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アトラクシアの死闘  作者: 夜乃 凛
第六章 水の都アルカディアへ
33/52

33話 時間制限の中

 枯れ木の廃墟を進むエリック達。エリックが担いでいる緑の髪の女性の息は荒い。だがまだ生きている。解毒薬が少しでも毒の進行を抑えているのかも知れない。紫に腫れ上がった手足が痛々しい。

 枯れ木の廃墟の出口に近づけば強い光が差すはずだ。鬱蒼とした廃墟を進む。枯れ木と毒沼。そして黒い植物。暗い雰囲気。


「気をしっかり持って!アルカディアはもうすぐです!」


 エリックは歩きながらも女性に声をかけ続けた。女性は返事をしない。しかし、瞳に僅かに光が灯っているように見えた。

 歩いているその時。外の強い光が見えた。アルカディアへと続く廃墟の出口。

 見えた。エリックの歩む速度がさらに速くなる。

 しかし同時に、人影が見えた。外の光に照らされた人間が立っている。数は見えている範囲では七人ほどか。

 武装している。エリック達を見つめている。

 エリックは女性を担いでいて戦闘態勢を取れない。ローエンとシノがエリックを守るように前に出た。

 一方、相手側はエリック達の人数を把握して襲いかかろうとしていた。

 野盗だ。アルカディアへ向かう旅人を待ち伏せしている。

 エリックは唇を噛んだ。ここで時間を取られるわけにはいかない。誰かが野盗の相手をするしかない。

 シノの特技を思い出した。影渡り。外の光があるとはいえ、まだエリック達は枯れ木の廃墟の中。人間の影は出来づらい。影渡りが効果を発揮しない。シノがここで戦うのは危険だ。パーティーの中で一番体格がいいのはローエン。


「ローエン、この女性を担いでアルカディアまで行ってくれ。シノはローエンを守ってくれ。野盗の相手は俺がする。走ってここを抜けてくれ。必ず後で合流する」


「危険だ!全員で戦うべきだ!相手は見えている範囲で七人はいるぞ!」


「ここで時間を取られるわけにはいかないんだ!」


「この女性を助けるにはそれしかありません。シノ、行きましょう。エリック、必ず無事で合流すると誓ってください」


「この剣にかけて誓う」


「わかりました。必ずアルカディアまでこの女性を送り届けます」


「頼む」


 エリックはローエンに女性を預けた。ローエンが背中に女性を担ぎ込む。そして前へと。野盗に臆さず歩みだす。光る出口。立ちはだかる野盗。野盗達は皆、黒の装束を着ていた。中に鎖かたびらを仕込んでいるかもしれない。

 野盗達は交渉するつもりはないようだった。武器を抜いている。脅して荷物を奪い取る野盗もいるが、この者たちはエリック達を殺して奪い取るつもりのようだった。

 身軽になったエリックが剣を引き抜く。銀の剣。時の剣。ローエンとシノの前を走る。


「道を開けろ!!今逃げれば命までは取らないぞ!!」


 エリックの最後の忠告。しかし野盗達は襲いかかってきた。

 ローエンは出口に向かって女性を担ぎながら走った。ローエンを守るようにぴったりとシノが走る。


「俺の役目は敵の全滅と、敵の注意を引くこと」


 呟くエリック。

 ローエン達より速く前に進み出る。野盗が正面に一人。左右にそれぞれ三人ずつ。

 まず正面の野盗へ。相手は剣を振るおうとしたが、エリックの時の剣がそれを許さない。

 体を切る。振っている間に止まる時間。相手は何も出来ずに体を切られ倒れ込む。

 まず一人。しかし左右から合わせて六人襲いかかってくる。

 六人を一気に相手にすれば苦戦は必死だ。左右どちらかを先に潰すべき。

 エリックは左を選んだ。左の三人に向けて体を跳ねる。

 ローエンとシノは出口へ。誰も追ってきていない。枯れ木の廃墟を抜けられる。

 シノは少し振り返った。


「死なないでくれよ」


 そう呟いてローエンと共に走った。ローエンも同じ思いだった。

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