37.この部屋に魔術師がいる
「こ、この中にニックの味方の魔術師がいるだと!? 馬鹿なことを言うな! 魔法が使える者は兵士たちの中でもごく一部だけだし、使用人たちに至っては皆無だ。この中に魔法が使える者はお前たち姉妹以外にはいない!」
イザベラお姉様がこの部屋の中に魔術師がいると発言したので、ライラ様はそれに反発します。
そうですね。
魔法が使える者は少ない――だからこそ、魔術師の家系である私たちの実家、ノーマン家は優遇されていましたし、お姉様が辺境伯であるフェルナンド様と幼いときに婚約をしたのもそういう関係です。
しかし――。
「魔法を使えない者が使えるフリをすることは難しいですが、使える者が使えないフリをすることは簡単です」
「おいおい、この部屋の中に魔術師がいると本当に言っているのか? 使えないフリというが、使用人も兵士たちも昨日今日雇った者ではないんだぞ!」
そうなんですよね。
わざわざ魔法を使えないフリをするメリットってありませんよね。
それに、ずっとノルアーニ王国の監獄に閉じ込められていたニックがこの瞬間のために王宮に仕えている人に声をかけて、仲間にしたとは考えにくいですし――。
「事情など本人に聞いた方が早いですわ。目を背ける程の魔力を放出。このわたくしを侮っているのでしょうか?」
「そうですね。上手く再生魔法と破壊魔法の痕跡に混ぜていますが、完全には消せていないみたいです」
「な、なんですか~? 私は普通のメイドさんですよ~。アリーナ・リリットと申します~」
アリーナと名乗ったメイドから感じたのは魔力使用の痕跡。
相当の手練なのか、この部屋に入ったばかりのときはニックの使ったであろう魔法の痕跡に上手く混ぜて、協力者の存在自体を上手く隠していました。
「アリーナが魔術師だと? この娘はもう二年以上、王宮で働いているんだぞ! 実家が裕福でないから、仕送りを頑張っている真面目な子だ。魔法が使えるならば、もっとそれを活かした他の仕事をしているだろう」
「ライラ殿下の仰るとおりです~。魔法なんて使えな――」
「魔雷ッ!」
「「――っ!?」」
ライラ様の弁護に続いて、アリーナさんも弁明しようとします。
しかしながら、イザベラお姉様はそんなアリーナさんの心臓をめがけて雷撃魔法を放ちました。
容赦ありませんね。そんな乱暴なことをしなくても彼女が魔術師だと証明出来たでしょう……。
「酷いです~。ただのメイドに向かって、至近距離から雷撃を飛ばすなんて~」
「ゆっくりと加減して飛ばしましたわ。まぁ、ただのメイドが防げるほど生易しい魔法ではありませんがね」
アリーナさんの目の前にはひし形の黒い盾が浮かび上がり、イザベラお姉様の魔雷を完全に防ぎました。
魔法を完全に遮断する防壁をノーモーションで……。
やはり、この人はニックにも劣らない魔法の使い手かもしれません。
「さすがはノーマン家の魔術師ですね~。まさか、こんなにも早くバレるとは思いませんでした~」
「あ、アリーナ……!? 貴様、魔法が使えたのか!?」
「嫌ですよ~、ライラ殿下~。私のことをお忘れですか〜〜?」
アリーナさんが魔法を使ったことに驚愕したライラ様に対して、彼女はニコニコと笑いながら自分の顔に手をかざします。
「「――っ!?」」
「か、顔が変わった!?」
は、初めて見ました。
変身魔法――世の中に混乱を招くとされており、禁術に指定されている所謂外法と呼ばれる魔法。
完全再生魔法と同じく禁忌とされているので、術式の存在は仄めかされていましたが、古代人によって封印されていると聞いたのですが……。
黒髪で地味な感じの少女だったアリーナさんが、妖艶な銀髪の絶世の美女へと様変わりした瞬間を目の当たりにして、私も思わず息を呑みました。
「き、貴様はティルミナ!! この国を追放された魔女が何故ここに!?」
「……ふふ、もちろん秘密で〜〜す」
ティルミナと呼ばれたアリーナさんだった人。
追放された魔女って……これはどういうことなんでしょうか――。
ティルミナの目的とは……?
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