後輩との週末
週末。甘栗と待ち合わせ場所にしていた、銅像前に九時半過ぎに着いたのだが。甘栗はもう待ち合わせ場所に到着しており、髪を直していた。
「よっ。もしかして待たせたか?」
「あ、先輩。全然待ってないですよ」
甘栗はコンパクトの手鏡を持っていた鞄に直す。
「それじゃあ行きましょうか」
そう言って甘栗が進むのは駅の改札。
「それで買い物の荷物持ちだって話だったが、一体どこに行くんだ?」
「最近大型ショッピングセンターが出来たじゃないですか、そこに行こうかなって」
「あそこか」
テレビでも何度か話題になっていた大型ショッピングセンター。
映画館にフードコートやスーパーなど他にも多種多様な商業施設があるショッピングセンターだ。どうやら今日の目的地はそこらしい。
そして目的地のショッピングセンターがある駅に着いたのだが、駅のホームから既に降りる人で一杯である。
「ほら」
「え……なんですか先輩……?」
「もし離れたりしたら大変だろ」
「先輩がそんな気遣えるなんて、今日は雨でも降るんじゃないですか」
「いいから早くしろ」
甘栗は手を差し出して甘栗の手を繋いで駅のホームから改札までリードする。改札を通り、目的地のショッピングセンターはすぐそこにあった。ショッピングセンターに着くと子連れの親子やカップルなどを多く目撃する。
「で、お前が行きたいのは何処にあるんだ?」
ショッピングセンターの案内図を見ながら、
甘栗が指差したのはアパレル用品を扱う商業施設が密集している場所だった。
「おいまだかかるのか……」
「そうかっかしないで下さいよ先輩、女子は服が大好きなんですから」
ショッピングセンターに着いてから一時間経つが。甘栗は沢山あるアパレルショップのウィンドウを眺めるだけで入ろうとはせずにスルーするのが当たり前だった。
「先輩ここに入りますよ」
「なんで女性服しかない店に俺が入らないといけない」
「いいから行きますよ付いて来て下さい」
甘栗に引っ張られながらアパレルショップに立ち入るみるからに男性は一人もいない。
「先輩、先輩。これ似合ってますか……?」
甘栗はアパレルショップの服を試着室で着替えて感想を聞いてくる。とても甘栗だとは思えず一瞬惹かれてしまう。
「先輩……?」
「いや……よく似合ってると思うぞ」
「へへ……そうですかね」
甘栗は照れたのか顔が赤く染まり頬を搔く。
「甘栗まだ買うのか」
その後甘栗は試着室で着替えた服を全て買って、次のアパレルショップに移動。そしてまた試着室で着替えた服を全て買う。そして俺の両手は甘栗が買った服の袋で塞がれている、だが甘栗はまだ買うつもりでいるらしい。
「あと一軒だけ付き合ってください」
「しょうがない、あと一軒だけだからな」
あと一軒だけ店に付き合うことにして、甘栗が最後に行った店は今の時期には見合わない水着売り場の店だった。
「おま……ここ」
「まだ春なのに変ですよね、でも夏に先駆けて早めに買うのもありなんですよね」
そう言って甘栗は俺の手を半強制的に取り先程の駅とは逆にリードして進む。
「先輩は誰か知り合いが水着とかを着てるとこって見た事あります」
「知り合いはないかな海とかプールも小学生の時以来行ってないし」
「そうですか……あ、これ可愛い」
甘栗はフリフリの花柄の水着を手に取る。
「ねぇ先輩もこれ可愛いと思いますよね」
「え? あ、そうだな」
「どうしたんですか……?」
「いややっぱり俺外で待ってるから」
女性からの視線が多く耐えかねて甘栗に伝えて水着売り場から店の外に出る。
「もう先輩の馬鹿、誰の為にここまで本気になってると思ってるんですか」
そう考えながらフリフリの花柄の水着を戻して外に出た先輩を追いかける。
「お待たせしました先輩……誰ですかあなた方は……?」
「甘栗……えっと俺の同級生の笠羽陽子さんだどうやらこのショッピングセンターの近くにあるレジャープールにお姉さんと遊びに来たようだ」
先輩の元に戻ると、金髪の女性二人と話しているのを目撃した。一人は前に先輩がバイトしているファミレスで見た覚えがあるが、まさか同級生だったとは。
「あなたもしかしてAINA?」
「AINA……?」
私のもう一つの名を呼ばれ驚く二人はどうやら知らないらしい。
「もしかして知らないの!? 去年一昨年と全国中学生ミスコンで二連覇を達成したAINAだよ。今なんて雑誌の専属モデルで表紙を飾る程の人気者なのに」
「あはは……まさかこんな所で知ってる人と会うなんて思ってなかったですよ」
「うわ光栄だわ、いっつも雑誌でしか見ないあのAINAが目の前にいる」
握手を求められ微笑んでその握手に応える
「そんなに凄いんだ……」
別にあなた方に好かれても嬉しくない。
だって一番好かれて欲しい人には自分の魅力すら伝わってないのだから。
「まさか予定があるってこの子との事だったの」
「それはまぁそうだな」
先輩が同級生の女子と親しげに話すとどす黒い気持ちが抑えられない。
「そうだもしよかったら、これから二人もレジャープール一緒にどうかな……? 当日券も販売してるみたいだし」
「いや俺達水着は持ってきてないんで」
「水着……レンタルできるよ」
「えっと……」
「いいじゃないですか先輩、一緒に行きましょう」
「でも俺そんなに金も持ってきてないし」
「今日付き合ってくれたお礼に私が奢ってあげますよ」
「あーそれじゃあ行こうかな」
先輩は観念してレジャープールに行く事を決意した。そしてショッピングセンターの外に出てレジャープールがある施設に移動する。