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12.早過ぎる帰郷

 さよなら、我が故郷(遠い目)みたい感じでしみじみとした気分で辺境に移ったのに、こんなに早く王都に戻るなんて恥ずかしいです。

 あのとき、目頭が熱くなるような感覚だった私に教えてあげたい。すぐにこっちに戻りますからって。


 でも、私なんかとは比べ物にならないくらいイザベラお姉様は恥ずかしいことをしてしまっています。

 まさか、婚約中のアルヴィン様とキスをするなんて――大胆にも程があるでしょう。

 アルヴィン様に嘘を吹き込んだ上で、そんなことするくらいなら、素直にフェルナンド様のところに嫁げば良かったのに、としか思えません。


 だって、誰も得しないじゃないですか。まさか、ライラ様がいるのにアルヴィン様をものに出来るなんて思っていないでしょうし。


 それにしても……私も大概、お姉様の悪意をスルーしていたのだな、と自分の鈍感さに辟易しています。

 イザベラお姉様は欲しいものは何でも手に入れていましたので何一つ不自由していなく、不満もないと思い込んでいたのですよ。

 再生魔法で直したモノに対して「盗った」という言い回しをしていたことには引っかかりはありましたが、返すと言っても受け取らなかったので嫌がっているとも思えませんでしたし。


 外でそんな噂をばら撒かれていたことには驚きましたね。

 才色兼備で辺境伯様との結婚も決まっており、お父様からも甘々に愛情を注いで貰っていましたから、現状に普通は不満を抱きようがないじゃないですか。

 ですから、人の悪評を吹聴して回るような人だと思っていなかったのです。



「それでも満たされなかったんだろう。イザベラは君を貶めることで、心の渇きを満たそうとしていたんじゃないかな?」


 私がフェルナンド様にイザベラお姉様に対する事情を説明すると、彼はそんなことを仰せになりました。

 お姉様は自己満足のために私を貶めようとしていたということですか。

 理解は出来ませんが、それっぽい理由は分かりました。

 

「しかし、それでアルヴィン様とキスするなんて……」


「まぁ、それはアルヴィン殿下がイザベラに惚れていたのも手伝っての不可抗力だと思うけどね。軽率なのは間違いないけど」


 私に対する不満を肴にして盛り上がっていたら、気分が乗ってきてやっちゃった、と。

 アルヴィン様からすれば、惚れている傷心中の娘を慰めるシチュエーションですものね……。

 だからといって、立場を忘れてはならないと思いますが。


「イザベラお姉様、どうなってしまうのでしょう?」


「ライラ殿下は女性ながら男顔負けなくらいの胆力と覇気を持ち合わせており、非常に気が強い方だ。さらに裏切り者は絶対に許さない。冗談じゃなく外交を間違えたら自らが軍隊を率いて報復に来る可能性がある。イザベラの立場は……、勘当じゃ済まないかもしれない」


 やはり、というか当然ですがイザベラお姉様の立場は相当悪いみたいです。

 ということはアルヴィン様も、もっと窮地ですよね。

 

「フェルナンド様はライラ様に会われたことはあるのですか?」


「もちろん。辺境伯の地位を継いでから、外交で周辺諸国に行く機会も増えたからね。ナルトリア王国に行ったときに挨拶させてもらったさ」


「そうですよね。すみません、フェルナンド様のことは昔から存じておりますのに」


「ははは、君からすれば遠いところに住んでるお義兄さんみたいな感じだっただろうからなー。私に威厳がなかったからだろうけど」


 フェルナンド様は優しく、ポンと頭を撫でて機嫌良さそうに笑いました。

 まったくもって、そのとおりです。

 辺境伯という立場を若くして継いだフェルナンド様が国の重要な外交に関わっているというイメージがあまりにもなかったのです。


 ずっとお姉様の婚約者で、時々会う兄みたいな感じで接していたので、凄い立場の方ということを失念することも多々ありました。

 

 そうですか。フェルナンド様が外交――。


「ちょっと待ってください! では、今回のアルヴィン様がやらかした件って」


「ああ、私がライラ様の宥め役になるだろうね――」


 先程まで笑っておられたフェルナンド様は真剣な顔をして、そう答えられました。

 その目はギラリと輝いて、いつもとは違う辺境伯フェルナンド・マークランドとしての顔に私は思わずドキリとしてしまいました――。


 


速攻で辺境からUターン。そして、次回はイザベラとの再会です。


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