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1.飽きちゃった

 私には年子のお姉様がいます。

 お父様は伯爵の地位にあり、それなりに裕福な家庭なのですが、私は基本的に着るものや遊ぶものは大抵お姉様のおさがりでした。


 別にそれに不満はありません。

 むしろ、私にはどうも倹約家というか貧乏性な部分もあってお姉様の使い古しを好んで使っていました。


「これ、もう飽きちゃった」

「これ、もう要らないわ」

「これ、もう壊れてしまったから捨てます」


 そんな中、イザベラお姉様は欲しいものを大体手に入れることに成功しています。

 お父様は亡くなったお母様によく似たイザベラお姉様を誰よりも大事にしており、彼女には甘いのです。


 ですが、イザベラお姉様は飽き性な上に物を雑に扱うので、新しいものを手に入れては捨てたり、壊したりしていました。


 私はお姉様のそんな行動を見て『もったいない』と感じ、彼女が壊して捨てたものを直して使うようになります。

 玩具や文房具などちょっと直せば使えるものが多かったので、直すこと自体も楽しくてハマってしまいました。


 さらに我が家は古くから魔術師の家系でもありまして、お父様も名の知れた魔術師なのですが、私も魔法の修練は幼少の頃から積んでおり、古い魔導書に記されていた再生魔法というものに興味を惹かれるようになります。


 これを覚えればどんなものでも直すことができる――夢のような魔法に心を奪われてしまった私は独学で厳しい修練を積んで、再生魔法を修得することに成功しました。

 

 もう亡くなってしまいましたが、大賢者とも呼ばれていたお祖父様は再生魔法を覚えたことにとても驚かれました。なんでも、再生魔法とは特別な才覚を持つ者にしか修得できないとのことです。

 お祖父様も自分以外に扱える人間は見たことがなかったと仰っていました。

 

 ですから、私はほとんど身の回りの物が姉からのおさがりや彼女が捨てたり壊したりした物だらけになっています。


 もちろん、好きでやっていますから最初に申しましたとおり不満はありません。


 不満はないのですが――


「また、わたくしのものを勝手に持っていって使っている。あなたは仕方のない妹ですね……」


 いつからか、お姉様は私が彼女の物を直して使っている光景を見ると必ずそう一声かけて来るようになりました。

 私は直ったのなら返して欲しいのかと、彼女に問いかけたのですが「飽きちゃったから要らないわ」と返されて、特に返却を求めているワケではなかったのです。

 なので、私は気分は良くありませんでしたが放っておくことにしました。


 ですが、この頃の私は知らなかったのです。イザベラお姉様が周りの人たちにも、「妹が自分のものを何でも奪っていく」と吹聴していることに――。


 そして、決定的な事件が起こります。


「ねぇ、シルヴィア。よく考えてみれば、田舎暮らしって嫌ですわ。……それに、辺境伯様の顔にも飽きちゃったみたいです」


 なんと彼女は自分の婚約者である――若くして辺境伯の地位を継いだフェルナンド様に飽きてしまったと口にされて、婚約を止めてしまいたいと言い出したのです。


 さらに――。


「だから、あなたが代わりに結婚して。良いでしょ? あなた、わたくしのモノを貰うのが好きじゃないですか」


 唐突にとんでもないことを仰るお姉様。

 いえ、確かに色々とお姉様が捨てられたものを直していましたが、人はちょっと話が違ってきませんか?

 しかも辺境伯であるフェルナンド様ですよ。お相手は……。 

 どう考えたって、田舎暮らしが嫌くらいで婚約を破棄出来るわけありませんし、その上……妹の私が身代わりになるなんて、簡単に許されるはずがありません。

 しかし、辺境伯であるフェルナンド様との縁談が壊れれば両家に迷惑が……。


 どうしたら、良いのか非常に困りました――。



何でも奪う妹が主人公だったら、というコンセプトで書いてみました。


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