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アトラクシアの死闘  作者: 夜乃 凛
第五章 バリアン遺跡の決闘
24/52

24話 犠牲の上の幸せ

 ヴァルゴが合図した。

 それと同時にエリックとシルヴァは相手へと距離を詰めた。

 シルヴァの方がやや速い。エリックはシルヴァの振りを剣で防いだ。

 ぶつかり合う刃。互いに譲らない。交わる剣。


「よそ者ごときがわかったような口を聞くな!お前たちにこの砂の都の過酷さがわかるか!」


「置いていかれて死を待つのみの人を思いやれないお前の気持ちなどわからない!」


「ならどうすればいいんだ!答えてみろ!!」


「別の方法を探すんだ!この争いそのものが無駄なことだ!この時間を平和に使えるはずだ!何故争う!」


「勝って豊かな土地に移動するためだ!!」


 シルヴァは剣にさらに力を込めた。エリックがやや押される。

 エリックには時空剣がある。振っている間は時間が止まる時空の剣。

 だがしかし、エリックが剣を振らせてもらえない。シルヴァの剣撃を防ぐので手一杯だ。


「まずい」


 離れた所で見守っていたローエンがいった。


「まずいな。あれ程の手練がいるなんて」


 シノは舌打ち。

 エリックは集中していた。剣を一振り出来れば勝てるのだ。

 だがしかし、その一振りが出来ない。

 シルヴァは全力をもってエリックに挑んできている。信念がシルヴァを動かしている。その信念が正しいのかどうかは別として。シルヴァの剣撃はさらに強くなった。


「誰から恨まれようが豊かな土地に移るんだ!!病気の者など置いていけばいい!!散れ!!よそ者!!」


「病気の者など置いていけばいいだと!?」


「そうだ!!」


「貴様!!」


 エリックは怒った。頭に浮かんだのは病に倒れたクスハの顔。

 目の前にいる人物に負けてはいけない。

 絶対に負けてはいけない!


 エリックは防戦一方だった剣を初めて反撃に使った。相手の剣は速く重いが、クセがあった。その攻撃のクセを見抜き、弾いた。

 シルヴァは弾かれた剣を再び振り落とそうとしたが、手の中に剣の感触はなかった。

 何が起きたのかわからないシルヴァ。自分の剣がない。

 シルヴァの剣はシルヴァの後方の地面に落ちている。

 エリックは丸腰になったシルヴァの隙をついてシルヴァを突き飛ばした。地面に倒れ込むシルヴァ。

 穏健派の観客たちから歓声が上がった。一方行動派の観客たちはどよめいていた。行動派の長ヴァルゴも驚いていた。いつの間にかシルヴァの剣が地に落ちていたのだから無理もない。

 エリックは剣を納めた。勝負はついた。


「人の不幸を嘆きつつも人の不幸でしか望みを叶えられない。自分の行いの矛盾をよく考えてみるんだな」


 エリックはシルヴァに言い放ち、振り返りクイナ達の所に歩いていった。


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