39.世界を滅ぼす魔法(アルヴィン視点)
気付けば僕は首を吊っていた。
ティルミナという美女に唆されて、口づけをした瞬間に僕は僕の身体の自由を奪われたのである。
「またもや禁術、傀儡魔法か。傾国の魔女とはよく言ったものだ。私でさえ躊躇う外法の数々を使いこなすのだからな」
く、傀儡魔法だって? なんだそりゃ。
た、確かに身体が言うことを利かない。自ら望んで首を吊ってるようにしか……。
「嫌ですよ~、ニックさん。こんな魔法、いちいち口づけしなきゃいけないし、命令も単純なものしか出来ないし、効果もたったの三十分程度。こんな未完成魔法、完全再生魔法と比べたらゴミみたいなものですよ~」
ニコニコと笑いながら僕が首を吊って死に向かっている様子を眺めているティルミナ。
き、キスしただけで、好き勝手に人の行動を操れるだって!? そんな魔法、聞いたことがないぞ。
いや、待てよ。ニックのやつ、ティルミナのことを「傾国の魔女」って呼んだか?
その名前は聞いたことがあるよう――。
ま、まずい。これは、まずいって……。し、死ぬ。ぐるじ……、い。
う、うごげ、ぼくのから、だ……!
死ぬ、じ、じぬ……、ぐる、ぐる、ぐる、じぃ―――――――。
◆ ◆ ◆
「――かはっ! んっ? 僕は一体……」
「目が覚めたか? ボンクラ王子」
「お、お前は……!? えっと、誰だっけ?」
目が覚めたら、薄暗いところにいた。ここは牢獄の中のように見えるが……。
ランプの光があまりにも淡過ぎてよくわからない。
「私か? まったく、ノーマン家の娘共と比べてお前は出来が悪いみたいだな。昔の私を見ているようで、苛つく。……まぁいい。教えてやろう。私の名はニック・ノルアーニ。ボンクラ、お前の叔父だよ」
「――っ!? ニック・ノルアーニだって? あはは、お前の年齢幾つだよ? 僕よりも下に見えるぞ。確かに叔父は呪われた赤い目をしていたと聞いたことがあるが、な」
目の前の男が僕の叔父のニック・ノルアーニだって?
かつて、国を滅ぼそうとして幽閉された父上の弟が僕よりも若い見た目のはずがないだろう。
話と一致するのはその不気味な赤い瞳だけじゃないか。
「やれやれ、一つも常識を疑えぬとは、やはり無能か。兄の息子じゃ仕方ないがな。……己は死して復活したというのに」
「死して復活? どういうことだ? 一体……」
「簡単なことですよ〜。アルヴィン様は〜。一度、お亡くなりになりました〜。首を吊って自殺したのですよ〜。いや〜、生き返って良かったですね〜」
「て、ティルミナ……!」
地下牢の外にいるのはティルミナ。
さっき、僕に口づけをして、身体を操って首吊りさせようとした悪い女だ。
相変わらず、ニコニコと笑っていやがる。憎たらしい。
「注文どおり生き返らせてやったぞ。これで貸し借りは無しだ」
「はいは〜い。ニックさんが意外と義理堅くて安心しちゃいました〜」
「ふん。私も興味があっただけだ。お前の仮説とやらが正しいのかどうか」
何やら訳のわからんことを話しているニックとティルミナ。
僕を生き返らせてやったとか、意味が分からん。
まるで、僕が一回死んで、ニックが蘇生させたみたいじゃないか。
死者蘇生なんて、あの小生意気なシルヴィアだって出来ないんだぞ……。
「私の傀儡魔法は〜。本来、死んだ生き物を自由自在に半永久的に動かす魔法だったんですけど〜。何とか、生き物にも使えるようにしたかったんですよね〜。死んだ生き物って腐るし、見た目もグロテスクで可愛くないし〜」
「で、さっきの粗末な魔法にしかならなかったと」
「そうなんですよ〜。やっぱり、生き物って生命力って奴が邪魔をして魔法の効果が上手く伝達されないんです〜」
なんだその趣味の悪い魔法は。
死んだ人間を半永久的に動かすとか、不気味過ぎるだろう。
この女、顔は美しいが性格はかなり悪そうだぞ……。
「だから〜〜。一回、死んでもらって〜。傀儡魔法をかけて〜。再生魔法で生き返らせたら〜、弱点を克服出来ると思いまして〜」
「お前と私で生きた人間を自在に操る魔法を完成させようってわけか」
「楽しくなりませんか〜? これは世界中を混乱させて自由自在に滅ぼすことが出来る夢の魔法ですよ〜」
そんなことを言いながら、ティルミナはゆっくりと僕の頭に手をかざした――。
ニックとティルミナ、最凶のタッグです。
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