。
『こらっ!! 分かったから掴むなっ!!』
「死にたくなれれば隠れてろ。」
背後から凄まじい熱波と共にゴミの山から大量の金属屑が向いている方角に向かって飛び、ガラガラと地面を転がる。
運良くゴミに当たらなかったが、ノアの飛行速度ならもっと遠くへ逃げればよかったか。
何か光るものが幾つか足元に転がる。あっ、まだ残量のあるECセルだ。貰っておこう。
『来たよっ!!』
テルミナはわたしから五十メートルほど距離を開け、ストッと着地して燃える棒を構える。
『物凄い跳躍力……。レールガンはチャージが要るからまず当たんないし、どうするの?』
「……ユーリアはあの電磁力でどうにかして。わたしも、この状況をどうにかするから。」
『電磁力って、黒いけどあれは煤であって砂鉄じゃないし、下手に使ったら周囲のゴミを巻き込んで塊になっちゃうよっ!!!!』
「お前の頭で考えてくれ。」
テルミナは駆け出す。ガンナーにとって接近戦はあってはならないこと。ましてやこの高ランクの騎士だと死と同等。騎士なんて戦闘でも守りでも頂点を行く最高峰の職の一つ。高レベルなら猶更だ。
「ノア、逃げるぞっ!!」
『うぉい、こらぁ―――――っ!!!!!!!』
「ううん。」
ノアは命令を拒否する。
…………チッ、仕方ないか。ノアに任せよう。……わたしよりも判断は的確かもしれないし。
左手にいつもの剣を出し、右の手首には小さな円盤状で中心がなだらかに盛り上がったバックラーらしき盾らしきものが装備されている。背の羽は左右それぞれ二本ずつ。一本で剣にも盾にもなるんだな。
テルミナは飛び上がり、炎の槍は振り上げられ、ノアはそれを受け止めようと小盾を構える。軽装の剣士から聞いた話だが、そういう形状の小盾は相手の技を受け流すのに特化しているらしいが、ノアがそんなベテランの剣士が持つような技術があるとは思えないが……。
「ノアっ!! 無理だっ、下がれっ!!」
ノアの右手の小盾から黒い靄のようなものが湧き出す。これは……?
『クッ、こいつ……。』
……誰の声だ?
『あれ、この真っ黒な子、喋った……?』
槍は小盾の曲面に受け流され攻撃が逸れた。ノアはその一瞬の隙に小盾を左手と同様の剣に変形させて踊るようなステップで何処で覚えたか双剣の連撃で相手を押す。テルミナは槍で受けきり、バックステップで距離を取るも、燃える槍は真っ二つに折れてしまった。
『この子……生きている内に会いたかったわ。』
『あなた、喋れるの?』
『フフッ、姫様は逃がせたけどね、わたしは……卑劣な真似をする帝国の奴等に滅茶苦茶にされて、止めに毒を飲まされ生ごみと一緒に捨てられちゃったの。でも、あなたのような純粋な強者と戦えるのなら全てチャラにできるわっ!!』
主の盾である騎士のはずが、戦闘狂かよこいつは。
『待って、その帝国って、プラトナス帝国じゃないよね?』
『え? 聞いたこともないけど。わたしはエーテルランド地方の……ううん、喋りすぎは良くないわね。それよりも、そこのあなた、名は何ていうの?』
テルミナは左手を腰におき、右手でノアを指さす。
「ノアだよ。」
ピンッと指さした手を曲げ、同時に体が揺れる。動揺しているのか?
『……姫様と同じ名前なのね。やり辛いわ……。』
「あっ、いや、正確にはエレノアなんだが。」
手を引き、顔を押さえる。今度は親族か女王様か何かの名前なのか?
『……お母さまと同じ名前だわ……。やり辛い……。』
……こっちも倒し辛い。そのまま引いてくれたら有難いのだが。
顔を横に振り、再び右手をビシッとノアの方に向ける。
『ううん、そんなこと関係無いっ!! さぁ、やろう。強者を前にすると滾るの。ところでそこの金髪ツインテールとクリオネみたいなの、あなたたちも強そうな雰囲気がでてるわね。一斉に掛かってきてもいいわ。受けて立つっ!!』
とんでもねぇ戦闘狂だ。これは戦わずして終わらせることは困難か。
テルミナは見えない剣を捧げるように手を前に出す。周囲の煤が集まり、一本の大剣となった。ノアより少し身長が高いぐらいでそう体形は変わらないのに、重そうな大剣を軽々と頭上で回して先を地面に叩きつけた。
『炭でも密度が高いと鉄以上に硬くなるの。わたしの土属性を用いれば造作もないのに、騎士なら自分の剣を持てだのなんだので、怪しい教会で祝福した装飾だけ豪華な軟弱な鉄の剣を持たされてたから、自由に戦えていいわ。』
『なら、何でさっきは鉄の棒を使ったの?』
『あれ、ミスリルの棒よ? 土属性の使い手はどこに何の物質があるか分かるのよ。あんな硬い魔力鋼をへし折っちゃうなんてね、久しぶりに腕が鳴るわ。』
「今度は火を纏わないのか?」
テルミナの体は僅かに揺れる。分かりやすいな。
『そんなことしたら剣が痩せ細っちゃうでしょっ!? 重さが命なのにっ!!』
あぁ、なるほど、生身じゃないのに棒の端だけ火を点けてたのは手を燃やさないためか。炭は燃えて酸素と合わさり二酸化炭素または一酸化炭素になる。つまりは今のテルミナの体も一緒。仮に痩せても周囲の煤で戻ったとして戦闘中にそんな余裕は無い。弱点が生じればそこを突かれて一発だ。よし、思いっきり燃やすぞ。
『さぁ、来なさいっ!! こないならこっちから行くわっ!!』
来る来ないも関係なくテルミナは大剣を振り上げノアに向かって振り下ろす。本当に血の気の多い奴だ。そもそも、そんな遅い攻撃、悪手も悪手だと思うが……。
「あぶない。」
『ウフフッ、早いでしょ。』
重そうな大剣を扱うわりに素早く、だが、その何枚も上手であるノアはバックステップで回避し大剣が地面と接触した隙に懐に飛び込む。
『だろうね。』
テルミナは飛び込まれる前に大剣を離し、バク転からの宙返りで距離を離し、両手を合わせる。ノアは何かを察知したか、動きを止め、テルミナと同じくバク転で後退する。
ノアから離れた今なら火球で攻められるぞと思った途端、テルミナの前に大きな土の壁が立ちはだかった。
『土の魔法、ロックウォール。でもここの土は駄目ね、サラサラだから直ぐ崩れちゃう。ノアも素早いから吹っ飛ばそうにも当たらないわ。』
「おい、何小細工してんだよ、正面から殴り合うんじゃなかったのか?」
『細工含めての戦闘。力も魔力も総動員して殴り合うのよ。』
こっちも小細工モリモリで行くか。何としてでも倒すか収めるかする他にない。
テルミナはノアと同じように大剣の煤を双剣へ作り替える。そしてノアも右手の小盾をいつもの剣に変形させた。
『双剣は経験があんまり無いけど、行くよっ!!』
なら、さっきまでのノアみたいに片方を盾で良いんじゃないかとは思うが、盾を使った戦闘も経験は無いのだろう。
より素早くなったテルミナは剣を持った腕を広げ、ノアに向かって飛び込む。ノアは剣で剣を受け止め、弾き返しテルミナを押し返す。テルミナもまた体制を整え、再び正面から突っ込む。
『んあぁああああ………やっぱ強いぃぃ…………。』
ノアは表情一つ変えず、ただテルミナの突進を自身の双剣で受け止める。
重い武器をよく使っていて双剣の経験が少ないテルミナに対してノアは言うまでもない。分が悪いっていう話じゃない。
これなら最初のように棒術か槍術の方が良いような気もするが……これで騎士が務まるのだろうか?
いや待てよ、最初しか使わなかったが、あの火属性と風属性の一撃必殺級の合わせ技を使わないから手加減しているのだろうか?
いずれにしてもノアしか見えてなさそうだ。やるなら今か。
今の内に手を天に掲げて大火球を……?
「おい、お前も何か撃つのか?」
ユーリアは高く浮いて二本の触手を天に掲げている。
『ちょっと、磁力をね。鉄の塊にならないよう加減しなきゃ。』
地面の砂鉄はあの時の黒い雨のように浮く。だが、砂鉄は上にではなく、斜め上に向かう。
『来いっ!!』
砂鉄はユーリアの触手の上に集まり、青白い光を放っている。まさか、触手のレール無しでレールガンを撃てるようになったのか?
ジャンカゴーレムの残骸がガタガタと揺れ、砂鉄と共に空中に集まる。それはすぐさまに巨大化し、大きなゴミの塊と化した。それを投げつけるつもりか?
「ノア、そいつを大きく弾き返せっ!!」
「うんっ!!」
ノアはあの状況でいつも通りに元気よく返事をする。そして隙を突いて、剣ではなく剣を握ったその左手でテルミナの顔をぶん殴って吹っ飛ばした。
『ぐぬっ!!!?』
ノアはバックステップで距離を取ると、ユーリアは少し後ろに仰け反り、そして思いっきりそれをテルミナに投げつけた。
『こっ、この…………うわっ!!!?』
巨大な鉄屑の塊はテルミナの煤の体を押し潰して姿も何も見えなくなってしまった。これでコアを叩き潰して無事天に召されたか?
『んなわけあるかぁーっ!!!!』
『まっ、まだ動けるのっ!?』
塊が少し浮き、隙間から声がする。しぶといっちゃありゃしない。
塊は徐々に浮く。テルミナはしゃがんだ状態で両手で数十トンはあろうかと思う屑鉄を押し上げている。なんという馬鹿力だ、こいつは。つーか、土属性の魔法で押し上げられるんじゃないのか?
『まだまだっ!!!! わたしはこんなもんじゃないぞっ!!?』
屑鉄の塊はゴロンと倒れる。テルミナは膝を着いて少し苦しそうにしている感じはもうそろそろ限界か。
『だっ、だけど……流石に強すぎるわね。でもまだまだよ。これで終わっては騎士の名折れだわ。』
「もういいんじゃないか? お前じゃノアに勝てないし、そもそもだが、目の前に集中し過ぎて周囲の攻撃が疎かになってるし、どうせまた同じ手を食らってやられるだけだろ?」
テルミナの体がビクッと揺れる。分かりやすい。
「あと、火属性もその炭で出来た体で受けたら剣だけじゃなく体もやせ細って守備力が下がるんだろ。」
『そそそそそそそ、そっ、そうよっ!! でも、あなたにそんな大きな火の玉が出せるのっ!?』
……大火球、いや、極大火球でも見たら流石に引っ込むだろう。
右手を天に掲げ、目を瞑り全身の魔力を手のひらに集中させる。一気に魔力を送ると破裂して火球を撒き散らしてしまうから、ゆっくり、ゆっくり、大きく、大きく。
本当の魔道士でランクも高ければ一瞬で巨大な火球を出せるんだが、生憎、大したランクでもないからゆっくりでないと出来ない。優秀な前衛が居てこその技だ。
『おっ、おいルピナス、クッソ熱いんだけどっ!! あんたどんだけ大きな火球を出すつもりだっ!!!?』
「ルピィちゃん、あつい。」
あ?
えっ!?
目を開けると周囲は妙に明るい。上を見ると宇宙から太陽を映した写真のような、上空に物凄く大きな火球が鎮座していた。
ちょっと待て、これはわたしが出した火球かっ!?
こんな火球、出せるなんて知らねぇし、ちょっ、マジかっ!?
『ちょっ、ちょっと待って、こっ、これをわたしにぶち込むつもりっ!?』
どうしよう、出したものを引っ込める術を知らない。真上に打ちあげて第二の太陽にでもなってもらうか。
「おい、まだ戦うつもりか? ここで引くなら真上に打ちあげるけど、引かないのなら容赦なくぶち込む。」
『ちょっと…………いいえ、騎士の名折れよ。受け止めるわっ!!』
こいつ、本当に脳みそまで煤で出来てやがる……。もう知らねぇぞっ!!
「ユーリア、ノア、下がれ。こいつをヤツにぶち込む。」
『る、ルピナス、お前正気かっ!?』
テルミナは全てを受け止める気か両腕を真横に広げ、真っ黒な体だけあって字で書いたような大の字。
絞って小さくは出来ないし……えぇい、ままよっ!!
火球をテルミナに向かって発射する。轟音と共に凄まじい熱気で、地に含む極僅かな水分が蒸発し体感湿度が上がる。
……本当に、こんな巨大なものを地上に向かって放って良かったのか……?
「えいっ!!」
『の、ノアちゃん、一体何をっ!?』
ノアの声と共に何か四角いものがテルミナに向かって放たれる。それも二つ。
「おいっ、ノアッ!! 下がってろって言っただろっ!?」
「じゅーりょくっ!!」
重力?
四角い二つの何かは破裂し、同時にテルミナに向かって引き込まれる。まさか、あの四角い物体はキューブパズルで、それも二個同時のアレで……まさか、両手のアレは成功してたのっ!?
≪情報(再掲)≫
特殊技能:Wエレメントキューブ
・3×3ブロックキューブを左右の手に一つずつ持ち、レベル1と同じ条件を満たすと取得できます。
キューブを二つ投げ、上に向いている色に応じて下記の属性が発動。
白の光属性、橙の火属性、黄色の雷属性、青の氷属性、緑の緑属性、赤の無属性大爆発、加えて黒の闇属性、茶色の土属性、水色の水属性、薄緑の風属性、紫の重力属性、灰色の時空属性が追加されます。キューブに使う色は術者により自由に組み替えが可能だが、1個のキューブに対し6面全て異なる色にしなければならない。左右の重複、例えば左右共に同じキューブを使うなどは可能。
※取得済み
・発動中:紫+紫 重力属性(ランク:?)創造主の児戯:星の創造(胎動)
≪以上≫
マジかよ……。
テルミナは炎の弾に包まれ、同時に重力の力はより強まる。このままではわたしも吸われてしまう。
脇にノアの補足、そして暖かな腕が差し込まれる。わたしを抱え、後ろに向かって飛んだ。
星の誕生のように、散っていた鉄屑や塵が吸い込まれ、赤い火の玉は白く激しく輝く。そして、心臓が鼓動するようにドクンッ、ドクンッと空間そのものが揺れる。
『あっ、ああああああっ、あんた、星を創世してどうすんのっ!!!?』
「あっ、ユーリアっ! なんでお前だけ逃げてんだっ!?」
『痛い痛い痛い痛いっ!!!! この馬鹿野郎が腕引っ張んなっ!!!! ノアちゃんあんたから離れようとしないから仕方無かったんだっ!!!! ノアちゃんならあんたを連れて飛べるから問題無さそうだし……。』
「チッ……まぁいいわ。居てくれたおかげで吸い込まれずに済んだし。」
とは言え、アレを投げ込んだのはノアだし……。
“お疲れ、アレ、倒したの?”
ルナクローラーの声がする。あの野郎、完全に静観を決めやがって。
“あら、心の声はしっかりと聞こえてるわよ。どうする? もう戻る?”
あぁ、いや、最後まで見届けるわ。あれ、かなりしぶといし。
“フフッ、そうね。ちゃんと仕留めてるか、よく見てきなさい。”
しかし、何だか可哀そうな気もするな。あれだけよく喋ってたし、前世の死に方も凄惨だし……でも戦って死ぬことが本望なところがあったし、これで良かったのか?
『うわっ!!』
かなり距離を取ったはずだが、ここでも急激に吸い込まれるような感覚がした。だが、それは一瞬で、真っ白な閃光が途絶えたと同時に不気味な鼓動も無くなり、吸い込まれるような感覚も無くなった。発動した重力魔法も消えてなくなったのだろうか。
……もう近づいてもいいのか?
あの時のような失態は起こしたくはない。起これば皆が危険に晒される。自分の目でしっかりと確認をしたい。
『……あたしも行く。あんただけ行って、生きててたら今度こそ危険だぞ。』
ノアだけ置いておくわけにも行かず、何かあればすぐに離脱するぞと言い聞かせる。ノアは元気よく返事するだけだが、今までの事からして、言っていることは理解してるんだろうな。
恐る恐る近寄る。テルミナが居た所には大きなクレーターが生じていた。
『えっ……マジ……?』
クレーターの底には大の字のまま仰向けになったテルミナの煤の体がそのままの形で真っ白に変色していた。
……背後からシャラシャラと音がする。ルナクローラーか。
“何だか心配になってきたから来てみたわ。”
『あっ、あれ、動かないよね?』
“…………ふーん。そう来きたか……。あの予想外の灼熱にノアちゃんの凄まじい重力魔法が炸裂したものねぇ……。重力属性に弱いコハルちゃんにまで害が及んでたわ。”
ルナクローラーはクレーターの真ん中まで飛び、腹部から例の透明な玉を膨らませるように出す。そしてあろうことか、その玉を真っ白なそれの腹に向かって落とした。
『ぐふっ!!』
“何だ、まだ生きてるじゃないの。良かったわね。”
玉は鈍い音を立ててバウンドした。それにしても、本当に本当にしぶといなコイツは……。
『まさか、あの火魔法と重力魔法の合体でダイヤモンド……いや、何かの焼き物になっちゃっただけ?』
“色んな物を吸い込んでるから何の物質か分からないけど、煤の部分はあの高圧でダイヤモンドになっているかもね。謎セラミックを割って取り出してもかなり小さいと思うけど。”
『げほごほ…………あれ、わたし…………ちょっ、ちょっと、この体はどういうことっ!?』
煤じゃなくなっても柔軟性はあるのか、硬そうな白い体は音も無く引っ掛かるとこも無く、まるで人体かのように曲がる。何とも不思議な物質だ。
“新しい体よ。凄まじい守備力を得てもあの子たちには敵わないから、新たな主ということにして、戦うのは諦めなさい。”
『新たな主……。』
≪テイム≫
必要属性:火属性
必要レベル:指定なし
テルミナ・サーマイトをテイムしますか?
≪応答待ち≫
“サーマイト……名前もファミリーネームもそれっぽいのね。”
「テルミナ、わたしたち三人の誰を主にするんだ?」
『一番強かったあんたを、いいえ、あなたを……あの、名は何と申すのでしょうか?』
「ルピナスだ。」
『ルピナス…………。』
テルミナは俯き、右手で口元を覆い、わたしから顔を背ける。なっ、何だ? 姫に母と来て今度は何なんだっ!?
『…………姫様が大切にしてらっしゃったペットの犬の名前と一緒…………。』
「はぁぁぁ?????」
“犬。まさかの犬に付けてた名前。こんな奇遇もあるのねぇ。”
いや、ちょ待てよ。ふざけんなっ!! 犬の名前かよっ!!
クソ、顔が熱くなる。こんな顔、ユーリアに見られたら……。
“犬の名前なんて好き勝手に付けてナンボの話よ。でも、ほら、ユーリアちゃんが。”
『…………プッ……いっ、犬の…………。』
ユーリアは触手で腹部を押さえ、プルプル震えている。この野郎……。
『いっ、犬の名前っ…………フフフッ、アハハハハハハッ!!!!!!!!!』
「ユーリア、黙れ。」
『あっはっはっはっはっはっ!!!!!! る、ルピナス、お手っ!!!!』
片方の触手をわたしに向かって突き出し、先をクイクイと曲げ、挑発する。
イライラが限界に達したので叩き落として足で踏みつけた。
『ぐっ、ぐふっ……おっ、覚えてろよ……。』
「お前が調子に乗るからだろ?」
“もう、何でもいいからテイムするかどうか出てるのなら、決めてしまいなさい。テイムもかなりの経験値になるからね。”
テルミナは跪き、頭を下げている。その体はプルプル震えている。
『……犬の名前…………フフッ……。』
こいつも笑ってやがるな……。
「約束して欲しいんだけど、幾ら強くてもノアには手出すな。」
『エレノアさまは師匠です。手は……出しません。多分。』
多分って何だよ。まぁいいけど。
“ノアちゃんでこれなら……コハルちゃんのあの力を見たら卒倒するわね。”
「あれは規格外だな……。」
「ねーねー、ルピィちゃん?」
『ルピィちゃん……。なんて可愛い呼び名なの……。』
ノアは服を引っ張ってくる。
「あっ、あぁ、ノア、何だ?」
「わんっ。」
あぁん???
「ワンワンのまね。ルピィちゃん、ワンワンだって。」
ノアは何を思ったか両手を垂らし、犬の真似をしている。どう反応していいか困るんだが???
『…………ンフフフッ……。』
『プッ…………ぐふっ。』
あぁ、クソッ。テルミナの野郎、何てこといいやがんだ……。尊厳もクソもありゃしねぇ。
≪テイム≫
テイムしますか?
≪応答待ち≫
あっ、忘れてた。
あぁ、テイムする。
≪テイム≫
承認されました。
火属性のランクがSに上がります。
≪以上≫
あぁ?
ちょっと待て、しれっと流れたが火属性がSランクなんだが?
“良かったわね。MPが伴わなさそうだから期待は出来ないけどね。ルピナスちゃんのレベルが27から35に、ユーリアちゃんは31から37に、ノアちゃんは2から3に上がりました。良かったねっ!!”
それでなおユーリア未満かよ。まぁいいけど。感覚ではなんも違いはないけど、一気に30台中盤に来たからには射撃能力とか上がってるだろ。多分。
「そうだ。テルミナはSSランクなんだろ?」
『えっ? いえ、わたくし自身のランクはBです。ジョブとしてのランクは、メインの騎士はSランクですがSSではありません。サブのメイドはEです。』
何だよ、鑑定で出た文言はガセじゃねぇか。
“あれはテルミナ・シャドウという魔物のデータであって、この子自体のデータでは無いわ。”
ということは、もう一度鑑定が発動しないと詳細は分からないということか。
騎士というのなら、コハルさんの護衛でもしてもらおうかな。でも、自身のランクと大きくずれるという事もあるんだな。
“素行が悪いと離れることはあるわ。守るべき主が居る騎士なのに、ここまで血の気が多かったんじゃ、ありうるわね。あと、メイドのランクが足引っ張ってるかも。”
……任せて大丈夫なのか?
『プフフッ……犬の名前…………。』
「うっせぇ、踵で思いっきり踏み潰すぞ。」
“はい、お開きね。コハルちゃんが待ってるわ。”




