リーシェの変化
リアス奪還後の朝の訓練のお話。
リアス達を救出した後、寮に戻ってきたリーシェは、極度の緊張感から解放され、部屋に帰ってからは、死んだように眠った。
そしていつも通りベリアルに起こされて、早朝の戦闘訓練に来ていた。
「ふッ―――」
ゴブリンの攻撃を軽く身体を捻って避けると、横をすり抜けざまに側頭部に裏拳を撃ち込むとバギャという骨の砕けるような音と共に頭部は破裂し、血肉と脳漿を辺り一面に撒き散らした。
「ん〜。見事だよ、リーシェ。」
近くの木にもたれかかり、戦闘を静観していたベリアルが拍手をしていた。
「昨日は一体に5分は掛かっていたのに今日は一瞬だねぇ。」
「うん、そうだね。自分でも驚いてるよ。」
自分が持つ固有魔術を自覚して以降、真なる神の構成員との戦いの時にはすでに、相手の動作が少し見るようになった、否、遅く見えるようになった気がするのだ。
あの時は戦闘に集中していて、他の事を考える余裕は一切なかった。
しかし、思い返して見れば、以前街中で襲われたローブの男の攻撃は殆ど見えなかったのに、戦った感じ、恐らくあの構成員達は皆少なくともローブの男よりは強いようにリーシェは感じた。
「なんかね。魔術が使えるようになってから、身体が軽い気がするんだよね。」
「それは恐らく、魔術によるなんらかの身体強化が働いている可能性があるね。」
「え?魔術による強化?」
「そう強化だよ。」
「でも、それだと矛盾しない?固有魔術が使える人は、唯一無二の魔術を使える代わりに、普通の魔術は使えないんじゃなかったけ?」
「正確には少し違うようでね。確かにこの世界で一般的に魔術と呼べるものは使えない。いや、使う必要がないというべきか。」
「つまり、どゆこ————」
木にもたれかかていたベリアルの姿が一瞬消えて、目の前に現れた。
「論より証拠、試した方が早い。」
そう言うとベリアルは突然リーシェの首筋に向って手刀を放った。
「ちょ―――」
突然の攻撃に戸惑いながらも、手刀を正確に右手で受け止める。
「急に何するの!!」
「ふむ、やはりね。Bランク冒険者程度なら今ので首が飛んでいたはずなのだかね。」
その一言に、リーシェの顔が青くなる。
「ちょっと!そんな物騒な攻撃をいきなりするなんて何考えてるの!!」
突然の攻撃に怒るリーシェに対してなんでもないようにベリアルは答える。
「でも、止めただろう?」
「それは結果論だよ!受け止めたから良かったものの―――」
「だが、君は受けとめてみせた。少し前の君であれば恐らく、見えすらしなかっだろう?」
「それは・・・」
少なくとも先程のベリアルの攻撃は、昨夜戦った真なる神の構成員よりも少し速いと感じたが、止められないほどでは無かった。
「一昨日までFランクも怪しいような人間が一晩でこれ程強くなるなど、どう考えてもありえないだろう?」
「たっ確かに・・・」
「リーシェ、今の君は少なくとも下位のAランク冒険者相当の身体能力はあると思うよ。」
「え、そんなに?!」
「ランクにバラつきがあるとは言え、8人を相手に1人で拮抗したのだから妥当だとな評価だよ。」
「だからこそ、説明がつかないのだよ。それこそ魔術か何かでブーストでもしなければこうはならないからね。まぁ、明確な理由は私も分からないがね。」
「そっか・・・」
「今日はこの辺にして帰ろうかね。」
「うん。そうする。」
ガントレットを解除し、指輪に戻し大きく伸びをする。
「うぅ〜。お腹すいたなぁ。」
毎度の事だか朝食前の運動の為に終わったらいつも腹ぺこで若干お腹痛くなるほどである。
「今日のモーニングメニューなんだろうなぁ。ねぇ、早く帰ろうよ。」
ベリアルはリーシェが倒したゴブリンの死骸を眺めていた。
この1時間の間にリーシェは30体近くのゴブリンを倒していたのだ。
主の成長は嬉しいことではあるが、ここまでの急成長は流石のベリアルも予想外のことで、内心かなり驚いていた。まさかここまでとは・・・と。
「ねぇ。聞いてるの?」
呼びかけても反応しないのでベリアルの服の袖を引っ張る。
「ん、あぁ、そうだねぇ。帰ろうか。」
「どうかしたの?」
気になって、リーシェもベリアルが見ていた方に目をやる。
「いや、今日の放課後はゴブリンでなくオークに挑戦しもらうかと思ってね。」
「えぇ・・・」
それを聞いたリーシェはとても嫌そうな顔をした。
ベリアルの瞬間移動で寮に帰ってきて来たリーシェはシャワーを浴びて、制服に着替えて、いつものようにアスティを起こそうと部屋から出ると、ドアの前にリアスが待っていた。
「御機嫌よう。リーシェさん。」
「あ、おはよう。えっと・・・どうしたの?」
「いえ、その・・・リーシェさんと親睦を深めたいと思いまして、その、一緒にお食事でもどうかしら?」
いつも堂々としているリアスにしては珍しく少しもじもじしながら上目づかいでリーシェを見つめていた。
「うん、いいよ。」
そんなリアスにはにかみながら二つ返事をした。
「ありがとうございます。」
リアスはどこか安堵したような様子だった。
「なんか意外だなぁ。リアスさんもモジモジはするんだね。」
「リーシャさんは私をなんだと思っていいるんですか・・・」
ムッとした顔でジト目を向けられる。
「いや、ほら、なんかこういつもピシッとしてるっていうか・・・なんか緊張とかしなさそうだから・・・」
「そ、それは・・・その、リーシェさんとは、とっ友達になったなったと言いましても、やはり・・・いっいままでことがありますし、その・・・」
バツが悪そうに髪をいじりながら、チラチラとリーシェを見る。
「断られたらどうしかと・・・」
最後の方は小さくて聞き取れなかった。
「ぷふっ―――」
そんな普段見ない可愛らしいリアスの姿にリーシェは思わず吐き出してしまった。
「なっ・・・なにも笑うことないでしょう?!」
「あぁ、そのごめんごめん。可愛いなぁと思って。」
「かっかわ・・・」
リアスの顔が赤くなる。
「もう、前のことは気にしなくていいって言ったんだからさ。一緒に行こう?」
そう言ってリーシェはリアスの手を握った。
「そうですわね。」
リアスも満面の笑みで返した。
「でも、取り敢えず、アルティー起こしてからねー」
そう言って、軽くノックをしてとアルティーの部屋の扉を開けるのだった。
次は近いうちに更新します。今度こそ校内戦の内容に入ります。
新作書いてみました。
授業中に寝落ちして起きたら異世界で異形になってた高校生と盲目の少女の異種族冒険ダークファンタジーです。
「寝落ちしたら異形になったようで・・・」
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