告白の返事
昔からパソコンを弄るのが好きだった。施設にいた時もよくパソコンを触ったりして、プログラムを組んだりしていたので理数系は割と得意な方だった。そしてある時他人のパソコンや携帯に簡単に侵入できるUSBを作ってしまった。
二年の教室にやってきた、どうやらこのクラスは次の時間は体育の為、男子生徒達が教室で体操着に着替えていた。少し時間をおいて教室に入る。先程生徒名簿で女子生徒の顔を見たので、名前は覚えていた。教壇に生徒の席が紙で書かれ貼られていたので、目的の女子生徒の席には鞄が置かれていた。正直これは犯罪だ、もし今誰かに見つかってしまったら間違いなく反省文だけでは済まないだろう。
「携帯はないか」
一番肝心な携帯は鞄の中になかったので、バレる前に教室から出て急いで教室へと戻る。ギリギリ授業開始前に戻る事に成功する。
「優人、さっきはなんで授業に来なかったの」
「ちょっと問題があってな。それより明智、叶瀬咲について知ってるか……?」
「叶瀬咲、いい噂は聞かない二年の女子生徒だね」
「ほう」
席に着いて明智から女子生徒について知ってるか聞いてみたが、どうやら知っているみたいだ。
「一年の時から援交していたり、イジメの首謀者って噂を上級生の友人から聞いてるよ。でも噂だから確証はないけどね。あとどうやら、学校の裏サイトで、友人達とメッセージのやり取りをしてるらしいよ」
「サンキュ」
「優人、授業始まるのに一体どこに行くの……」
「ん……パソコン室」
明智に伝え教室から出てパソコン室へ行く。今は授業で誰も使っていなかったので鍵がかかっていたが、いつも換気の為、鍵をそのまま開けている窓があるので、そこから侵入する。パソコン室は若干暗かったが別に触るのに支障はない、一台のパソコンの電源をいれる、明智から聞いた通りなら学校の裏サイトが存在するらしい。
キーボードを素早く打って学校の裏サイトを発見するのだが、やはりパスワードが設定されている。きっと誰かに見つかってもパスワードのおかげで裏サイト内に入る事は不可能なのだ。ここで俺が持つUSBの出番だUSBをパソコンに挿す。
するとパスワードが解けて、裏サイトに入る事ができた。そして裏サイトでやり取りしていたメッセージを携帯の写真で撮り保存する。
どうやらあの女子生徒以外にも他の生徒にいじめを行っているらしく、今日の放課後空き教室でいじめを決行するようだが、バイトもあるのでここは明智に頼むしかない。確か明智は今日塾もバイトもなかったはずだ、パソコンの電源を切って教室に戻るが、もう授業が始まって大分経つ。
「鏡、授業サボってどこ行ってたんだ」
「トイレですよ先生別にサボってた訳じゃないですよ」
「……そうかまぁ今回は大目にみるが、今度からは授業が始まる前に済ませておけよ」
嘘を吐いて難を逃れる。席に座り、明智の背中を小突く。
「何、優人……?」
明智は振り返らず小声で話す。
「これ、今日俺バイトがあるからお前に託す」
俺はノートにいじめの犯行を止めるよう書いて切れ端を丸めて明智に手渡す。
「はぁぁ……優人これ嘘じゃないよね」
明智は確認してから溜息を吐いて聞いてくる。
「嘘じゃねぇって、今さっきパソコン室のパソコンで裏サイト内に侵入して、メッセージのやり取りを確認してきた」
「だったら仕方ない、見逃す訳にもいかないからね。場所はどこ……?」
「使われてない校舎の空き教室だ。放課後としか書かれてなかったから、時間自体は把握できてない」
「了解、それでいじめ自体止めて優人に得でもあるの」
「まぁ色々とな」
「ふぅん」
「なんだよ」
「別にー」
明智が今どんな顔をしてるか知らないが、これでいじめを阻止する事ができる。
バイトが終わると明智からメッセージが送られていた確認すると、どうやらいじめられる前に無事阻止できたらしい。
「先輩、にやけてますけど、何か嬉しい事でもあったんですか」
「……え、いや別に」
「さっきから携帯ばっかりみて怪しいですね」
「だからなんでもないって。それより銀華はどうした?お前ら一緒のテーブルでお互い勉強しあってただろ」
「銀華さんなら先に帰るって言って帰りましたよ」
「そっか」
「それより銀華さん、私より年下なのに、なんであんなに勉強ができるんですか。しかも飛び級って不公平ですよ」
どうやら勉強の合間に二人ともお互いについて話はしているらしい。甘栗は頬を膨らませて銀華の事を羨ましがっている様子が伺える。
「あ、先輩バイトでお腹空きましたよね。コンビニでなんか買ってきますよ」
甘栗はコンビニの前を通りかかって、そのまま入っていく。帰ったら夕飯を食べる予定だが、まぁ別に少々の買い食いなら構わないだろう。
「はい先輩これ」
少しして甘栗はコンビニ袋片手に戻ってくるといきなり袋から出して手渡してくる、中身を確認するとシュークリームが二つ入っていた。
「折角ならそこの公園で食べましょうよ」
どうやら一つは甘栗が食べるようだった。甘栗はコンビニ前にある公園を指差す。二人で公園に入るが暗くなっているので当然人の気配はない、電灯が灯されているベンチに二人で座り、甘栗に一つあるシュークリームを手渡す。
「ありがとうございます」
「てかシュークリーム代」
「えっとそれは結構です。代わりに聞きたい事があるんで」
「聞きたい事……?」
「先輩そろそろ答えてくれませんか……?」
甘栗の言う答えてくれと言うのは、きっと告白の返事の事を言っているのだろう。
「甘栗……」
「私……!! 先輩の答えならどんな事でも受け入れます」
隣に座る甘栗は声を出すが、ぎゅっと自分の手を強く握りしめて、顔を下に向けている。
「そのな甘栗。俺、最近彼女と別れたばかりだから、そんな簡単に人と付き合うなんて事考えてないんだ。だからお前の気持ちを知っても」
「やっぱりそうですよね。知ってました、きっと駄目だろうなって」
甘栗は顔を下にしたまま答えているが、その声には嗚咽が出ている事に気付く。
「ごめんなさい先輩、今日だけ我儘聞いて貰っていいですか」
「言ってみろ」
「先輩の胸貸してください」
「ごめんな甘栗」
何も言わずに甘栗を抱き留めて、頭を撫でながら言った。甘栗は俺の胸で泣き始める。甘栗の泣く姿を見るのは、きっとこれが最後になるだろう。
その後甘栗が泣き止むのをずっと待っていると、携帯に着信が入るが無視する。
「先輩もういいです」
甘栗は泣き止んだようで、抱き留めていた手を放して甘栗を自由にする。
「やっぱりシュークリーム、家で食べますね」
甘栗はそう言って、シュークリームを持ち公園から立ち去って行く。今追いかけても甘栗の為にはならないので、俺は帰ろうとしてベンチから立つ。先程着信がきていたので携帯を確認するが、知らない番号だったのでかけ直さず公園から歩いて家まで帰る。




