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鏡銀華と仲良くなった

 

「甘栗そっちいたか」


「こっちにはいませんでした」


「たく、一体どこに行ったんだ」


「先輩、もしかしてもう家に帰ったんじゃないですか」


「そう思ってさっき携帯で家にかけたが、帰ってないらしい。家に帰ってるとしたら、もう着いててもおかしくないだろ」


 何故甘栗とこんな会話をしてるのか、それは昼を食べ終わっても鏡銀華が帰ってこなかったからだ。甘栗と俺は別れて、遊園地中をくまなく探したが鏡銀華の姿はどこにもない。


「連絡ぐらいしてきてもいいのに」


 甘栗が呟く、鏡銀華は俺の携帯番号を知っているにも関わらず、何の連絡も寄越してこない。一度俺からかけたが電源が入ってないようだ。


「まさか誘拐されたのか」


 一瞬頭によぎってしまう。


「先輩それはないです。人から聞いたんですけど、銀華さんの姿を見てる人がちらほらいるみたいなんで」


 鏡銀華の髪色は銀髪の為そりゃ目立つだろう、俺は安堵する。


「だったらなんで連絡してこないんだ」


「それは」


「俺はまだ探してない場所探すから、甘栗はもう帰ってもいいぞ」


「え……」


「もうそろそろ暗くなる。正直お前一人帰らせるのも心配だが、これ以上暗くなる前に帰れ」


「先輩……!!」


「うお、何だよ急に」


 いきなり甘栗に呼び止められ、走り出そうとした足を止める。


「えっとやっぱりなんでもありません、銀華さん見つかったらすぐに連絡してくださいね」


「おう、今日は付き合ってくれてありがとな。また連絡するからそれじゃあ」


「やっぱ言える訳ないよ、銀華さんなんか放っといて一緒に行きたい場所があるなんて」


 鞄から切り抜いたメモを取り出す、そこには時間と遊園地のある場所を示していた、だがもう無意味になってしまったので、ぐしゃぐしゃにして近くにあったゴミ箱に捨てる。


「しょうがない今日の事はもう忘れよう。大丈夫、まだ時間はたっぷりあるんだから」


 甘栗と別れてから遊園地で、まだ探してない場所をひたすら駆け回る、だが鏡銀華の姿は見た者は複数いるが皆行き先を知らないらしい。


「あと探してないのは」


 遊園地のマップをポケットから取り出す。探した場所には赤い印でチェックしていたが、あと探してないのは遊園地の中でも一番端っこにある噴水広場だった。


「ここにいたのか」


 そう言って声をかけたのはずっと探していた鏡銀華の後ろ姿だ、暗くなっても目立つ銀髪をなびかせて振り返ってきた。


「ずっと探してたし、連絡もしたのになんで無視するんだ」


「……から」


「なんて言ったんだ」


 周りにいるカップルの声のせいで、鏡銀華の声が全然聞こえないので近づく。


「全然楽しくないから……!!」

「優人兄様と二人で遊園地に遊びに行くはずだったのに、優人兄様は他の女を連れてくるし、全然話す事も出来ないから全然楽しくない」


「君は俺の事嫌いじゃなかったのか……?」


「嫌いなんかじゃないよ、ずっと優人兄様と仲良くしたいと思ってた。けど私自身、どうやったら優人兄様と仲良くできるか分からないから、今日の遊園地だって本当なら私から誘えばいいのに母様に頼って」


「俺はずっと君に嫌われてると思ってた、だから仲良くなるにも苦労すると思ってたが、まさかお互いすれ違っていたとはな」


 すると噴水の水が急に上がる、噴水の水はハートを描き色も透明から赤色、青色、緑色と次々変化していく、その謎は簡単に解けた、足下に色が変化して噴水を照らしていたのだ。


「優人兄様知ってますか、ここが遊園地の伝説の場所なんですよ」


「ここが」


 甘栗に聞いた伝説の場所、好きな人同士で行けば結ばれると言われている伝説の場所。どうやらここがそうらしい道理でカップルが多い訳だ。


「綺麗だ」


 こんな綺麗な噴水が上がるのを見たのは、生まれて初めてだったので呟く。確かにこれを間近でみたカップルなどは、結ばれるに違いない


「優人兄様、すみません私のせいで中々楽しめなかったですよね」


 噴水の水は数分後に上がるのが止まり、カップルなども消えていく、俺と鏡銀華も遊園地の出口まで歩いている途中だった。


「どこが、楽しめなかったのならまた来ればいいだろ。それに俺は今日の事は忘れないと思うぞ……銀華」


「今私の事名前で」


「せっかく仲良くなったのに名前で呼ばないのは変だろだからさ銀華も、俺の事兄様とか呼ばずに普通に名前で呼んで欲しい」


「優人さん……優人兄様がダメなら、そう呼ばせてください」


「まぁ優人兄様よりはいいかな」


 家に着くと、早速甘栗に銀華が見つかった事をメッセージで連絡した。すぐに甘栗から返信が返ってきた。


「優人さんちょっといいですか」


 部屋の扉を叩いて銀華の声が聞こえる。


「ああ入って来ていいぞ」


 銀華が俺の部屋に訪ねてくるなど初めての行為だった為、部屋を見渡して片付いているか確認して声をかける。扉を開け銀華が枕を持って部屋に入ってきた。


「今日一緒に寝てもいいですか」


「え……いやでも俺達歳も離れてるし」


 突然の申し出に驚く、幾ら今日仲良くなったからと言って、いきなり一緒に寝るというには考えてすらいなかった。


「確かに歳は離れてますし、私がわがままを言ってるのも分かります。だけど一緒に寝たいんです。今日だけで構いませんから」


「じゃあおやすみ銀華」


「おやすみなさい優人さん」


 結局銀華の申し出をのみ、銀華は隣で横になって声をかけてくる、明日も授業があるので早く寝ようと何も考えずに目を瞑る。


「優人さんもう寝ましたか」

「優人さん……?」


 隣に寝転ぶと、優人兄様の顔がすぐそこにある。わがままを言って、今日だけ一緒に寝る事ができた。こんな近くで優人兄様の顔を見るだけで、顔が熱くなってくる。


「やっぱり私は優人さんよりも優人兄様の方が呼びやすいです」


 だが優人兄様が普通に呼んで欲しいとそう言ったんだからそうしよう。


「だけど今日だけは優人兄様と呼ばせてください」


 優人兄様が隣で寝ている中、急に優人兄様の携帯が鳴った、優人兄様を起こさないように携帯を取って電源をつける。どうやらメッセージが届いたらしい、甘栗愛名は今日遊園地に来ていたあの女の事だろう。メッセージを遡っていくと、どうやら優人兄様の事が好きで、そしてこの前告白して返事待ちのようだ。


「私がいない間に優人兄様に近づく女が増えていたとは」


 どうやらこの女についても色々調べなければいけないようだ、まさか帰国してからこんなに忙しくなるとは思ってなかった。だけど今日だけはあの女性もこの女についても忘れて、優人兄様と寝る事だけを考えよう。


「おやすみなさい優人兄様」


 私は優人兄様の手を握る、優人兄様の手は私よりも大きい、このまま優人兄様の手を握ったまま私は眠りについた。

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