15話 穏健派最強の戦士
テントの中にシノを先頭に入ったエリックとローエン。テントの中には木箱がそこら中に積んであった。人もそれなりにいた。皆、黄色い頭巾を巻いている。何かの証だろうか。
「シノ様のお帰りだ!」
先頭を歩くシノに、テントの中の者たちの視線が集まっている。シノは軽く手を上げて見せた。返事をしているということだろう。エリックとローエンにも視線は向かっていた。イレギュラーだからだ。
歩みを止めないシノは二人に話しかけない。エリックの方から話しかけてみることにした。穏健派の長クイナが決闘をすることに決めた理由がわかったからだ。
「シノさん、あなたは決闘に出るのですね?」
エリックの言葉にシノはピタリと足を止めた。そして鋭い瞳をしながら振り返った。
「シノでいい。どうしてわかる?エリック」
「では、シノと呼ばせてもらいます。シノ、あなたは間違いなく強い。立ち振舞いでわかる。クイナ様は決闘の話が出た時、あなたがいたからこそ決闘を受けた。間違いなく一対一なら勝てる自信があったからです。おそらくあなたが穏健派最強の戦士」
エリックは持論を展開した。ローエンは頭の中でその通りだなと納得。
シノは値踏みするような目でエリックを見つめている。
切れ長の黒い目がエリックを注視。
そして、消えた。
シノの姿が一瞬で消えた。
そしてシノはエリックの後ろから顔を耳に近づけ耳打ちした。
「御名答」
エリックは声を聞いて即座に前方に飛び、振り返った。
なんだ?
一瞬にして姿が消えた。
移動の軌跡も見えなかった。
シノを睨むエリックとローエン。エリックとシノの立ち位置が今は逆転している。
「強い仲間が必要なんだ。とにかく、強い仲間が。驚かせてしまったかな。ごめん」
「今のはどうやって?」
シノの隣のローエンが問いかけた。
「知らない人間に自分の金庫の鍵の場所を教えるやつがいるか?」
シノは微笑んだ。どうやら今の瞬間移動の謎を教える気はないらしい。エリックは考えたが、瞬足で移動したなどというレベルではない。空間移動でもしたかのようだと思った。
「さ、クイナ様に会いに行こう。きっと待っている。心を燃やして待っている」
シノは再び歩みだした。エリックを追い抜き、先頭を歩く。エリックとローエンもそれについていった。




