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24.家宝の剣

 ナルトリア王宮は一言で表現するならば絢爛豪華です。

 ノルアーニ宮殿の軽く二倍以上ある大きさに加えて、世界各国から集められた美術、芸術品が通路に並べられており、美術館かと見紛うほどの迫力でした。

 ああ、だからさっき直したモノの中にやたらと貴重なモノが多かったんですね。

 骨董品はさすがに無かったみたいですが……。


 再生魔法を使って直してもピカピカの新品になっては骨董品の意味も成さないですからね……。


「先程、貴様が再生魔法で直した宝剣はな。ナルトリア王家の家宝だったものだ。四代前の国王の代で破損してしまったらしく、長く倉庫の中に眠っていたのだが……。その復活を聞いて父上が是非とも貴様に礼がしたいとのことだ」


 あー、あの壊れた名刀とやらはそんなにも大事なものだったのですね。

 すごく古くて、特殊な魔力による防壁みたいなのもあったので、実は直すのにこれまで以上に力を使ったのですよ。

 

 なんせ何でも直せるって大見得を切ってしまいましたから、こうなったら意地ですよね意地。

 荒地を直したとき以上にありったけの魔力を込めて直しましたから。

 実はもうすでに九割近く魔力を消費してクタクタなんです。


 ……はて、待ってください。ライラ様、今――。


「こ、国王陛下と会うのですか!? い、今から!?」


「うむ、もちろんだ。父上が来たばかりの客人に会いたいと仰るなんて滅多にないことだぞ。粗相だけは許さんからな」


 ですから、圧が――、圧が凄いんですよ……。

 ライラ様の低い声に完全に私は圧されてしまっています。

 もう、逆らうなんて考えられませんので、成り行きに任せるしかないのですが……。


「は、はい! ……あ、あのう、フェルナンド様――」


「さすがに予想外の展開だけど、いい展開だよ。シルヴィアが居てくれて助かった。大丈夫、私が上手く話をするからね」   


 どうやらこの状況は歓迎すべき状況みたいです。

 私としては隣国の国王陛下に謁見なんていう状況は怖い以外の何物でもないのですが、確かにライラ様よりも立場的に上の方とお話できる機会――両国の関係修復を考えるとチャンス到来かもしれません。




「がははははっ! お主がシルヴィア・ノーマンか!? あの大賢者アーヴァインの孫娘! このナルトリア王家の家宝であった宝剣をよくぞ直してくれた!」


 豪快に笑う筋骨隆々の黒髪の美丈夫。

 この方がナルトリア王国の国王――レオンハルト・ミュー・ナルトリア陛下。

 四十歳くらいだと聞いていましたが、びっくりするくらい若々しいです。

 そして、ライラ様以上に圧が凄いです……。


「陛下、初めまして。シルヴィア・ノーマンでございます。お喜び頂いて光栄です」


 内心、びくびくしながら陛下の問いかけに答える私。

 宝剣直したのだから、良いことしたって褒められているはずなのは分かっているのですが……。


「しかし驚いたのう。実はこの宝剣は大賢者殿にも修復を頼んだことがあるのだが、魔力による防壁が邪魔をして再生魔法が失敗してしまったのだ……」


「えっ?」


「大賢者殿すらお手上げであったのにも関わらず、大したものだ! がははははっ!」


 う、嘘でしょう。お祖父様、あの宝剣とやらに再生魔法を使ったことがあるのですか?

 というか、私は無理やり魔力の防壁をねじ伏せたんですけど、大丈夫ですかね? 爆発とかしませんよね……。


「何か褒美を取らせようと思うが、何が良い!? 何なりと申してみよ!」


 おー! あれくらいで褒美をくれるんですね。

 いつもなら、遠慮するところですが、今はこんな状況です。

 ありがたくお言葉に甘えちゃいましょう。


「では、ナルトリア王国とノルアーニ王国の友好関係継続を! あと、姉のイザベラに寛大な処置を、お願いします!」


「前者は前向きに考えておこう! だが、後者は無理だの……! それはお主の姉自身の問題だからな!」


 や、やはり、姉の件は駄目でしたか。

 ですが、両国の関係悪化は防げそうということで一歩前進ですよね……?

 

シルヴィアは町の修復屋さん。


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