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9.田舎者と盗人、お似合いだな

 根も葉もない噂話を信じて、怒り心頭のアルヴィン様。

 どうやら、イザベラお姉様がデマを流し続けていたみたいで、私は姉のものを奪う非常識な妹だと思っているみたいです。

 

 はぁ~~、どうしましょうかね。この方、最初からお姉様が全部正しくて、私たちが全部間違っているという前提で話していますから、何を話しても聞いてくれないような気がするんですよね。

 

 フェルナンド様と目が合いますと、彼もやれやれというような表情で肩をすくめています。

 

 もしかしたら、彼はアルヴィン様のこういった面を何度も見てきたのかもしれません。


「アルヴィン殿下、イザベラの話だけを一方的に信じるのはフェアではない気がしますが。私たちが嘘つきで、イザベラが正直者である根拠をご教示して頂きたい」


 ここで、正論を述べますか。

 最初から暴論に暴論を重ねているアルヴィン様には、そんな正論は通じない気がしますが。

 いや、フェルナンド様も正論は通じないと分かっていて述べているのかもしれませんね。


 なんせ、どちらが嘘つきでどちらが正直者かなんて、根拠など示せるはずがないのですから。

 アルヴィン様だって答えられずに怒り出すはず。そこで、冷静さを失った彼を何とか帰らせるおつもりなのでしょう。


「瞳だ! 瞳を見れば正直者かどうかなんてすぐに分かる!」 


「「――っ!?」」


「どっちが正直者だと? はははは、麗しいイザベラの瞳は紛れもなく正しき心の持ち主の目。嘘つきがどちらなんて、僕にかかればすぐに分かるのさ。あんなに美しくて可憐なイザベラが正直者でないはずがない!」


 清々しい表情で、堂々と、アルヴィン様はイザベラお姉様を全肯定しました。

 これは、ダメなパターンです。こんなの話し合いになるはずがありません。

 だって、この方は……イザベラお姉様のことを――。


「えっ? お好きなのですか? 殿下はイザベラのこと……」


 私が全てを察するのと同時にフェルナンド様はそれをストレートにアルヴィン様に尋ねました。

 そして、それを受けたアルヴィン殿下はみるみるうちに顔が紅潮します。

 まるで、熟れたトマトのような顔色になったアルヴィン様。


「す、す、す、好きじゃない! 好きちゃうわ! ぼ、ぼ、ぼ、ぼ、僕にはら、ライラという、こ、婚約者がいるんだから」


「声、震えてますよ」


 アルヴィン様は分かりやすく動揺しながらすべてを教えてくれました。

 こんなに動揺したのは、彼の婚約者があのライラ様だからでしょう。

 ライラ・ナルトリア――大国ナルトリア王国の第三王女である彼女は非常に気が強く、裏切り者を絶対に許さないと公言するような人物なのです。


 ですから、もしも仮にアルヴィン様がイザベラお姉様と懇ろな関係になりますと、またたく間に国際問題に発展してしまうでしょう。


「恋は盲目とよく言ったものですね。だから、イザベラの話を妄信してしまわれている」


「だ、黙れ! この田舎者め! よく考えたら盗人とお似合いだ! お前なんか!」


 もうダメです。フェルナンド様の言葉が通じません。

 友人からの侮辱したような発言を受けて、いつもは余裕のありそうな表情をされていたフェルナンド様は少しだけ悲しそうな顔を見せます。

 

「い、イザベラは僕が守る! 恋愛感情とかはないけれど……。イザベラとはそんな関係では――」


「アルヴィン殿下! 大変です! 緊急の伝令があります!」


「なんだ、騒々しい! 今それどころでは……」


 伝令の兵士が汗だくになって、屋敷の中まで入ってきました。

 これは余程の事態なのでしょう。イライラした顔をしながら兵士の話を聞いていましたが、次第に青ざめた表情になりました。


「何っ! ぼ、僕とイザベラがパーティーの席で何度も口づけをしていたという目撃情報がライラの耳に!? 嘘だろ! あっ……!」


「「――っ!?」」


 なんとアルヴィン様は凄い爆弾発言を言い放ちました。

 私とフェルナンド様は絶句して、アルヴィン様は口を滑らせたと、しまったという顔をしています。

 いや、なんで叫んだんですか。屋敷中の人が聞いていましたよ……。


「お、お前ら、今の発言聞いてた?」


 間が抜けていると不敬ながら思ってしまった私はゆっくりと頷いてアルヴィン様の確認を肯定し、フェルナンド様は蔑んだ視線を旧友に送っていました――。

アルヴィン、早くも終了のお知らせ。

ということは、イザベラも……。


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