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29.だから貴女は気に食わない

 とりあえず、再生魔法で凍ったツボを元に戻して氷漬けになった怪しい侵入者を拘束します。

 そして……当たり前ですが、ライラ様にその男を差し出しました。


「思ったよりも仕事が早いな。それが噂のニックとやらか?」


「いえ、残念ながらニックの手先みたいです。彼は赤い目をしているみたいですので」


「ふむ、そうか。ならば尋問はこちらに任せよ。お前たちは引き続き、賊を探し出すのだ」


 フェルナンド様がニックではないと告げると、ライラ様は興味なさそうな顔をされました。

 王宮に賊が入ってきているのは結構由々しき事態だと思うのですが……。


「あのう、ライラ様。この人が侵入してきているということは、他にも多数侵入者がいる可能性がある訳でして。警戒を強める必要があるかと」


 私は不安になって彼女に進言しました。

 何故か、ライラ様は危機感を持っていないんですよね。

 賊が居ても平気というか、なんというか。


「シルヴィア・ノーマンよ。私には私の護衛がいるのだ。ナルトリア王族の直属の親衛隊がな。誰もが幼き時より戦闘の経験を積んだプロフェッショナル。当然だが貴様らよりも余程頼りになる。つまり心配は無用ということだ」


「はぁ……、それでは何故私たちを護衛に?」


「それは貴様らが責任を取りたいと言ったからだろう。チャンスを与えたのだ、汚名を返上するための。私の護衛と競わせて、どちらがニックとやらを捕まえられるのか勝負させることでな。……父上は能力のあるシルヴィア、貴様のことを高く評価していたし。余興だ、余興……!」


 そ、そんなぁ。

 ライラ様はまさか自分の命が狙われているのにゲーム感覚で余興とやらを楽しむおつもりなのですか。

 変わった方だと聞いていましたが、こんなことを仰るなんて。


「では、わたくしたちが一歩リードということですわね。本命ではないにしろ、侵入者を先に捕まえたのですから」


「先に……? ふっ、見せてやれ……!」


「「――っ!?」」


 イザベラお姉様のセリフを受けてライラ様が何かを命じますと、彼女の後ろから袋詰になった人相の悪い方々が五人ほど私たちの前に投げ飛ばされてきました。

 これって、もしかして、もしかしますよね……。


「侵入者なら私の護衛もこのとおり捕らえている。シルヴィアよ、貴様の魔術師としての技量は認めてやるが、これがプロフェッショナルの仕事だ。姉の名誉を挽回させたいのなら、せいぜい頑張るのだな」


「は、はい。姉と共に、必ずやライラ様をお守りします」

「……また良い子ちゃんぶって。そういうところが気に入らないのです」


 私がライラ様の仰せになったことに返答するとお姉様は小声で私のこんなところが嫌いだと言いました。

 こんなところって、どんなところなのでしょう……。




「ライラ殿下のお遊びにも困ったものだ。ナルトリア王族は自己の力を誇示することで威信を保っているから、こういうことが好きなのだろうが」


 ライラ様の物言いは流石のフェルナンド様も思うところがあったみたいです。

 珍しく困った顔をしていましたから。

 確かに変なことを仰るとは思いましたけど……。


「大丈夫ですよ。要するに私たちは勝負なんて気にせずにライラ様を守ることに集中すれば良いのです。何を優先するのか、だけはブレずにいきましょう」


「……そうだな。私たちは何があってもライラ様を守る。それだけ考えればいい。シルヴィア、ありがとう。目が覚めたよ」


 私の肩を抱いてお礼を口にするフェルナンド様。

 そんな大層なことは言っていないのですが、助けになったなら嬉しいです。


「また点数稼ぎ~」

「イザベラ、黙りなさい。まったく、いつからそんな性根になったのだ……」


 イザベラお姉様は不満そうな顔をしていますね。

 お父様が言うように、以前はこんなことをはっきり言うような人ではなかったのですが……。


「あの子にははっきり言わなきゃ通じないんですもの。あと、わたくしはライラ様を見返さなきゃ気が収まりませんわ。直属の護衛だか何だか知りませんが、こちらが上だと証明してみせます」


 まとまりかけていたのですが、どうも不穏な空気がなくなりません。

 ライラ様に何かあったら、お姉様が一番危険なのですよ。大丈夫ですよね――。

 



相変わらずのイザベラ。嫌な空気です。


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