3、家族ができました
昨日、投稿してなくてすいません
「どうかしら?安心して過ごせそう?」
「エッ……ト」
どうしよう。分からない。
気がついたら何処かの建物に連れてこられていた。
ワタシの体は一言で言って汚い。水に濡らした布でで体を軽く拭いたことはあったけど、もう何日も前だ。
そんなワタシが足を踏み入れてもいいのか…、いや、確実に良くないくらいには綺麗な内装。
なぜ、ワタシはここにいるのだろう。
彼らに出会ってから分からないことが増えていく。
「ほら、お前が強引だから戸惑ってるんだろうが」
なんと答えたらいいのかわからず黙っていると、ワタシと初めに会話を交わした異形の隊長と呼ばれる男が呆れた顔で女性に言う。
「なんですって!?」
少し声を荒らげながら、女性は彼に詰め寄った。
「ま、まぁまぁ、落ち着いてくださいよ」
「失礼ね、私はいつでも冷静よ!」
「とりあえず、この子のことを考えてってことは分かってるからそう喧嘩腰な会話は止めねぇか。この子も戸惑ってんぞ」
熱くなりそうな喧嘩に止めに入る。他二人。
相変わらずどうしたらいいのか分からないワタシは、何も言えない。
「はぁ……、そうね。少し大人げなかったわ。この子にとっては理解できない状況なのだろうし。目の前で言い争いをしていたら怖がられるかもしれないわね」
落ち着きを取り戻した女性に、再び抱きしめられた。
「ごめんなさいね。私達は貴女を傷つけるつもりはないわ。でも、異世界から来た貴女を放っておくこともできないの。それは分かるかしら?」
「ナント、ナク?」
「だから、貴女が本当に危険じゃないってことを確認するために、しばらくここに住んでほしいの。ここが気に入ったなら、そのまま住んだっていいのよ?」
「おい、それは……」
「なぁに?何か問題あるかしら?まったく知らない場所に突然やってきて、危険はありません、じゃあ、さよなら。なんてことをするなんて……まさか、言わないわよね?」
「だが…」
「あら。それとも、孤児院にでもやればいいなんて思ってる?なんて無責任な男なのかしら」
「……」
隊長と呼ばれた異形は、いつの間にか女性に言い負かされている。
「アノ、デモ……」
「貴女は何にも気にしなくていいのよ?そうだわ。貴女さえ良かったら、私の子どもにならない?ちょうど欲しかったのよ。それに、貴方達だって私が保護者になれば安心するでしょう?責任は、勿論私がとるわ」
この女性は何を言っているのか。
ワタシが彼女の子どもに……?理解できない。ワタシはどこからどう見ても、気持ち悪い見た目だと自覚している。
ガリガリにやせ細ったうえ、髪も体を覆い隠すほど長い。髪も体も汚れきっている。
それに…、額からは二本の角が生え、耳の先は尖り、背中には黒い羽が生えている。
なぜ、そんなワタシに平気で触れることができるのだろう。
なぜ、ワタシを目の前にして慈愛に満ちた笑顔を向けることができるのだろう。
いくら考えても答えはでない。
「お前、今いくつだ?」
『お前は必要のない存在だ』
そう言われ続けていたのに。
「あら、私の年齢なんて聞いてどうするつもり?」
『なんて醜い容姿なの』
蔑みの言葉にも慣れていたのに。
「はははっ。そうですよ。誰がオバさんの年齢聞くんですか?」
『お前など産まなければよかった』
「ウマレテキテゴメンナサイ」うまれてきたことをずっと後悔してきた。
「何ですって!?ちょっとこっちに来なさい!」
『死ね』
もう痛みなんて感じないはずなのに。
「なぁ。お前、歳はいくつだ?」
ワタシの目を見て話しかけてくれるだけなのに、何で胸が軋むのか。
ワカラナイ。
「ワタシハ、ジブンノコトハ、ナニモ、シラナイ。ワカラナイ。ナマエ。トシ。ウマレタヒ。イタミ。クウフク。ジブンノ、カンジョウサエモ」
ワカラナイ。
「デモ、デモ、アナタタチト、イッショニイタイ」
分からないけど、この人達のそばに居たらわかる気がする。
あぁ、まただ。
どうして目から雫が止まらないんだろう。
「分かったから、泣くな」
ナク……?ワタシは、泣いているの?
どうして、ワタシに向かってそんなふうに優しく微笑むの?
「じゃあ、お前が生まれた日は今日だな。で、歳は…んー、五つくらい…か?」
「でも、何年も閉じ込められ満足にご飯すらも与えられてないんじゃ…実際は十歳を超えてる可能性も……」
「とりあえず、年齢よりも名前でしょ?」
どうして、誰もワタシを否定しないの?
「菫子ってのはどうですか?」
「貴方、ネーミングセンスないわねぇ」
「今どき古いぞ?」
「えぇ?古風でいい名前じゃないですか?」
「夜」
「ちょっと、隊長!」
「なぁ。夜ってのはどうだ?」
「ヨル…?」
「黒髪に、透き通るような黄色の瞳。まるで夜空のようじゃないか」
夜空がなんだか分からないが…きっとそれは、素敵なものなのだろう。
「ワタシノ、ナマエハ……ヨル」
「「「わ…笑った!」」」
「ははっ、いい笑顔じゃねぇか」
笑う…、ワタシは今笑えているのか。
ワタシにも感情は残っていたのか。胸が暖かくなるこの感覚。きっと、この感覚は嬉しいというものだ。
ワタシは今喜んでいるのだ。
「ヨロシク、オネガイ、シマス」
「おう!家族だと思ってくれよ」
きっとワタシはこの日のことを忘れないだろう。
だって、この日はワタシに家族ができた日なのだから。