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31.怨敵の孫娘

 まるでこの世の全てを憎んでいるような、地獄の業火を映しているような赤い瞳。

 年齢は確かに私とさほど変わらないように見えますが、見た目とは別の威圧感を放っています。

 この方がライラ様を狙う賊のリーダーであるニックですか。


「足の裏から風魔法を噴射して一瞬で間合いを詰める。その常識外れの発想、あの男を彷彿とさせて古傷が疼く――」


 私に伸ばした彼の腕には大きな傷跡が残っていました。

 まるで腕を切断した跡みたいな、凄惨な傷跡が。

 まさか、お祖父様に腕を切り落とされたとか? いえ、そんなこと。


「この傷跡は敢えて残しておいたのだ。得意気な顔をして、この私を蹂躙した屈辱を忘れん為にな……!」


 真っ黒なドス黒い靄に包まれた掌底が私を捉えようとします。

 こんな術式は見たことがありません。

 イザベラお姉様の話だと彼は破壊魔法を使っていたとのことです。


 おそらく、これが――。


「――っ!?」

「お、おい!」


 私は足をニックに向けて風魔法を噴射して方向転換します。

 その際にライラ様を抱きかかえて、彼から距離を取りました。

 まずはライラ様を危険人物から遠ざけることが先決です。


「フェルナンド様、ライラ様をよろしくお願いします」

「わかった。シルヴィア、くれぐれも無茶はしないでくれ。あの男の破壊魔法……、危険すぎる」

「あ、ありがとう。助かった……」


 フェルナンド様とライラ様は驚愕した表情でニックを見ていました。

 それも、そのはず。ライラ様が立っていた場所の後ろにある大理石の壁にぽっかりと大きな穴が空いておりましたから。

 あんなものに触れてしまえば、人間など一瞬で消されるでしょう。


「まずは護衛対象の安全を確保、と。意外と冷静じゃないか。シルヴィア・ノーマン、気に入ったよ」


 フードを取ったその顔は黒髪の美男子と言える青年でした。

 ルビーのような真っ赤な瞳は妖しく輝き、私を睨みつけます。


 私と同い年かそれよりも若く見えますが、本当にこの人は国王陛下の弟なのですか。

 若返りなんて、再生魔法でも無理なのですが……。


「今、お前はこう思っただろう? 本当にノルアーニ国王の弟なのか、と。若返りなど再生魔法でも無理だ、と」


「――っ!? ど、どうしてそれを!? まさか、心を読む魔法まで」

「バカですわね。そんなの誰だって疑問に思うことですわ」


 私が心の中のセリフを読まれたことに驚いていますと、イザベラお姉様が真顔で私のことをバカだと言います。

 誰だって思いますか。そうですか……。


「だが、これは全て再生魔法の効果だ。……再生魔法は人間には使えないという要らない制約を解き放った、完全再生魔法とでも言うべき術式だがな」


「「――っ!?」」


 そ、そんなことって……、いや理屈では可能です。

 再生魔法というのは古代人によって開発された高等魔法ですが、死者蘇生という神の禁忌に触れないためにリミッターを取り付けて敢えて不完全にした魔法。

 

 もしも、そのリミッターさえ取り外すことが出来れば――あの男の言うような完全な再生魔法を使うことも可能なはずです。


「驚いているな。私はアーヴァインのそんな顔を見たかったのだが、死んでしまったのは仕方ない。怨敵の孫娘であるシルヴィア。今日はお前の顔で許してやる」


「……あの男、さっきからわたくしのことを蔑ろに……」

「バカなことで張り合うでない。あの男が言ったことが正しいのなら、人智を超えた力を持っているということだ」


 お父様は前に出ようとするイザベラお姉様を抑えています。

 しかし、ニックは怖いことを言いますね。お祖父様への恨みを私にぶつけるなんて。面倒なことを言われます……。


「若い娘を嬲る趣味はないのだが、恨むなら、お前の祖父を恨めよ……!」

岩巨人の鉄槌(ゴーレムハンド)ッ!」

「へぶっ――!?」


 ニックのセリフが長いので彼の頭上から石で作られた巨人の拳を落としました。

 なんか、自分に酔ったような感じを出すことに夢中でスキだらけでしたから――。

 

ニックはセリフが長いキャラです。


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