模擬戦授業-①
前半と後半に分けました。
「ねぇ。リーシェ。これは一体どういう状況なの?」
「うん・・・その・・・色々とあってね・・・」
リーシェとアルティは木製のベンチに腰掛けて、どうしてこうなったのと言わんばかりの困惑した顔をするアルティと経緯が経緯だけにどう説明したらいいか分からず言葉の濁して、複雑な顔をするリーシェが現在の状況を俯瞰していた。
あの後、教室に来た担任のメリッタ先生に次の模擬戦授業で、リアスを筆頭にクラスメイト50人中44人が授業の一環という名目でべリアル単独との模擬戦をする許可を申請した。
メリッタ先生はリアス達とべリアルを見比べて少し考えて、模擬戦許可を出した。
「それにしても、メリッタ先生よく許可だしたね。」
「まぁ・・・確かに・・・そうだね。」
学園の敷地内にあるドーム型の闘技場のアリーナには、各々で準備体操をしながら談笑するクラスメイト達とその対面に何ももせずただ後ろで手を組んで、突っ立ているべリアルがいた。
「はっきり言って、みんなが負けるのが目に見えるんだけどね。そもそも、べリアルが召喚された時のあの押し潰されそうなほどの圧力を覚えていたら、私なら戦うどころか相対するだけでも遠慮したいのに。それを忘れて数がいれば勝てると思っているなら、頭の中がお花畑としか思えないわね。」
「アルティ。なかなか辛辣だね・・・」
アルティのクラスメイトへの辛辣なコメントにリーシェは苦笑いした。
「当然の評価だと思うよ。それに、私達以外にも4人ほど参加してない生徒がいるでしょう。戦っても勝ち目がないのがわかっているから参加してないないんだよ。」
アルティの指を指す方を見ると、アリーナの隅っこで4人ほど参加せずに二人一組でひっそりと魔術の練習をしていた。
「あの子達の方が、あそこにいる己の力量を勘違いしている集団よりよほど賢くて優秀な生徒だと思うの。」
「本当に今日は辛辣だね!?」
「当たり前でしょう。いつもいつもことあるごとにリーシェのことを無能だとか、特待無能生徒だとか、戯れ言を言うような奴らなんだよ。ここが学園じゃなければ縛り首にしているいるところなんだけど。まぁでもいいわ。二度とリーシェの陰口一つ言えないぐらいに精々ボコボコにしてべリアルに心を折ってもらいましょう。ウフフフ―――」
「アルティ!?ちょっと落ち着て。なんか凄く物騒な言葉が聞こえたんだけど。」
黒い笑顔を浮かべながらいつも以上に物騒なことを言うアルティにリーシェは先ほどリアスとクラスメイトに言われたことは言わないでおこうと思ったのだった。
「アルティさんの評価は最もだと私も思いますよ。」
「メリッタ先生・・・」
いつの間にかアルティの横に教職員用のフード付きのローブを着た白髪が多く目立つ60代の位の女性で担任のメリッタ先生がいた。
「このクラスに限らず、この学園の生徒は、なまじ大人より才能があるばかりに、負け知らずが多いものですから、自尊心が強く、他人を見下し、有頂天になる生徒が多いですからね。」
目を細めて、アリーナに立つ生徒達の方を見た。
「きっと周りの大人がそれを誰も指摘しなかったからかもしれませんが。自分の才能に溺れ、自身と相手の力量差すら判断出来ないようでは、将来確実にどこかで死にます。悪い芽は早めに摘んだほうが本人達の為です。世界には上には上がいます。一度完膚なきまでに負けて、自分を見直す良い機会になるでしょう。それに、ここでなら死んでさえいなければ、幾らでもどうにかなりますからね。」
「最後だけ物騒ですね・・・」
「私個人としてはリーシェさんの召喚獣がどのような攻撃をするのかとても興味はありますね。」
「そう言えば私、べリアルが戦ってるところ見たことない気がするなぁ。」
「私もないかな。そう言われるとちょっと気になるね。」
昨日召喚したばかりで戦闘するような場面はなかったので、当然と言えば当然なのだが。
「そろそろ始まりますよ。」
生徒達が準備を終えて、魔導書を広げたり、杖を構えたりしていた。
「さて、どうなるか見物ですね。」
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「こちらは準備が出来ましたわ。」
「そうかね。」
リアスの言葉にさほど興味がなさそうに答えた。
「考え直すなら、今のうちですわよ。こちらは44人、貴方は単独。強さに自信がおありのようですが、あの時ほどの圧力も魔力も感じない貴方には私達を全員倒すなど不可の―――」
「御託はいらないよ。早く始めたまえ。」
「なっ!!全員最低でもDランク冒険者相当の実力者ですのよ。」
「興味ないねぇ。ああ、そうだこうしよう。」
べリアルは何か思いついたようにてを叩いた。
「先手は君達に譲ろう。好きなだけ私に打ち込むといい。それまで私は一歩も動かないことを誓おう。そして、私が負けたらリーシェ共々この学園を去ろう。」
「なんですかそれ。私たちを嘗めているんですの?そんな不利な条件で戦うつもりですか。」
「その代わり、私が勝ったら君達44人にはこの学園を辞めて貰おうかねぇ。」
べリアルのその言葉に生徒達から不満が漏れる。
「はぁ。なんで俺らが・・・」
「事の証明できるんだからそれだけで十分でしょう。」
「そうだそうだ。認めてやるんだから妥協しろよ。」
「やめる話は、無能一人でいいんだよ。」
「何を言っているのかね。無能の召喚した召喚獣に負けると言うことは、君達は無能以下のゴミ屑になるんだよ?無能が学園に居てはいけないのなら無能以下のゴミ屑は即事排除詩なけなければいけないではないかね。」
べリアルの安い挑発に乗ってリアス率いるクラスメイトは一斉に呪文を詠唱を始めた。
「言ってくれたわね・・・後悔させてあげますわ。」
「「「「「炎の神よ、世界の理を超え、彼の者を焼き貫きたまえ、炎槍」」」」」
「「「「「氷の神よ、世界の理を超え、彼の者を凍てつかせたまえ、氷塔」」」」」
「「「「「風の神よ、世界の理を超え、彼の者を切りさけ、風撃」」」」」
べリアルに10を超える炎槍が次々と飛来し、大きな爆発と爆風を生み、爆発が収まった直後に爆心地の地面から5mはありそうな氷の柱が幾つも出現して、竜巻を横にしたような荒々しい風が地面を削りながら進み、直撃した氷の柱ごと破壊し、風のドーム状の大きな爆発が起こり、辺りは砂煙に包まれた。
「これは、俺らの勝ちかな。」
「そのようだね。」
「あの攻撃を受けたら、形すら残らないわ。」
「そりゃそうだ。これだけの量を喰らったら上位聖霊でも消滅するだろうからね。」
土煙の中でも分かる削られた地面は黒く焦げ、地面が陥没していて、魔術の威力を物語っていた。
しかし、土煙が晴れると爆心地にいたにも関わらず、べリアルは涼しい顔で、後ろで手を組み立っていた。
「嘘・・・ですわ・・・」
生徒達に動揺が広がる。
「おいおい、嘘だろ・・・」
「あれで無傷とか・・・」
「マジかよ。クソ。」
「どうした?これで終わりかね?」
べリアルはとてもつまらなさそうに呟いた。
「み、皆さん。もう一度―――」
リアスが呼び掛けると、再度詠唱を開始する。
「「「「「炎の神よ、世界の理を超え、彼の者を焼き貫きたまえ、炎槍」」」」」
「「「「「氷の神よ、世界の理を超え、彼の者を凍てつかせたまえ、氷塔」」」」」
「「「「「風の神よ、世界の理を超え、彼の者を切りさけ、風撃」」」」」
先ほど同じように、炎槍で爆発を起こし、氷柱に閉じ込め、それを暴風で破壊するコンボを4度ほど決めるも。
「ふむ。退屈だねぇ。」
相変わらずの無傷だった。
「そん・・・な。」
そんなべリアルの様子に生徒達の間に一瞬で絶望が広がった。
やはりあんなのに人間は勝てるはずがないと。
「う、嘘だろ・・・こんなの」
「勝てる訳がない・・・」
「ば、化け物―――」
杖や、魔導書をみんな次々と地面に落とし、その場に座り込み始めた。
「そんな・・・こんなのって・・・」
リアスは手にもった杖を落とし、その場に座り込んでしまった。
「なんだ。もう、終わりかね?ならば仕方ない―――」
べリアルはリアスの前にまで歩いて来た。
「反撃と行こうか。さぁ。しっかりと耐えてくれたまえよ。」
底冷えするような低い声で告げら恐怖で固まってしまった。
「は、はははは・・・・」
リアス達にとっては絶望の始まりであった。
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