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16.良い子ぶって、点数稼ぎなんて最低ですわ(イザベラ視点)

 あのシルヴィアの得意満面の顔、今思い出してもムカムカしますわ。

 いつも、あの子は平然とした顔でわたくしのプライドを踏みにじるのです。

 昔なんて子犬みたいに鬱陶しくつきまとってくるから、迷惑以外の何ものでもありませんでした。


 いつもヘラヘラ、ニコニコして、難しい課題も涼しい顔して乗り越えて。わたくしが誰よりも早く習得しようと努力して、一週間という驚異的なスピードでマスターした高等魔法も、あの子はたったの半日で覚えてしまい、あのムカつく得意顔を見せましたね……。


 そして、極めつけはわたくしよりも上だということを常に誇示するために常に再生魔法とやらで直したわたくしの衣服を着てみせるようなことを始めたことです。

 自分は大賢者と呼ばれた祖父のような天才で、わたくしは再生魔法など使えぬ凡人だと、妹の分際でわたくしを見下す態度を取り始めたことは許せません。


 シルヴィアのムカつく態度を挙げればキリがありませんが、とにかくあの子のせいでわたくしの人生がめちゃめちゃになりました。


 アルヴィン様もアルヴィン様ですわ。

 わたくしのことを守ると調子の良いことを仰って、独房行きって何の冗談ですの?

 あのとき、何度も甘い言葉を耳元で囁いて情熱的にキスしたのに、わたくしのことをこんなにも蔑ろにするなんて、馬鹿にしているのでしょうか?


 最も優先すべきでしょうが。わたくしをこんな汚くて冷たいところから出そうとするのは。

 


「イザベラ・ノーマン。フェルナンド殿が面会に訪れた。こっちに来い……!」


 フェルナンド様がわたくしと面会に……?

 まさか、フェルナンド様は婚約者だったわたくしのことを愛していたのでしょうか。それで、わたくしのことを助けに……?

 シルヴィアなんかと婚約し直したから趣味の悪い男かと思っていましたが。


 ま、まぁ、顔だけはそこそこ良いですし、どうしてもと言うのなら助けられてあげてもよろしいですよ。


 シルヴィアと別れるのなら、少しくらい気のある仕草をして差し上げても――。


「ライラ殿下に謝りに行く。アルヴィン殿下と共に、な」


 あ、そうですか。

 勝手にしてください。そんなことでわざわざ、このわたくしに報告など要りませんのに。

 嫌がらせですの? 期待を持たせて、それを落とすなんて。

 

「それはそれは、どうでも良いご報告ありがとうございます。ライラ様に伝えておいてくださいな。真に愛する者が泣いているときに、それを無視することが正義か否か。そして、真の悪は姉の婚約者を奪い取る非道な女ではないのか、と」


 まったく、たかがキスくらいで大騒ぎしすぎなのですよ。

 大体、ライラ様に魅力がないから、アルヴィン様が簡単にわたくしの唇を奪ったのでしょう。

 その事実から目を逸らして、こちらを過剰に攻撃するなんて、下品な王女様もいたものですわ。


「お前は一時的な気の迷いから善悪の判断がつかなかったことにする。余計なことは言うな。騒ぎがこれ以上激化すると、独房暮らしどころじゃなくなるぞ」


 この方もエラソーなことを言うようになりましたね。

 辺境伯の立場を継いでから、より鼻につく態度が目立つようになりました。

 しかし、こんなところでいつまでも暮らしていられません。  

 ここは不本意ですが、言うことを素直に聞きますか。


「分かりました。言うことを聞いてさしあげます。……せいぜい、わたくしが許されるように話をつけて下さい」


「ああ、シルヴィアが気合を入れていたよ。お前が許してもらえるように頑張るってな。彼女も私に同行してナルトリア王国に行くこととなった」


「はぁあああああああっ!?」


 し、シルヴィアがわたくしの免罪を乞うためにナルトリア王国に向かうですって?

 一体どうして? あの子のせいでわたくしがこうなっているのに。これじゃあまるで……。


 ――点数稼ぎね。


 そうよ。間違いない。

 あの子、陛下やフェルナンド様に良い人のフリがしたいから、そんなことを言い出したのよ。

 上手くいったら自分の手柄、失敗しても割を食うのはわたくし。

 ひ、必勝じゃないですか……。


 なんて、悪辣なことを考えるのでしょう。


 このままだと、あの子ばかり得することになってしまいます。

 ここから出たい! そして、あの子を――。

イザベラはプライドを傷付けられたみたいです。


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