6話 愛する人への誓い
クスハは一人でベッドに横になっていた。白い壁が綺麗な部屋でよく片付いていた。クスハは空咳をしながら一人考え込んでいた。
エリックと幸せになりたい。そして右腕の黒いアザを見た。
怖い。もう幸せは訪れないのだろうか。自分は死んでしまうのだろうか。
せめてエリックに迷惑をかけないようにしたい。
だがそれも綺麗事。死ぬのが怖い。まだ死にたくない。
そうやって死の恐怖を感じていると白いドアをノックする音が聞こえた。音がしてすぐにエリックが部屋に入ってきた。クスハが不思議に思ったのはエリックの服装だった。珍しい黒い装束を着ている。それに何やら道具をたくさん持っているように見えた。エリックはクスハのベッドの隣の椅子に腰掛けた。
「エリック、どうしたの?」
「君は必ず僕が助ける。クスハ」
「その格好は……?」
「皇帝の棺を探す旅に出る。あらゆる知識を持って君の病を治してみせる」
「皇帝の棺……?いえ、待って。旅に出る……?」
「そうだ。知識を得るため、皇帝の棺を探すため旅に出る」
「旅に出る?そんなの嫌だよ!行かないで」
クスハはエリックを見つめた。クスハの瞳はか細かった。エリックは深く沈み込むような呪われたような瞳をしていた。
「行かないでエリック。あなたがいなくなったら、私生きていけないよ」
「なるべく早く帰ってくる。俺も一緒にいたい。でもこのままでは君は死んでしまう。俺が必ず治す方法を見つけてくるから。だから待っていてほしい」
「嫌」
「わかってくれ」
「わかんないよ」
涙を浮かべながらエリックを止めようとするクスハ。そしてまた空咳をした。
「私十分幸せだよ。死ぬのは怖いけど、その時が来るまであなたと一緒にいたい」
その言葉を聞いたエリックの覚悟は完全に固まった。
クスハを助けるのだ。いかなる代償を支払っても。
「君は俺が助ける」
「エリック」
エリックはクスハを引き寄せキスをした。
恋人を助けるという呪いに引き寄せられるエリック。
最後まで恋人といたいと思うクスハ。
「俺が病を治す方法が見つかったら結婚しよう。クスハ」
その言葉を聞いたクスハの心は大きく揺れた。だが現実は甘くない。
「嬉しい……だけど……」
「俺を信じてくれ」
力強いエリックの言葉。
クスハは思った。旅に出てまで自分の病を治そうとしてくれている恋人。
嬉しかった。それと同時に寂しかった。もう二度と会えないのではないか。そんな気すらした。しかしクスハはエリックの決意に心を動かされた。病が治れば子供だって作れる。幸せな未来をエリックと掴むことが出来る。一緒に人生を歩んでいける。
「わかったよ。でも必ず帰ってきて。それまで私頑張るから」
「ああ」
エリックはクスハを抱きしめた。
そしてエリックは旅立つ。皇帝の棺を求めて。




