神へ至る道と勘違いの是正。
『え?え?何で?この魔力総量·····、おかしくない?って言うか、私の力が全く上がらないんですけどぉ!?』
おかしいのはお前のキャラだ!アフラーダ!
初めて会った時の神様っぽいキャラはどこに行った!?
「ふふふっ。やはり予想通りでしたね。創造神アフラーダとは、この星の意志であり、あくまでも神の力を制御する機構に過ぎない。アフラーダとはパソコンで言うOSに過ぎないのです。」
何だかマッドサイエンティストな笑みを浮かべてフローラが何やらタブレットを操作している。
あ。何となく読めてきたぞ?
神の力、つまりパソコンで言うならば処理能力を司るプロセッサやら様々なソフトを入れたハードディスクやらを制御する為にアフラーダと言うOSがある。
「つまり、この星その物にハッキングしているのか?」
「そのとぉり!!流石は社長!」
ズビシッ!っと俺を指さして来るフローラ。
何か最近マッドサイエンティストっぷりに磨きが掛かってんな。
「現在、モリー家族やセレスタ部長を初め、第2段階に至った社員達を楔にしてこの星自体にアクセスし、星の管理そのものを奪い取っております。」
そう言えばモリー、マイア、リーア、セレスタ何かの紋章2つ持ちの奴らを見ないと思っていたらそんな事をしていたのか!
「ふふふふふふふふ!すぐにアフラーダなるゴミを片付け、神の力を社長に献上させて頂きますわ!!フォーメーションα始動!!」
フローラが叫ぶと同時に全社員が蠢き出す。
俺を中心に255万の社員達が規則正しく円形に配置され、まるで何かの魔法陣や儀式の様な体制になり光り出す。
まぁ間違いなく何かの儀式なんだろうけど。
しかも確実に邪教よりだ。
「どうです!?社長!154名の第2段階に至った超越者を楔にし、255万人の超越者及び準超越者の魔力を起爆剤に、神の領域から力を奪い取る堕天術式は!!」
『はわわわわっ!ど、どんどん力が吸い取られて·····!?』
何かキャラが崩れ過ぎて別のキャラ立ちしているアフラーダの声が辺りに響く。
「神の力を吸い取り、社員や社長に還元して行くこの術式!もう少しで、社長がこの世界の神に!!」
あー。コイツらのあの異常な回復力はそのせいか。
うん。俺もさっきからやけに身体の調子が良いわ。
どう考えても昨日今日思い付いた作戦じゃないな。
コイツら、マジで神を滅ぼすつもりで準備してやがった。
しかし。んー。神·····ねぇ?
「ちょいタンマ。神の力なんか俺は要らんぞ?」
眩しいくらいに輝いていた社員達の光がピタリと止まった。
『ふえ?』
アフラーダの間の抜けた声が響く。
おい。アフラーダ。
死にたくなかったら話を合わせろ。
良いな?
『あ、はい。』
「し、社長?そ、それはどう言う事でしょうか·····。」
狼狽えながらフラウが代表して尋ねてくる。
ハッキリ言って俺は現状にかなり満足しているし、そもそも神の力なんてあっても何に使うかがわからん。
しかもアフラーダから力を取り上げてしまうと、この世界の維持管理を誰がするんだと言う話になる。
俺か?冗談じゃない。
管理職と言うのは、案外なってみると大変だ。
平社員とはまた違う責任やら仕事があるし、やらなくて良いならやりたくないのが本音だ。
まぁブラック企業経営者たる俺は、仕事を従業員に丸投げしているが、流石に神になってしまったらそうはいかんだろう。
「別に俺は社長だからな。王や神にとって変わる気はないんだよ。」
そう。そもそも俺は単なる商売人。
神様とか王様とかになるつもりはない。
「あぁ!!」、「そ、そうか·····。」、「言われて見たら当たり前のことだ。」、「我々は何て勘違いを·····。」
従業員達も神になる無意味さに気付いたのか、得心がいった様だ。
·····うん。丁度いい。
ここらでコイツらが色々勘違いしている事を正しておこう。
俺の予想していた通り、やっぱりコイツら異常に優秀で、とんでもない力を持っている。
そして、コイツらは俺をとんでもなく凄い人物だと思い込んでいるのだ。
それこそ神や王、魔王と変わらないくらいに強く賢く、そして何より清廉潔白な人物だと勘違いしている。
それを、ここで改めるとしよう。
俺は単なるブラック企業経営者で、人を騙し、使い捨てにしたエルエスト貴族達と何ら変わらないクズなのだと教えてやる。
このままお互いを勘違いをしたままで物事が進んで行くと誰も彼もが不幸になる。
あの巨大な血溜まりになった哀れな軍隊が良い例だ。
もしかしたら幻滅されるかもしれん。
もう辞めてやると見限られるかもしれんが、それはそれで仕方がないことだ。
俺は決意を胸に、真っ白な神の領域にズラっと並んだ従業員達を前にポツリポツリと語り出した。
『·····オチ読めたわ。』
うるせぇ。その前にそのキャラブレを何とかしろ!駄神!