32.全部壊してしまえば
岩巨人の鉄槌によって叩かれたニックは全身を打ちつけて、大怪我を負っているはずです。
殺してしまう訳にはいかないので、弱めに叩きましたが、それでも大怪我なのは間違いありません。
「はは、驚かせやがって」
「まったくだ。ライラ殿下の命を狙う愚か者、拘束させてもらう」
「んっ? なんだ、この光は――」
「治癒魔法なのでは?」
倒れているニックが青白い光によって包まれます。その様子をライラ様直属の護衛の方々がご覧になっていますが、治癒魔法ではありません。
これは、恐らく――。
「行儀の悪い娘だな。だが、私はこの通り完全再生魔法でどんな怪我を負ったとしてもすぐに元通りだ。たとえ、四肢を分断されてもな」
治癒魔法ではあり得ない速度で、汚れた衣服までも全て元通りに復活したニック。
うーん。この人を拘束するのってかなり難しい気がしますね……。
動きを止めないと拘束できませんし、閉じ込めようにも破壊魔法で壊されますし。
「さぁ、惨劇を始めよう。この国は混沌に――」
「岩巨人の鉄槌ッ!」
「――っ!? 二度も同じ手をくらうか! 破壊魔法ッ!」
また長々と話そうとしたので、もう一回岩巨人の鉄槌を放ちましたが、破壊魔法によって消されてしまいました。
やっぱり、攻撃魔法も破壊魔法で打ち消されてしまうみたいです。
つまり、破壊魔法は攻防一体、再生魔法は完全回復。
あれ? 捕まえるのなんて、無理ではありませんか?
「再生する間も与えずに殺せ! ノルアーニ王族の血縁かなんだか知らんが、拘束は諦めて、この場で処刑しろ!」
「「はっ!」」
ライラ様はいち早く、切り替えました。
そうですよね。自分の命を狙う危険人物が人智を超えた力を持っていたらその場で殺してしまおうってなるのは当然です。
死んだら流石に再生魔法は使えないでしょうし……。
「すまないが、こちら側のやり方でやるぞ。ノルアーニ側に配慮するつもりはない」
「致し方ないでしょう。ノルアーニ国王には私から事情は説明しますので、ご安心を」
ライラ様はフェルナンド様に今からニックを処刑する旨を伝えます。
フェルナンド様としてもどうにもならないと思っているのでしょう。
それを了承して見守ることにしたみたいです。
「で、お父様。わたくしたちはどうしますの? 焼き殺すのでしたら、いつでも準備は出来てましてよ」
イザベラお姉様の頭上には紅蓮の炎が渦を巻いて燃え盛っています。
本来なら人に向けるような大きさではありません。
容赦ない感じですが、中途半端に攻撃するとこちらも命の危険がありますので正解でしょう。
「やむを得ないだろうが、お前は陽動に徹しなさい。ニックはワシが殺ろう。我が父、アーヴァインのやり残した仕事だ。ノーマン家の家長であるワシが決着をつける」
腕を捲くったお父様はお姉様にそう伝えます。
これは本気ですね。私たちに魔法を教えているときと同じ顔をしています。
ノーマン家は代々魔術師の家系。お父様も当然、幼い時から魔法の英才教育を受けています。しかも大賢者と呼ばれたお祖父様から。
「ノーマン伯爵、心意気は嬉しいが邪魔をしないで欲しい。奴は私の部下が始末する。戦闘のプロに任せてほしい」
「恐れながら、ライラ殿下。ニックは規格外の魔術師。魔術師には魔術師の戦い方があります。魔法のプロの戦い方が」
「なんだと……? ――っ!?」
父がライラ様に反論した瞬間、ニックを取り囲んでいた護衛の方々が一斉に吹き飛ばされました。
猛烈な風が吹き荒れて、離れている私たちですら立っていられなくなるほどの威力。
「まずは一人目……!」
「し、しまった――」
倒れている護衛の一人に対してニックは漆黒に染まった右手をかざします。
破壊魔法で消し去るつもりなのでしょうが――。
「さっきからスキだらけですわよ!」
「むっ!?」
そのタイミングでお姉様が炎をニックに向けて放ち、彼は堪らずそれを破壊魔法で消し去ります。
「雷神の鎚――!!」
父の両手から渦巻く雷を放ちました。
ノーマン家に代々伝わる必殺の魔法。堅固な城壁すら粉々に打ち砕く、父の最大の切り札です。
「シルヴィア、後で再生魔法で修復しなさい」
「は、はい……」
あまりの威力によって、ナルトリア王宮は大惨事というか、見事に瓦礫の山が出来てしまったというか……。
さすがのニックもこれには耐えられなかったみたいですね――。
ノーマン伯爵は割と強いのです。
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