3.妹が婚約者まで奪った
辺境伯であるフェルナンド様が王都に滞在される期間は短い。
ということで、彼は急いでイザベラお姉様との婚約を破棄して私と婚約し直す旨を父に説明しました。
「虫が嫌いで……? そして、田舎暮らしで、ワシと離れるのが嫌だとイザベラが申していたのか。で、代わりにシルヴィアと婚約……。まぁ、フェルナンド殿がそれで良いのならワシは何も文句はないが。イザベラは、それでよいのか?」
「…………」
イザベラお姉様は終始不機嫌そうにされており、お父様の問いかけにも黙って頷くだけでした。
お姉様のわがままを聞いて、私は動きましたのに、そういう態度を取られるのは如何かと思いますが……。
「これ、何とか言いなさい。お前も納得しているのだな?」
「フェルナンド様が、わたくしよりもシルヴィアが良いと仰るのなら――」
なにやら引っかかる言い回しをされるお姉様。
まるで、ご自分がフェルナンド様との婚約を嫌がっていたことを忘れているみたいです。
「そうだな。辺境の地で暮らすことを嫌がっているイザベラより、シルヴィアの方を妻として迎えたいと今は思っているよ」
「――っ!? な、ならば、婚約は破棄しても結構です」
フェルナンド様の言葉を聞いたイザベラお姉様は少しだけ驚いた顔をして、震える声で承諾する意思を示しました。
お姉様、なぜ、そんなにも不機嫌なのですか? 本当は婚約破棄などしたくなかったのでしょうか?
いや、それならば、私に無理やり自分の身代わりになれなんて言うはずがないですし……。
「では、早速ではあるがシルヴィアを連れて家に帰る。君は荷物などの準備をしておきなさい。まぁ、大抵のものは揃えているけどね」
「はい。急いで準備を済ませます」
私がイザベラお姉様の身代わりになる条件――それが明日から辺境の地に向かい、フェルナンド様と共に暮らすことでした。
父は特に反対もなくそれを了承しましたので、私はこの家を明日には出ます。
名残惜しい気持ちがないワケではありませんが、仕方ないです。
私が家を出るだけで丸く収まるなら、安いものなのですから。
こうして、フェルナンド様は我が家から出て行きました。
さて、私も明日のために準備を――。
「あなた、何でも私のものを奪っていくと思っていましたが。まさか、婚約者まで奪うとは思わなかった」
「えっ? だって、イザベラお姉様が田舎では暮らせないって――」
「言い訳はいらないです。真実の愛っていうものがあなたと辺境伯様には芽生えたのかもしれませんが、あまりにも不義理ではありませんか……!」
怖いです。イザベラお姉様が支離滅裂すぎて、怖いです。
まるで、私がフェルナンド様を誘惑して婚約者としての立場を奪ったかのような言い草じゃないですか。
お姉様、数日前に私に対して命じたことを覚えていないのですか?
「田舎暮らしが嫌だから、私に身代わりになるように無理を言ったのですよね? フェルナンド様の元に嫁ぎたかったのですか? それなら、今からでも――」
「今からわたくしが何を言っても野暮ったくなるに決まっています! 物を奪うだけなら許せましたが、まさか、人まで奪うなんて――」
お姉様、どうしてしまわれたのでしょう。
まるで、本当に婚約者が奪われた人に見えてしまうのですが……。
「でも、わたくしはあなたが幸せになれるのなら我慢します。辺境でもお達者で――」
本気で心配していましたら、イザベラお姉様は急に笑顔になられて、自室に戻って行かれました。
よく分かりませんが、納得しているということで良いのですね? 我慢します、という所にどうもモヤっとしましたが、そういうお姉様でしたし、あまり考えないようにします。
翌日、私は迎えに来られたフェルナンド様と共に馬車に乗り、辺境の地へと向かいました――。
イザベラの脳内はちょっとどうかしています。
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