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定期試験の国

 国民みんなが忙しいけど、平和で治安の良い国。


「あれもこれも、やらなきゃいけない」


 試験を控えて大忙しの彼は緊張していた。政府の役人を目指す彼は、厳格な試験を受けることになっていた。


 この国の法律では、役人になるためには複数の試験に合格して、許可証をもらう必要がある。役人は責任の伴う重要な仕事であるため、受験者の技術と道徳観を試す厳格な試験が行われる。そして、許可がされた後も定期的に試験を受けなければならない。


 彼は日夜問わず勉強に励んだ。挫けそうになっても、決して諦めなかった。そして試験に合格し、彼は無事役人になった。彼がここまで来れたのは、彼の自信を根拠づける経験がいくつもあったからだ。


 この国では数えきれないほどの試験が行われている。彼も学生だったとき、学習が定着しているのか試すため、一年に三回の頻度で定期試験を受けた。


 試験と言えば学校の勉強が思いつくだろうが、この国では学校以外の場面でも定期試験をする。


 彼は学校を卒業する際、卒業試験として、成人するための試験を受けた。

試験に合格し、成人となった彼は成人の権利を得た。


 しかし彼は学生である前に、一人の男性だ。この国では男性になるためには、女性を尊重する態度と男性としての責任を試される。


 そして彼は男性である前に、一人の子供だった。この国の子供は成長段階ごとの試験に合格してこそ成長できるのだ。つまり試験に合格しない限りずっと子供でいられるのだが、このままでは選択肢が狭まるので大抵の人は試験を合格するために勉強する。


 そして彼は子供である前に、一人の人間だ。人間になるための試験では、人間としての知能と根本的な倫理観を試される。人間になるための試験は、この国の国民になるための試験でもあった。


「私が役人になれたのも、この国に生まれて来れたのも、倍率一万分の一の厳しい試験に合格できたからだ」



おわり

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