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1-05 兎の穴

第五話


出口を探そうだなんて言ったとこで、行く宛もなく……。


深い溜息を付き、空を見上げる。教会を中心に円を描くように晴れた空、まだ太陽は天頂にはないけどとても明るい。澄んだ空がわたしを吸い込んで、この世界からスポーンッと引っ張り出してくれそう。あぁ、鳥になりたい。


…………。


頬を両手でバチーンと叩き、畑とは反対方向に震えが止まらない足を一歩を踏み出す。一歩、一歩、また一歩…………ん?


目の前に広がる茶色い丘の斜面から、何やら薄緑色に光る物体が転がり落ちてくる。

そして少し遅れて白い生物が斜面を左に右にとピョンピョン跳ねながら斜面を……あいつはっ!!


「おいっ、待てっ!!」


あれはあの時の白ウサギ、光る物体はあのECセル。白ウサギはECセルを担ぎ、再び飛び跳ねながら丘の上へ戻って行く。あいつはわたしをここへ誘導し、異世界へと迷い込ませた。あいつは……あいつを逃がしてしまえば二度と元の世界に戻れないっ!!

持つ全ての力を使い追いかけるも、奴は素早く既に丘の上に登り、じっとこちらを見下ろしている。あいつはわたしを挑発しているのか?


「クソッ、あの野郎……待ってろっ!! 絶対に逃がさねぇぞっ!!!!」


奴の長い耳がほんの少し動き、回れ右をして海の方角へ飛び跳ねた。クソッ、まだ長い登り坂が待っている。追いつけるか……?


「うわっ!!!!」


丘への上り坂に差し掛かり、いざ丘の上へ…………という所で地面に大穴が開き、穴の中へ転がり落ちてしまった。

穴の中は斜面になっていて、やはり砂地というのもありゴロゴロと深く深くへ転がり落ちてしまった。何なんだよ、この大穴は……?



「…………いててて……何処まで転がり落ちやがった?」


目を開けると、遠く遠くに青く光る月のような……あれが落ちた穴か。

斜面の途中に岩でも突き出ていたのだろうか、それとも底なのだろうか、しかし岩にしては平らだし、底にしては土でも岩でもないような。ボーっとはしてられない、とにかく起きないと。


「うぉあっ!!!!」


身を起こそうとすると、背にしている岩か何かが重みで動き、斜めになってずり落ちそうになる。その時、咄嗟に掴んだ細い棒のようなものがやけにひんやりしていて、何だか鉄っぽい。掴んでいる右手を見ると、洞窟の壁から突き出た細い鉄骨だった。何でこんなところに鉄骨が突き出てるんだ?


今度こそ身を返して背にしていたものを見ると、何と鉄製の乳白色の机だった。それも机の下にはさらに机、その下には壁から突き出た本棚、その横からは道路標識の頭が半分壁から突き出ている。

……まさか、地面深くに埋められた粗大ごみ?

…………というか、日の光も僅かにしか届いてない程の場所なのに、何でそれ等が視認出来るぐらい明るいんだ?


………………機械の表面や基板上に乗っているような青白く光る発光素子が、洞窟中の其処彼処から突き出ている。何処かから電力が供給されているのか?


いや、そんなこと考えている暇なんてない。ほんの少し体重をかけたらズレるぐらいに地盤が弱いんだ。下手に体重をかけると崩落を起こす可能性がある。下の物が更に下に落ちるのはいい、衝撃で連動して上の壁面が崩落したら生き埋めだ。何としてでも外に出なければならない。

ただ、上へは間違いなく登れない。距離もあるし、途中で滑ったら……今度こそ終わる。


……下へ行ってみよう。



壁から突き出た家具や鉄骨を足場に、慎重に慎重に………………車までも埋められているのか、そのボンネットの部分だけ突き出てやがる。こんなのが転がり落ちてきたら即死だぞ……。


さまざまな危険物をも足場に慎重に降りていくと、天井から一本、紐に巻かれてウサギの縫いぐるみが吊り下げられていた。昨日から今日にかけて何故かウサギに縁があるようだ。腹いせに腹パンしてやろうかと思ったが、これで落盤したら死ぬので我慢する。

この先は突き出ている家具も少ないようなので、飛び降りて余計な体重をかけないようにゆっくりゆっくりと……。


……妙にウサギに関連したものが多いな。薬局の名前が書かれたウサギの置物、ウサギ柄の木の机、ウサギに関する書物が詰め込まれた本棚、その本の上に横たわる小さなウサギの置物、その先の天井から突き出たクレーンのフックらしきものには無数のウサギのキーホルダーが取り付けられ、更にその先にはウサギの縫いぐるみの首にロープが括りつけられ、ぐったりしたような姿で鉄骨に吊り下げられている。その手には左方向の矢印が記載されたプレートが握られていた。


何なんだこれは……?


しかし、その左矢印の先には大きく平坦な冷たい金属の壁があるが、近くにクレーンフックがあったぐらいだから建築機械の一部だろうか。

そして金属の壁の下部に一つ、正方形のハッチが付いている。ウサギの矢印はこれを示している。この機械の中に入れば出られるということなのだろうか。


ハッチ正面の小さな鉄骨に足を掛け、ノブに手を伸ばす。

この状況でノブは錆びておらず、回すと動いて引くとすんなり開いた。

重機の割には機械もなにも無く中はただの空洞。橙色の小さな照明が一つぶら下がって周囲を照らしている。

それなりに広さのある謎の空間、その壁には不良がスプレーで書いたような大きなウサギの絵。そこにも矢印があり、奥にもう一つあるハッチの方を指していた。


あの矢印もこの矢印も偶然そうなったなんてあり得ないし、誰か先客がいるのだろうか。いや、居たにしても、こんな所隠れ家にする奴なんて……いや、仮に居たとすれば、あの一方通行の入り口なんだから、別に出口があるという事……にはならないだろうけど、行ってみるしかない。



ハッチの中に入り、壁にもたれ掛かる。この空間だけでも隠れ家としては最適だな。屋外に面していればだが。アクセスが凶悪過ぎるし、何にも無さ過ぎる。ここに引き籠っていては間違いなく餓死する。


しかし、これはビル建築などで使う設置型の大型クレーンの残骸なんだろうか?

それなら、あのハッチの奥は中の機械室か、それともクレーンの外周りだった部分……後者なら空洞になっていて、別の洞窟に繋がっていてそこに出口が……。


「……いや、違う。」


自らの頬を叩き、気合を入れる。動かなければ。



そーっとハッチを開けるとやや青白い光が空間内に差し込む。機械室でも屋外でもない、妙に真っ白な壁。中に首だけを突っ込み、周囲を見渡す。

何処かの病院や研究所のような白いの廊下の途中のようだった。何の音もしないし何の気配もない。


黒や茶色をイメージしていたら見事に裏切られた。何なんだここは?

目で見える範囲内にはウサギに関するものは何も無い。それ以外も何も無い。ただ真っ白な空間。

……本当にこの先に進んでいいのだろうかな……。でも、謎の空間のウサギの絵はここを示しているし、引き返せないので進むしかない。



中に立ち入る。混沌としたゴミの山とは打って変わって妙に清潔な空間。天井に埋め込まれた白い照明がこの空間を照らしている。

左右どちらにも道が続いており、一旦は廊下を左に進む。


照明独特のノイズもなく、空調の音もなく、虫が走る音もなく、全くの無音。不安だが、不安だが…………っ!?


音がした方に銃を向ける。銃の先には壁に埋め込まれた白色の四角いプレートが一つ。

……耳を澄ますと、その方向から時折小さなノイズが発せられている。建築意匠に合わせた館内放送用のスピーカーか。

…………その奥に誰かいるのか?


スピーカーの方に銃を向けていても当然その中には誰もいない。不安を押し殺しながらも銃を両手で構え、壁沿いをゆっくりゆっくりと先に進む。


…………照明が点いているのなら、少なくとも電気系統は生きているし、廃棄されて埋められた施設でもなく、元からここにある研究施設……地下実験施設か?

しかし、それはそれで、あの空間と繋がっていた洞窟は人工の洞窟……なわけ無いし……それよりも地下実験施設なら、一体何の実験を……?


色々と思考を巡らせつつ突き当りまで来る。

そこから右へ向くと直ぐ横に扉が一つ。扉には古代文字でも何でもなく、わたしでも読める文字で“資料庫”と書かれている。世界の約半分ぐらいの共通語であるニホン語で書かれているとなるとある程度絞られるが……。ここは帝国の実験施設だろうか……?


チラっと見る分には問題は無い。そっとドアノブに手を伸ばす……。

ドアノブが下がらない。施錠されてるのか。


鍵穴はあるが、簡易錠前ぐらいしか対応しないわたしの粗末な開錠術では、こんな立派な扉は開かないのだろう。横にカードリーダーがあるのでカードキーがあれば開くんだろうけど、当然持ち合わせてない。

諦めて元来た道を戻る。


先ほどの壁のハッチを通り過ぎ、突き当りを左へ折れると扉が左右に複数。

当然全ての部屋は施錠されていて開かない。あのレーザー銃でロックを破壊すれば開くかもしれないけど、電気系統は生きているので、防犯装置か何かでも作動すると何が起こるか分からないから余計な事はしない。

狭いし半ば閉じ込められたような状況で警備ボットに出くわしたら手も足も出ない。


それらの扉を無視して奥へ。廊下の突き当りに枯れた観葉植物と一枚の扉。枯れた観葉植物が時を感じさせるが、世話をする者も片付ける者もいない感じからして、長らく使われて無いんだろうか。


扉にはこれまた“資料庫”と書かれている。

ノブを下ろすと、抵抗なくスッと下がり、押したらすんなりと開いた。


一度扉を閉め、深呼吸二回の後、ちょっとだけ扉を開け中を覗く。中は廊下と然程明るさは変わらず、複数の棚に大量の本やファイルが詰まっている。見える範囲では防犯カメラも無く、わたしは資料庫に入った。


ガチャッ


扉が完全に閉まった後にロック用のソレノイドが動いたような音がした。まさかと思いノブを下ろそうとしたが動かない。ついでに非常開錠用のサムターンも付いていない。閉じ込められたか?

いや、もう一つ出口があるかもしれない。焦りを押さえ、二回深呼吸をしてそーっと壁伝いに歩く。


『あら、子ネズミちゃんが入り込んだみたいね。』


心臓が爆裂しそうになった。昨日から何回目だろうか。

汗が頬を伝って地面に落ちる。若い女性……いや、わたしと同じぐらいの女の子の声が全方位から聞こえる。隠しカメラで見られて、何処か別の部屋からスピーカー経由で喋ってるのか?


『ふーん、子供じゃないの…………なんで子供がここに…………?』

「おい、お前は誰だっ!?」


レーザー銃を構え、周囲を警戒する。


『ふーん、ガンナーなのね、あなた。フフンッ、冒険者なら、この前あたしが改造したビームトラップの試し撃ちに最適ね。』


上方向から天板が外れたような音がした。上を見ると、天井のハッチが開き、ぞろぞろと宙に浮いた四角い監視用ボットが出てくる。えっ、こいつと戦えと?


『ボットからの攻撃を回避しながら壁に設置された5基のビームトラップを死ぬ気で避けるんだよ。さて、よーい……起動っ!!』

「ちょ、ちょっと待ってっ!」


四角いボットは見た感じ6台、その内3台が細いレーザーで足元を狙ってくる。貫通能力が無いので軽い火傷で済むのだろうけど、可能な限り食らいたくない。


「痛ッ!!」

『フフンッ、痛ぁい?』


その3台のボットに気を取られていると、残りのボットが顔面目掛けて体当たりを仕掛けてきた。わたしは吹き飛ばされ、本棚に半身をぶつけて落ちてきた本の角で頭をぶつける。勝手に入ったわたしが悪いんだけど、何でこんな目に遭わなければならないんだ……。


ドンッ!

バンッ!


赤く光る大きなエネルギー弾が頭スレスレを通過して重い破裂音を轟かせる。音のした方を向くと壁は凹み、もう一箇所の本棚を見ると棚の柱が断裂して斜めになっていた。ビームトラップの方は容赦が無さそうだ。


『監視用ボットは甘いけど、ビームトラップは本気で殺しにかかるから、覚悟してよ?(クソッ……早く出てけっ……)』


ビームどころかバスターボット並みに巨大なエネルギー弾を発射するトラップは一体何処なのか、壁を見てもそれらしきものは設置されてない。資料の背後に隠れているとなると、その資料もエネルギー弾で押されて吹き飛んで無くなっているはずだが、抜けてる所を見ても何もない。


「あっつっ!!!」

『ほらほらほらほらっ!!』


ボットのレーザーが脛に当たる。威力は低いけど跡が残る。どちらかに気を取られるともう片方の餌食になる。ビームトラップの方は即死だろう。


「ぎゃっ!!」

『ほら、痛いでしょ。痛いでしょ?(痛いなら早く出て行けっ!!)』


そしてボットの体当たりで転倒。クソが。


バァンッ


『チッ、外したわ。』


ほぼ同時にビームトラップのエネルギー弾がすぐ横の地面に直撃してコンクリート片を撒き散らす。倒れた場所が良くて間一髪だった。こんのクソが。

面倒だし怖いが、一旦ビームトラップを無視してボットの数を減らしていく所からか。


一度仕舞ったレーザー銃を取り出す。二本共に持ってるけど、一本は温存しよう。効くかどうかは分からないが、イチかバチか……。


ボットがわたしの目の前に回り込む。まだ一度も撃ったことがないけど、やってみよう。


パシュンッ……ボンッ!!


薄緑色に光る極細のレーザーはボットのカメラをぶち抜く。凄い、反動も何も無いし反応がすっごく良い。


『無駄よ、ボットは幾らでもあるからね。フフンッ。(あぁクッソ……高ぇんだよそれっ!!)』


天井のハッチから1台補填される。何発撃っても苦にならないこの銃なら出る度に打ち抜けばいい。ビームトラップに集中できる。今度はあのボットを……


ドコォッ!!


エネルギー弾が真後ろから左脇の下を抜けて本棚に直撃した。銃を構えてたからこそだけど、食らってたら片腕が無くなっていた。膝の力が抜けるが堪える。


『……(チッ、運のいい野郎だ……。)』


弾が当たった本はぶっ飛ばされて棚は衝撃で倒れドミノのように次から次へと倒れる。資料が次から次へと紙屑と化し、もう何のために部屋に侵入したのか分からない。このクソどもが。


『真後ろを振り向いてみてよ。』

「あぁ? ふざけんなこの野郎っ!!」


真後ろから放たれたレーザーが頬を掠る。

真後ろを振り向くと、そこには壁から出た半球状の透明な装置が壁に付いている。これがビームトラップか。銃を構えた瞬間に壁はどんでん返しのように回りただの壁となった。


『これがあたし謹製のビームトラップ。易々と破壊されるわけないでしょうが。さぁ、逃げまどいなさい。』


その口調にその余裕、とんでもなくイラッとさせる。その壁を何度も銃撃するも焦げ跡が残るのみでビクともしない。


『ブチキレビーム乱射したって効くわけないじゃん。ただの壁だもの。』

「あちっ……あー、もうっ!!!」


足を狙うボットを破壊、続けざまに体当たりを仕掛けるボットも破壊。

目に入る全てのボットを撃ちまくって破壊。壊した分は次々に補填されるけど、それでも視界に入る数は減った。


「……あっ、ヤバ……っ!!」

『運のいい奴だなぁ……。』


ドンッ!!

バコォッ!!


一瞬ビームトラップが目に入り、咄嗟に地面に伏せたのが幸いして回避できた。ただ、単発だけと二発同時が入り乱れるのか、二発目は本当に運だった。

本棚はほぼ全部破壊され、資料は紙屑の山と化している。

エネルギー弾では燃えないが、レーザーが当たると間違いなく燃える。こっちが撃つレーザーも床に向かって撃たないようにしなければ。窒息死や火葬なんて事態は絶対に避けたい。


ビームトラップの内の一台がこちらを向いた。すぐさまにレーザー銃を照射した。


「嘘だろ……?」


半球状の膜に吸収されるように消滅する。全く効いていないようだった。

どうしろと言うんだ、こんのクソどもがっ!!


『このトラップはね、ちょっとそこらの光学兵器とか物理攻撃とかじゃ壊せないの。(…………そう、これ1台数百万エルもかかってるんだからね……。)』


……あっちの世界では孤児院のみんなが待ってるし、こちらの世界でもコハルさんが心配しているかもしれない。こんな所で負けられないが、だからって、どうやって勝てばいいんだ?


『そりゃもう、大爆発か壁にでもめり込むほどの衝撃か何かがないと壊せないよね。フフンッ。』


…………。


めり込むほどね…………わたしを狙うのなら、やってみる価値はある。


『えっ? 何その自信満々な顔……?』


ボットを撃墜しながら脳内でカウントした感じでは閉じて10秒後に壁から現れ、正面を向いたその3秒後に発射されて、その3秒後に閉じるを繰り返している。開く箇所は最大で2箇所、開く場所はランダムだけど場所は固定。高さは2メートル若干無い位置に全て揃っている。


閉じた所にはレーザー銃で焦げ跡を残して、その下部に崩れ落ちた資料や四角いボットの残骸を集めて、わたしの胸の位置とビームトラップの高さを合わせる。


『ちょっ、ちょっとあんた、一体何を……?』


ビームトラップが1台こっちを向いた。


「……ほら、撃ちなさいよ。」


わたしは背を向けたビームトラップの正面に積んだボットの残骸の上に載った。ビームトラップが入っている壁と胸の位置を合わせるように……おそらく狙うのは胸か頭かだろう。あの大きさのエネルギー弾なら多少掠っても運が良くて大ダメージ、それ以外なら腕が無くなる。


透明な半球状の膜の内側で赤い光が徐々に大きくなる。


1…………


「おい、撃てよっ!!」


バンッ!!


赤いエネルギー弾が出た瞬間に左へ飛んだ。

弾は右肩をかすめ、そのままビームトラップの背に直撃した。

その壁は大きく凹み、中でビーッビーッと警報音のような音がする。


『まっ、まじ……ふっ、ふぅーん、やるようね。でもビームトラップは全部で5台。奇数よ、一台残るわ。(……………クソッ、クソッ、威力上げ過ぎたぁぁああっ!!!!!!)』


……さっきから小声で本音を言ってるのは聞こえてたが、もう隠す気が無いぐらいに声が大きくなってきたな。自信作のトラップが破壊されて余裕が無くなったか。

それにしても奇数か……。密室で火属性魔法をぶっ放すような自爆特攻ぐらいしかないが、その時は考えるしかないか。



ビームトラップの同士討ちで封じ続け、残り1台。

もうボットを撃ち落とし続けて、崩れて山と化した本よりもボットの残骸の数が多い。どんだけ在庫があるんだよ。

破裂して引火しないか心配だ。


『ふっふっ……ふぅーん、やっ、やるようね…………。(うっわー、何だよこいつ……ふっざけんなッ!!!!)』


壁がグルンと回ってビームトラップが顔を出す。発射までの3秒で……


「痛っ……えっ!?」

『ゥォッシャァァァアアア!!!!』


油断した。ボットが右から体当たりを仕掛けてきた。バランスを崩し、そのまま倒れたが、エネルギー弾が右肩を掠った。


「いっ!!!!」

『うぉあぁぁあああっしゃぁあああ!!!!!』


右肩が焦げ臭い。ケーブル剥き出しでバチバチと漏電している。

見るとますます痛くなる。意識が飛びそうなぐらい痛くなる。


『…………(えっ、あいつ、ガイノイド? でもパッと見、妙に作りが精巧だし、ちょっと調べてみないと……。)』


利き腕をやられた、銃は左手でも撃てるけど、こんな意識状態であんなに収束したレーザー銃じゃかすりもしない。


再びビームトラップが顔を出す。痛くても動かなければ死んでしまう。

目を合わせ、情報を抜き取り、横に飛ぶ。


残骸の山に直撃してボットが吹き飛んだ。


≪鑑定≫

魔物名:室内用壁面キャノンボットBB-429cc型(改造)

主に重要資料保管室に設置される防犯装置。発射されるエネルギー弾は物理弾と特性が似ており、資料を焼損させることなく保護できる。なお、室内用であり非防水仕様のため、湿気の少ない所に設置することをお勧めする。


ユーリア・ロトスにより出力・防護壁強化済み

攻撃力:30->350 装甲レベル5まで貫通可能

守備力:90->300 装甲レベル5


弱点属性:水属性・氷属性

≪以上≫


クソッ、何だよ今更……。鑑定結果も何の役にもたたねぇし。攻撃力を自身の装甲レベルを超えて上げるような馬鹿やってなければ今頃スクラップになってたな。あぁ、水属性が欲しい。


しかし、ボットを落とそうにもカメラに命中しない。少し外れると貫通しても落ちない。声の主にビームトラップと呼ばれていたキャノンボットも容赦なく撃ち続ける。もう体力が限界だ。結局昨日から何にも食べてないし、頭も限界。


ボットに取り囲まれる。わたしは凹んだ壁に追いやられ、壁にもたれ掛かる。


『あっ、あいつ…………。』


バキッ……バタンッ!!


もたれ掛かった途端、壁が突然倒れた。そのままわたしも背中から倒れた。ここは狭い通路、横に枯れた観葉植物。先ほどの廊下だ。

知らず知らずの内に扉にエネルギー弾が当たり続け、破損したようだ。

わたしは両手両足で廊下を駆け抜け、何とかビームトラップの射線から外れた。


『ちょっ、えっ!?』


バキャッ!!


エネルギー弾は扉の右の枯れた観葉植物に当たり、無残にも土からはみ出た根から上が折れてしまった。


『おい、ちょっと待てっ!! まだ一台残ってんぞっ!!(あいつ、オルビスだっ!! 最高のサンプルじゃんっ!!!!)』


最後のビームトラップは廊下から見て左後方に設置されていて、もう当たる事はない。

はぁ……意識が遠退く。でもここで倒れると部屋から出てくるボットに殺される。身を引きずってでもあのハッチの中の空間に戻った。


『にーげーるーなーッ!!!!!!』


中に入り、ハッチを閉める。これでもう追って来なければいいんだが。



仰向けになって十分ぐらい、天井にぶら下がった電球色の小さなライトを見つめている。

ボットが鉄のハッチに体当たりしていたのか、ガンガンと硬いものが音がしていたが、次第に頻度が下がり、今はもう音はしないので諦めて引っ込んだか。


進むことも戻ることも出来ない。

……わたしはこのまま死ぬのか……?


……


…………



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