悪意
誤字報告を受け取りました。
投稿前に一応確認はしていましたが、やっぱり抜けはあるものなんですね・・・
ゴーン―――ゴーン―――
朝の鐘の音が聞こえていつも以上に重い瞼を開く。
「あれ・・・昨日・・・何してたっけ・・・」
昨日の記憶がワインを乾杯して以降の記憶がほとんどない。
「っう―――頭が・・・痛い・・・」
異様に重い体をゆっくり起こすと両手に何か柔らかいモノを触れた。
「んぁ・・・ん?・・・柔らかい・・・なにこれ。」
はっきりしない頭で両手に感じる柔らかいモノを確かめるように、何度も揉む。
「右は・・・凄く柔らかい・・・指が沈む・・・左は・・・手に収まる・・・ほどよい・・・」
「んっ・・・あっん・・・ふぅ・・・」
「ふっ・・・くぅん・・・はぁ・・・」
揉む度に、甘いきょうせいが聞こえる。
「ん・・・あん?」
そこでようやく、自分が揉んでいるのモノの方を見た。
右にアルティの大きくたわわな胸、左にアールの控えめな小さな胸をそれぞれ揉みしだいていた。
慌てて手を離なす。
「うわっ!・・・なんで二人が私の横で裸で寝てるの?!」
「よく見たらミナトちゃんとルクシリアさんも・・・って、うひゃ―――私もだよ!!」
頭が冴えてきてみんなしてベッドで裸で寝ていたことと、自分が裸であることに気づき恥ずかしくなり自分の体を隠すように縮こまる。
「なんでみんな服着てないの!!ってそれより服は何処に・・・」
服を探して部屋の中をキョロキョロと見渡すと、テーブルの上に人数分も制服と下着と紙袋が畳んで置いてあった。
「あ、あんなところに・・・しかも綺麗に畳んであるし・・・って言うか、ベッドこんなに大きかったけ?」
確かに昨日の記憶は曖昧だが、それにしても、何か色々とおかしい気がしてならない。打ち上げ前より綺麗な部屋、明らかに巨大化しているベッド、綺麗に畳まれた制服と下着、全員全裸で寝かされていたこと、酔っていた自分達が出来る訳はない。
「そういえば・・・べリアルがいない。」
部屋を見渡すが何故か姿の見えないべリアル。
それに、かなり飲んでいたように見えたけど全然にシラフに見えた。
「・・・ということは、これはべリアルの仕業か・・・色々と気は使ってくれてくれたみたいだけど・・・」
「流石にみんな全裸にしなくてもいいでしょう・・・と言うか、全部見られた・・・恥ずかしい・・・」
べリアルを異性と認識してしまっているリーシェは、自分の知らないあいだに服を脱がされた挙げ句、裸を見られてしまったことに茹で蛸のように赤くなり恥ずかしさで顔を覆った。
「う~ん・・・リーシェちゃん、朝からうるさいよ~。」
「うにゃ~。頭。重いー。」
「ん~ん。朝からのどうしたんですか・・・リーシェちゃん」
「も~。朝からのどうしたの・・・リーシェ。」
一人で騒いでいると、みんなが目を覚ました。
「ってか・・・なんでリーシェちゃん裸なの?」
ミナトが顔だけこちらに向けて半分寝ぼけ眼でリーシェを見る
「いや。これは・・・」
リーシェがミナトの問いに僅に頬を染めて、返答に困っていると。
「日焼け跡が何かエロいねぇ~」
ニヤッと笑いからかうように言う。
「もう。変なこと言わないで下さい。それにミナトちゃんだって裸じゃないですか。」
「お?ほんとだ。服着てないや。」
「ん。全裸。なんで?」
「あらあら。いつの間に・・・」
(リ、リーシェの裸!?エロ良い。はぁはぁはぁ――――)
一人を除き、みんな自分が裸なのに気づきそれぞれ反応を示す。
「なんでみんなそんなに冷静なんですか・・・」
自分が裸であることに特になんとも感じてなそうな反応にリーシェは疑問を抱く。
「なんでって・・・私たち女同士だし、別に裸ぐらい浴場や更衣室で幾らでもみることあるしね。」
「で、でも・・・」
「私やアルティは普段から裸で寝たりしますから、特に気にしたことありませんね。」
「うん。私も。全然気にしない。」
「うぅ・・・だって・・・何か裸って恥ずかしくないですかぁ。」
モジモジしながら、頬を染め潤んだ瞳を浮かべるリーシェ。
((((なんか、凄くエロい(ですね)))))
そんなリーシェの姿にみんな満場一致で、エロいと思ってしまった。
「ところでさ、脱いだ服は何処にあるの?」
「そこの机の上にあるよ。」
「わーお。ご丁寧に畳んであるね。」
「うん。下着までセットになってる。」
「そうですね。とりあえず、着替え―――うっ。」
立ち上がろうとしたルクシリアは口元を押さえてしゃがむ。
「お姉さま?!どうしたの?!」
突然しゃがみこんだルクシリアをアルティが支える。
「吐きそうです―――うぷっ」
みんな顔が青くなった。
「ト、トイレ・・・いや間に合わない。リーシェちゃん、なにか吐けそうな袋ない?」
「えっ。そんな事言われても・・・ええと・・・」
辺りを見渡すと、机の上に制服と一緒に置かれた黒いエチケット袋が目に入る。
「ミナトちゃん。机の上、黒い袋、あれ使って。」
テーブルの上の黒い袋を指差してた。
「黒い袋・・・あれか。」
ベッドから降りて、テーブルに走る。
「ごめん。私も。ヤバイかも。」
アールも顔が真っ青なり口元を押さえる。
「ミナトちゃん・・・アールさんもヤバイ。」
「ほいほい。」
袋を二つの取り戻ってくる。
「よしこれで―――」
「「オエェェェ――――――」」
アルティとリーシェが袋を広げた瞬間にもどした。
「大丈夫ですか。アールさん・・・」
「お姉さま、大丈夫?」
リーシェはアールをアルティはルクシリアの背中を擦った。
「余り。だいじょばない。う、うぇぇぇ―――」
「調子にのり飲み過ぎたばかりに・・・うぷっ―――」
「なんかさ。二人を見てると私まで気持ち悪くなってきた・・・うぷッ―――」
「ちょっ!?ミナトちゃんまで!?」
ミナトまで口を押さえて座り込んだ。
「ちょっと待ってミナトちゃん。まだ吐かないでぇー。」
結局5人中3人が吐いてしまい落ち着くまで介抱し、その後皆で部屋のお風呂に入っていたら、2時間目の授業まで5人揃って休む羽目になってしまった。
「本当にごめんなさいね。はしたない姿を見せてしまって・・・」
「ごめん。私も。3年生なのに不甲斐ない。」
ルクシリアとアールはリーシェとアルティに謝罪をした。
アールは怒られた猫みたいにシュンとしていて可愛かったと思う二人をだだった。
「いえいえ、私達は大丈夫ですから、もう平気ですか?」
「ええ。もう落ち着きました。ありがとうございます。」
「うん。ありがとう。リーシェ、アルティ。」
「いや~。何から何までしてもらっちゃってごめんね。不甲斐ない先輩ばかりでさ。」
ベッド上で胡座をかきながら、やれやれといった仕草をしていた。
「「「「ミナト「ちゃん」はもうちょっと反省して「しなさい」。」」」」
「あい。ごめんなさい・・・反省します。」
みんなに一斉に指摘されて、ミナトはしおらしく謝った。
「授業サボっちゃったね。」
「うん。私初めて。」
「私もミナトのことは言えないですね・・・」
「あの・・・」
リーシェはみんなの様子を見て手を小さく上げた。
「リーシェ、どうしたの?」
「お腹でも空いた?」
「朝ご飯食べていませんからね。」
「そうじゃなくて、皆さん流石にそろそろ服を着ませんか?」
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「2日連続で授業サボりとか、無能の癖にいい身分だよな・・・」
「俺聞いたんだけどさ、どうやら昨日飲み会して二日酔いになったから2時間休んだって聞いたぜ。」
「マジかよ。最低だなマジで。」
「しかも参加メンバーは、アルティさんに十二将で〝銀翼〟のルクシリアさまと〝聖霊の巫女〟のミナト様、それに〝幻影亡霊〟のアール様までいたらしぜ。」
「マジかよ。羨ま―――じゃなくて、なんであんな奴に・・・」
先輩達と打ち上げをしたのはどうやらばれてるらしい。
例の如く、授業に出なかったのはリーシェにだけではないが、相変わらずリーシェの悪口だけは聞こえてくる。
「でも、看病のためとはいえ、二時間休んだのは不味かったかな。昨日も途中参加だったしなぁ。」
流石に2日連続で授業を休んだのは不味かったかなともリーシェであった。
「3時間目に登校とはいい身分ですわね。特待無能生さん。」
取り巻きを連れたリアスがリーシェの座っているの前に立ち、ゴミを見るような目でリーシェを見下ろしていた。
アルティは先生に呼ばれて職員室に行っている為教室には居なかった。
「成績最底辺の貴方が授業を休むだなんて、学園をなめているのかしら。」
「それは―――」
そんことはない。と言いたかったが、最低成績なのに授業に参加しなかったことは言い訳できないと思ったのだ。
「単位は取れないは、授業はサボるは、無能な上に生活態度まで悪いなんて、本当に救えない人ですねぇ。特待生枠が勿体無いから、さっさとやめてくれないかしら。」
便乗するように取り巻きの女生徒達も、リーシェを罵倒する。
「そうだそうだ。あんたみたいな人よりほんの少し魔力が多い程度で、詠唱すらまともに出来ない無能が特待生選ばれるなんて、あんたのせいで特待生枠に入れなかった子達が可哀想でならないね。」
「そうよそうよ。農民の癖にどうやって辺境泊家令嬢のアルティさんに取り入ったのか知りませんけど、大方アルティさんの優しさに漬け込んで同情でも買っているのでしょう。」
「違う。私はそんなことしてない。アルティとはそんな関係じゃない。友達だよ。」
「無能な農民の娘風情が、貴族と友達なれるとか勘違いも甚だしいんですわ。」
リーシェの机を思い切り叩く。
「まさか、本当に友達になれたなどと本気思っているのなら、頭の中にはお花畑じゃないですか。それに呼び捨ては何事ですか。ここじゃなければ不敬罪になるのわかってますの?」
「私は呼び捨てにして良いって言われたから呼んでるだけだよ。」
リーシェは立ち上がった。
「それの何がいけないの。そんなに言うならアルティに直接聞けばいいじゃん。」
「仮に良いと言われても農民風情が呼んで良いわけないでしょう。そんなもの建前に決まってるでしょう。それに聞いても優しいアルティさんが本当の事など言わないに決まってるでしょう。」
滅茶苦茶だとリーシェは思った。
どう答えても、真面目に答える気はないらしい。
「それでも飽きたらずに、仕舞いには十二将の先輩達を部屋に呼んで打ち上げをするとか・・・一帯何様のつもりなんですか。この学園の代表であり、ひいては最強信仰の象徴ですよ。一般生徒ですら気安く話しかける事すら出来ない尊い存在なんですよ。貴方のような無能が近づいて良い存在じゃないし声をかけるなど論外でしょう。十二将の品位まで落ちてしまいますわ。」
「そんなの関係ないでしょう。十二将の先輩達だってここの生徒だよ。それに私一人が話しかけたぐらいでどうにかなるわけないでしょう。」
言い返したところで意味はないと分かっていたけれど、言われっぱなしは納得がいかず、反論してしまう。
「貴方がそう思っても、みんながそれを認めないし、これはこの学園の伝統ですよ。あなたのせいでこの学園の伝統に傷が入ったらどうしますの?この自己中女!!」
「そんな、滅茶苦茶な―――」
「あら、ではみなさんにお聞きますけど。私が間違ったこと言っているかしら。」
賛同を求めるように教室を見渡しながら問いかける。
「そうだそうだ。自己中だ。」
「無能のくせに、屁理屈ばっか並べるな。」
「特待生枠に入れなかった生徒が可哀想だ」
「学園の伝統を壊すな。」
リアスに煽られてクラスメイトが一斉に罵倒を浴びせ始めた。
「なん―――」
今までとは比較にならない敵意を向けられて最早声が出なかった。
「このクラスメイトの声が、正しいと言う証拠です。あなたの存在はこの学園にとっての最大の汚点、いや恥ですわね。これ以上貴方のような生徒が居ると学園のレベルを疑われますわ。早急に辞めて頂けますか。」
「そうだそうだ、辞めちまえ。」
「今すぐででけよ。」
「このクラスには必要ないわ。」
「総合魔術科の汚点」
リアスの声に反応にするかのように、声は大きくなる。
「―――ッ!!」
リーシェは大勢の人間の言葉の暴力と圧力に声がでず、ただ拳を握りしめて、唇を噛んだ。
「みなさん、無能さんが迷っていますわ。私達で退学を応援して差し上げましょう。はい、やめろ。」
「「「やめろ、やめろ、やめろ」」」
手拍子付きで、煽り始めた。
「うるさい・・・」
「はい、やめろ。」
「「「「やめろ、やめろ、やめろ、やめろ」」」」
リアスが相槌を打つ度に、声も拍手も大きくなる。
「うるさい、うるさい!」
「はい、やめろ。」
「「「「「やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ」」」」」
最終的にはクラスメイトほぼ全ての生徒が参加し、拍手の音も更に大きくなった。
「うるさいって言ってるでしょうがぁ!!!」
ぶちギレたリーシェの剣幕にみんな一瞬で静かになった。
「私だって好きでこの学園に来たわけじゃないんだよ!!ある日いきなり、魔力が沢山あるからって理由だけで、半強制的に連れてこられて!!意味もわかんないまま、勝手に特待生にされて、勝手に期待されて、初めから拒否権すら与えられなかった私の気持ちがお前達にわかってたまるか!!私が居るから特待生枠に入れなかった?そんなの私が知るわけないでしょう!!拒否権なんてなかったんだから!!」
今までの不満の全てをぶちまけるように、叫んだ。
「はぁ―――はぁ―――」
捲し立てるように一気に叫んだリーシェは、息切れを起こして、肩で息をする。
「はぁ・・・お前ふざけんなよ!!」
一人の男子生徒が立ち上がって、リーシェの席にまで来た。
「俺の幼なじみは特待生枠を受験した。でも落ちた、1枠足りなかったんだ。」
そう言って、リーシェの胸ぐらを掴んだ。
「お前みたいな無能のせいでな!!あいつが落ちたんだよ。」
「だからそんなの知らないって言ってるじゃん。」
「お前が入ってるんだから、知らねーで済むわけねーだろうが!!」
滅茶苦茶な理屈である。
「知らないよ!!」
「ふざけんな、くそが。」
リーシェに向かって拳を振りかぶった。
「―――ッ!?」
殴られると思いとっさに目を瞑った。
「はい、ストップ。」
その拳はリーシェに届く事はなく、後ろから手首を捕まれた。
「君、手を出してしまったねぇ。後で、じっくり話し合いでもしようじゃないか。」
聞き慣れた声がして、リーシェは目を開けた。
「べリアル!!!」
そこには、リーシェを殴ろうとした男子生徒の手を掴むべリアルの姿があった。
「さっきから聞いていたが、実にくだらない茶番だったね。全く、ヘドがでそうだねぇ。このクラスの人間は、自分の能力がまるでリーシェより劣っていないと言わんばかりに好き放題言っているけれど、はっきり言って君達はリーシェより雑魚だよ。」
そう言って、男子生徒をリーシェから引き剥がし、床に転がした。
「それは喧嘩を売っていますの?」
リアスがべリアルを睨んだ。
「いや、売ってないよ。事実を述べただけさ。」
「そんなの事実何処にあるのかしら。」
「なら、それを証明しようじゃないか。」
べリアルは仰々しく、両手を広げる。
「君が言う無能なリーシェより強いと言うのなら、無能が召喚した召喚獣ぐらい倒せるよねぇ。」
リアスや他のクラスメイトを煽りながら答える。
「なんなら全員でかかってきてもいいよ。」
「良いでしょう。みんなで貴方を潰して霊界に送り返してあげますわ。そうでしょう、みなさん。」
リアスの呼び掛けにクラスメイトは、参加の声を上げた。
「ならちょうどいい。この後の模擬戦闘の授業だろう。その時間を使おうじゃないか。」
「良いでしょう。望むところですわ。」
「え?何があったの?」
先生の話が長く、やっと終わったと思い、戻って来ると教室で何故かリアスとべリアルが睨みあっていた。何かあったようだが、その場に居なかったアルティははてなマークを浮かべていた。
次回、べリアルvsクラスメイトです。
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可能な限り返そうと思います。