30.大賢者の孫娘
書き溜めが尽きました……。
明日から毎日一回更新です。
ノーマン家に生まれて、物心ついたときから私はお姉様と共に魔法の修練を積むことを義務付けられました。
その頃、お祖父様は大賢者だと呼ばれるようになっており、自然と私たちへの期待も大きくなっていたのです。
『はっはっはっはっ! お前たち、二人とも筋が良いぞ! このワシを超える魔術師になれるやもしれんのう!』
『お任せ下さい! お祖父様! このイザベラ・ノーマンはお祖父様の“大賢者”の称号を引き継いでみせますわ!』
『かっこいいなぁ。お姉様は――』
イザベラお姉様はアーヴァインお祖父様を尊敬しており、彼のような大賢者を目指すと宣言した時の輝かしい姿は今でも目に焼き付いていました。
この頃はお姉様に分からないことを教えてもらったり、共に協力して修行を頑張ったりしていたので、姉妹仲は悪くなかったと思うのですが……。
「再生魔法……!」
私は再生魔法で壊した王宮の備品などを直します。
壊しても直せばいいや、みたいな考えで加減なく魔法を使うのは如何なものかと思ってはいるのですが、今は緊急事態ですから。多少の乱暴は許して頂きたいところです。
「やっぱり、目障りな魔法ですわね。自慢げに使っちゃって……」
「イザベラお姉様……? どうかされましたか?」
「……何でもありません。大賢者の再来とか言われて調子に乗っているのでは? と思っただけです」
プイッとそっぽを向くイザベラお姉様。
そんなにイライラさせることをしましたかね?
不機嫌なのは今に始まったことではありませんが……。
「賊もあれから七人ほど捕まえたが、全てハズレか」
「侵入者は思っていたよりもずっと多いみたいですね」
「ああ、ニックはどうしてもテロ行為を成功させたいらしい」
レイピアに付着した血をハンカチで拭いながらフェルナンド様はニックの思った以上の手駒の多さについて、そう評しました。
確かに私たちだけで、七人も捕まえたとなると親衛隊の方々はもっと多くの人数を捕まえていることでしょう。
そうなると、ニックの手下の数は下手をすれば百人近いのでは、とすら思えてきます。
「それにしても、フェルナンド様って剣術がお得意なんですね」
「得意というか、父に仕込まれたのさ。治安の悪い国に交渉に行くこともあるから、自分の身くらい自分で守れるように、とね」
本来、フェルナンド様の立場ですと私たちに指示を出すだけで良いのですが、婚約者を戦わせて自分が安全なところでふんぞり返っていることが我慢できないとして、一緒にこうやって護衛の任務の前線に立っているのです。
ちなみにアルヴィン様は足手まといということで、王宮の一室に軟禁されています。
「しかし王族直属の親衛隊はやはり凄いな。まったくスキがない。ああやってライラ様の前後左右を常に固めていれば、何者も近寄れないだろう」
フェルナンド様の仰るとおり、ライラ様の護衛はまさに完璧と言っても良いでしょう。
屈強な男性たちが常に彼女の周りをガードしており、全員が達人ですから小さな虫一匹、彼女の側には近寄れません。
今は王宮の花壇付近を捜索するようにと親衛隊に命じて、自らも中庭近くの渡り廊下からそれを眺めています。
「遠距離から魔法で暗殺を実行しようとすることも出来るが……ワシは見逃さんよ。魔力の波動を」
お父様も神経を集中して魔法を使う前兆みたいなものを探知しようとしています。
私も遠くから狙ってくると思っていますので、周囲に気を配っているのですが……。
「まぁ、わたくしが独房にいたときは下から来ましたけどね。破壊魔法で床に穴を空けて――」
「「――っ!?」」
その瞬間、ライラ様たちの歩いている渡り廊下の床が崩れ落ちました。
まさか、地面をずっと掘り進んで機を窺っていた!?
気付けば、私は風魔法を利用して宙に浮かびライラ様に手を伸ばす影に向かっていました。
「……ほう、お前がもう一人の孫娘か!?」
「真っ赤な目……! まさか、あなたが……!?」
強烈な悪意と魔力を感じながら、私はかつてお祖父様が捕まえたという巨悪と対峙していました――。
大賢者の孫娘は因縁の相手と対峙します。
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