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23.だから浮気じゃないってば(アルヴィン視点)

 ったく、なんでまた僕がこんなところに来なくちゃあならないんだ。

 ライラなんてクレイジーな王女に人間の話なんて通じるはずがない。

 あいつ、僕との婚約が決まったとき耳元で何を囁いたか知ってるか? 「浮気をしたら殺す」だからな。

 一国の王子に対して言うセリフか? どう考えてもおかしいだろ。

 僕はまだ遊びたい年齢なんだ。それを見越したかのように、異国の婚約者に対してそういう態度、良くないと思ったよ。

 そりゃ、ナルトリアは大きな国だ。ノルアーニ王国も資源を輸入したり、外貨を稼がせてもらったり、世話になっている。

 

 だからといって、王女といえども女の癖に大きな態度をとるって間違っているだろう。


 あの日のイザベラは可愛かった。

 涙目になって、弱気な部分を見せられるとそりゃあ男は誰だってグラッとする。

 キスくらい許せよ。子供じゃないんだから。

 

 たかがキスしたくらいで何でまた僕がわざわざ謝罪などしなくてはならんのか、本当に理解出来ん。


 そういうのって、フェルナンドで良くないか?

 辺境伯ってそういう仕事だろ? 謝罪全般を請け負うみたいな。

 僕本人が出なくても良いように上手くやってくれよ。

 

 ああーーーー! 嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だーーーーーっ!


 とにかく、だ。僕はなるべく喋らない方向で、フェルナンドに任せよう。

 いざとなったら、二人でシルヴィアという盗人女を責めるのだ。

 

「では、フェルナンド殿とシルヴィア殿は、こちらにお願いします」


「はぁ!? ちょっと待てよ! フェルナンドたちを何処に連れて行く気だ!?」


「安心しろ。ちょっと軟禁しておくだけだ。貴様と二人きりで話がしたかったからな……!」


「ひぃぃぃぃぃ!」


 気付けば、フェルナンドとシルヴィアは兵士にどこかに連れられて行っていた。

 嘘だろう? そ、そんなことってあるのか?

 まさか、この凶暴な獣みたいな女と一対一で話し合わんとならないのか……? じょ、冗談はやめてくれ、本当に殺される。


「そんなに怯えるなよ、アルヴィン。私とて、むやみな争いごとは好まんのだ」


「う、嘘をつくな! 剥き出しのサーベル片手に言うセリフじゃあないぞ!」


「別にこれくらい構わんだろう? 女としてここまで恥をかかされたんだ。貴様と心中する準備くらいしていても」


「うひぃ!?」


 この女、本当にヤバい。

 サーベルを自らの首に当てて、そして今度は僕の首に切っ先で触れ……、吐息が当たるくらい顔を近付けてきやがった。


 ――怖すぎる。


 畜生! 初めて会ったときは絶世の美女と結婚出来ると浮かれていて、婚約することを全く躊躇わなかったことが悔やまれる。

 あの日の僕を殴ってやりたいよ。本当に――。


「ま、待ってくれ! 待ってくれ、ライラ! ぼ、僕は君を愛している! 世界の誰よりも愛しているんだ! ただ、あれには事情があってだな。シルヴィアっていただろ? イザベラの妹だ……! あの女が悪い女で、姉の婚約者であるフェルナンドを非道な手段で奪ったのだ。あの女は手癖が悪いと有名でな――」


 僕は生きるために、人生で一番饒舌になった。

 そもそも、本当にシルヴィアという女が全部悪い。

 あの日、イザベラは泣いていた。「妹に婚約者を奪われた」と言って、悲しそうな顔をしていたんだ。

 それさえなければ、僕はイザベラには手を出していないし、万事平和な生活だったはずなのである。


「……事情は分かった。だからといって、許せるものではない。イザベラも含めても、な」


「うっ……」


「だが、シルヴィアという女が貴様が言うように本当に酷い女なのかどうかは確かめてやる」


 よっしゃーーーーーっ!

 話を逸らすことに成功したぞーーーー!


 シルヴィアはバカだから、きっと姉を盾にして自己弁護しかしないだろう。

 それこそが、ライラの一番嫌いなことなのだ。

 怒りがシルヴィアに向けば、僕の件は有耶無耶になるかもしれん。   


 よしっ! 頑張って、逃げ切るぞ――!




 


「シルヴィアの話を聞いた結果、イザベラもここに呼ぶことにした。貴様とイザベラ、二人にはじっくりと話を聞かせてもらうから覚悟しろよ」


 何故だーーーーっ!

 なんで、イザベラもこっちに来る話になっているんだーーー!?


 いや、待てよ。よく考えてみれば、父上がわざわざイザベラをこっちに寄越すはずがないか。

 少なくとも時間はかかるはず……。ここに来て、僕は冷静だな。

 焦らずに済んでよかった。よし、猶予はある。のんびりと言い訳を考えるとしよう――。



アルヴィンはもう終了でいいかな……。


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