小学校からの親友
昨日一昨日とあった出来事は、考えない事にして。学校で退屈な授業を受けていた。
「えーと、じゃあこれを明智答えてみろ」
メガネをクイッとして、数学の教師は前の席に座っていた明智を呼ぶ。黒板前に立ちチョークで問題の答えを書いていた。
流石クラス一の優等生明智君、スラスラ答えを書いてるじゃんと褒めたくなってくる。
「ねぇねぇ明智君。さっきの数学の授業で解らない所があったから、教えて欲しいんだけど」
休憩時間クラスの女子が、前の明智の席に集まって来て騒ぐ。
「ああいいよ」
明智は爽やかに答え、女子のノートに何か書き写していく。
「すっごく参考になった。ありがとね明智君」
「これぐらいお安い御用さ、それで優人。そろそろ話してくれないか?」
「ああ何がだよ……」
「何って……朝からずっと不機嫌そうな理由だよ」
「別に不機嫌じゃねぇよ」
「まぁ噂には聞いたけど。折角出来た彼女と別れたんだって」
「お前いっつもどこから、そんな早く情報を聞きつけてるんだ」
「優人以外にも、信頼できる友人は多いからね。やっぱり本当だったんだ」
「正直もう彼女とか作るつもりはないね」
「珍しいね、優人が一度女子と別れたぐらいでそんな気持ちになるなんて」
「まぁそれ以外にもあるんだよ」
「これ以上詮索とかしないけどさ、もし何か憂さ晴らししたかったら付き合うけど」
前の席の明智とは小学校からの付き合いで友人というより親友だった。こいつならもっと上の高校を狙えてもおかしくないのだが、家が近いからって理由でこの高校を選んだ
「いや別にいいよ、多分すぐ立ち直れると思うから」
「そう? ならいいけど。てかさっきからあそこにいるの優人の元カノじゃない」
「は?」
明智が指差した方角を振り返ると、確かにあの金髪にハートのピアスは元カノの笠羽陽子だった。
「……あ」
「逃げてったね」
視線が合うと、声を出して慌てて走り去って行ってしまう。
「追わなくていいの?」
「なんで俺が。あっちから別れを切り出したんだからもう関係ないだろ」
「ふーん優人そろそろ行こうか」
明智は理科の教科書とノートを机の中から取り出す。
「行くってお前、今日移動教室じゃないだろ」
「優人先週の授業聞いてなかったの。この前理科の先生が理科の実験を行うって言ってたじゃないか」
「言ってたかそんな事?」
まるっきり聞いてなかった。だって先週は彼女が出来た事が嬉し過ぎて、浮かれて授業どころではなかったから。
「いいからほら早く準備して、優人のせいで遅れるのだけは勘弁なんだから」
「へいへい」
理科の教科書を横の鞄から取り出そうとしたのだが鞄に理科の教科書が入ってなかった。
「悪ぃ、理科の教科書忘れたみたいだ」
「はぁ、じゃ僕から理科の先生に言っておくから。他のクラスの誰かから借りてきなよ」
「ええ……一緒に見せてくれる気すらないのかよ」
「仕方ないな、今回だけだよ」
「さっすが親友」
明智と肩を組む教室に残ってるのは既に明智と二人だった事に気付く、急いで明智と廊下を早歩きで移動する。
「そろそろ返して」
途中先輩のカースト上位と思われる女子のグループと遭遇する。
「えーだって、荷物持ちも簡単に出来ないんじゃ、意味ないでしょ。皆もそう思うよね」
うんうんと返事が聞こえる。本当なんで学校ってのはこんな奴らが湧き出てくるのやら。
「痛った、ちょっと何すんのよ下級生!!」
「そんな広がって歩くから邪魔だったんでそれじゃあ」
少し当たったぐらいで大袈裟な。てかあんたらの方がよっぽどだろ人の物を返さないなんて。
「あれ咲あいつのは」
「はいどうぞこれ」
奪ったペンダントを黒髪で前髪を隠した女子生徒に返す。
「……ありがとう」
大切に扱って制服のポケットに隠す。
「あの……もしかしてあなたの事誤解してたかも」
「俺達話した事ってありましたっけ……?」
「おーい優人、本当急がないと遅れるよ」
明智が先に進んでいた事に気付く。
「それじゃあ」
一応声をかけて明智を追いかける。
「やっぱりこれじゃ気付く訳ないか」
「ちょっと朝比奈……!! ちゃんと荷物持ちなさいよ」
「……」
「何よ、何か文句でもあるの」
「いいえ、なんでも」