リーシェの戦い
まず最初に、1ヶ月近く投稿せずにすみませんでした。
結論から言いますと、先月風邪を引きました。そしてなんか耳が夜も寝れない程に痛くなり、次の日にはほぼ聞こえなくなり、慌てて耳鼻科に行くと中耳炎とか鼓膜炎とか色々言われ手術するはめになり、終わったあともしばらくは耳鼻科通いで、痛みが酷く執筆が手に着かずに、熱も下がらず、これで1ヶ月近く再起不能になり落ちついてきたのが先週の金曜日ぐらいでしたね。
皆さんも体調管理には気を付けてください。
リーシェは拳を構えたまま、一番近くに居るショートソードを装備したローブの男に向かって地面を蹴る。
(おぉぉ・・・すごく身体が軽い!)
身体がグンッと加速し、自分体重が0に等しい程軽くなったリーシェは、まるで飛行するかのように身体が宙に浮く。
「なっ・・・きっ、貴様・・・なんだそのまじゅ―――」
我に帰った真なる神の構成員達が言い終わるのを待たずに、5m程の距離を一度も床に足を着ける事なく、一瞬で一番近い男の間合いを詰める。
「なっ、速い!?」
一番近くに居たコートの男はショートソードを構え迫るリーシェに向かって右の横凪ぎを放った。しかし、刃がリーシェに触れる直前に視界から消えた。
「なぁッッッ!?消え―――」
ショートソードは空を切り、行き場を失ったショートソードの勢いに身体が流される。
ふと、身体を捻りながら足元に目線を落とすと、そこには、リーシェが男の膝下あたり顔があった。
(まさか・・・あの状態からわざわざ屈んで回避したのか!!)
男は目を驚愕に目を見開いた。
前のめりで足が着いていないあの状態から突然消えたと錯覚する程の超低姿勢回避をしたのだ。しかも、そんな明らかに無理な姿勢にもかかわらず両足共に床に着かずにである。
(こいつ、なんて滅茶苦茶な身体能力してやがるんだ!?)
実際はリーシェの身体能力ではなく、横凪ぎ寸前で魔術で自分の身体を重くて、無理矢理地面にぶつかるすれすれまで引っ張り軽くすることで一瞬で相手の死角に入る超低姿勢回避を可能にしたのだ。
(ふぃー。危ない危ない、もう少しで床にめり込んじゃうとこだったよ・・・この避けかたは、練習しないとだね。)
最も、リーシェがこの超低姿勢回避を成功させたのは完全なる偶然で、横凪ぎを回避する術が思い付かず咄嗟にやってみたら成功しただけではあるが。
(後は―――)
リーシェは超低姿勢のまま、ローブの男の身体ではなく、右足に手を伸ばす。
(相手に触れるだけ―――)
ローブの男の横をすり抜け様に右手で右膝に軽く触れて、前転で受身を取り、ゆっくりと立ち上がる。
「えっ、膝に・・・触れただけ!?」
てっきり、殴られると思っていたローブの男は、リーシェが膝に軽く触れるだけだった事に驚きつつも、これといって身体に不調は無さそうなので、振り返り、ショートソードを振りかぶる。
バキンッッッ―――
なんの前触れもなく床が抜け、ショートソードを振り上げたままローブの男が床下に消え、ドォォォン、と建物が揺れるような音と振動が建物内に響いた。
「まずは、1人目―――」
リーシェを囲むように武器や杖を構えたローブの男達を見渡しながら牽制するかのように小さく呟く。
「お前・・・一体何をした・・・」
床を突き破り一瞬にして消えた仲間の姿を目の当たりにしたローブの男達の顔には皆一様に驚きを隠せないでいた。
「なにって・・・そんな大したことはしてないよ。」
首だけを僅かに動かして、床の穴に目をやる。
「私はただ、あの人の体重を重くしただけ・・・その結果、床が重さに耐えられなくて、突き破って落下した。ただそれだけだよ。」
なんて事無いかのように淡々とリーシェは男達に告げ、ローブの男達は更に驚きに目を見開いた。
「重く・・・しただと・・・そんな魔術聞いたことがねぇよ。」
「あれ?最初に言わなかったっけ、重軽操魔術って。」
リーシェはノリと勢いで、自分の魔術の事をかっこよく呟いたつもりだったのに、もしかして、誰も聞いていなかったのかなと小首を傾げた。
「重軽操魔術だと・・・そんな魔術聞いたこと―――」
ない。と言いかけて、男はある一つの可能性に行きつき、息を飲んだ。
まさか、そんな筈はないと頭では考えつつも、小さく呟く。
「まさか・・・固有魔術」
「そうですよ。読んで字の如く、生物や物体の重さを自在に操る力。それが私の使える唯一の魔術だからね。」
「なん・・・だと・・・」
「まさか・・・ここに来て、全く情報のない固有魔術使いの登場とはな・・・」
「学園側が、こんな隠し玉を持っていたとは完全に予想外だ・・・」
固有魔術の保有者は世界でも、100といないうえに、保持者は皆一様に世界に名だたる冒険者や魔王などであり、必然的にその存在を世界中が大きく注目し、どうにかこうにか組織に引き入れられないかと、国家、教会、犯罪組織などがこぞって勧誘合戦をすることもよくある話だ。
その為今現在、現存している全ての固有魔術保有者の情報は世界中を飛び交っている。
ところが目の前のリーシェはどうだ。
固有魔術の保有者でありながら、これまでなんの情報も無く、全くの無名であり、真なる神の世界最高クラスの情報網を持ってしても、新たな固有魔術保有者の誕生など情報は無かったのに。
「ははは・・・こりゃまた、荒れそうだな。組織に知らせ―――」
ローブの男の一人が魔術を行使しようとするのをリーシェは見逃さなかった。
「させないよ。ここで全員捕まえて、騎士団に突き出す!」
リーシェは地面を蹴り、魔術を行使してローブの男に接近する。
「ちっ、くそ、応戦するぞ!」
「ああ。」
「やるしかねーな。」
接近するリーシェに対し黒色の槍やロングソード、ショートソード、大剣、曲刀、ナイフなど装備した男達六人が前に出る。
「援護する。」
そして、更にその後ろの魔術師3名が呪文を唱える。
「彼の者の肉体を強靭にしたまえ、筋力強化」
「彼の者を守る鎧となれ、衝撃軽減」
「彼の者の魔力を強化せよ、魔力上昇」
後方から魔術の支援を受けたローブの男達は一斉にリーシェに飛び掛かる。
「ふっ―――」
リーシェは短く息を吐き、右の脇腹を狙うロングソードを右手の甲で弾き、首を狙う槍を手首で受け流して、回避する。
「なっ!?」
「バカな!!」
一方で攻撃を回避された男二人は、筋力強化魔術を受けた状態で放つ渾身の一撃をまるであしらうように流され、目を見開いた。
「効かないよ。剣撃を軽くしたからね。」
体勢を崩した槍の男の肩を触り、ロングソードの男の脇腹に触れる。
「そのまま、落ちて―――」
リーシェが小さく呟くと、バキンッッッと鈍い木材の粉砕音を共に男二人が床の穴となり消える。
「くそ、二人やられた。」
「こうなったら・・・連携Bだ。」
大剣の男が叫ぶと、他の男達一斉に頷き、大剣の男とナイフの男、曲刀の男とショートソードの男がそれぞれペアとなり、左右から囲むようにリーシェに迫る。
(なんだろう、動きが変わった!)
力任せに突撃してきた先程とは違い、リーシェを四方向から囲むような陣形に怪訝な顔で男達を見渡す。
「ふんっ―――」
「しっ―――」
大剣の横凪ぎとナイフ二刀流の連撃が繰り出される。
リーシェは大剣の左手首で受けとめ、ナイフの連撃を手刀と手の甲で弾きながら大剣を受け流し、大剣の男に触れようと手を伸ばすが―――
「させるかよ!」
それを図っていたかのように、斜め左前と右斜め後ろからのショートソードと曲刀の男二人が同時に、攻撃を仕掛ける。
「くっ―――」
リーシェはナイフの男の攻撃の重さを操り弾き飛ばすと、自身の重さを操り、無理矢理身体を捩って左手の甲でショートソードを受け、曲刀を手刀で受けた。しかし―――
「っあッッ―――」
左肩に鋭い痛みを感じ、ふと見ると曲刀の先端が3cmばかり、刺さっていた。
(しまった・・・曲刀だから、普通に防ぐんじゃダメだ―――)
直ぐに曲刀を弾き出したが、痛みを気にする暇を与えないと言わんばかりの、大剣の一撃とナイフの連撃が迫り、それに合わせるかのように、ショートソードと曲刀の受けにくい息の合った連携攻撃が五回、十回と繰り出される。
「ッあ・・・くぅ・・・」
身体の無理矢理魔術で操りしながら、どうにかこうにか、致命傷を回避してはいるが、頬、腕、脇腹、肩、脹ら脛など幾つもの掠り傷をつくっていた。
(はぁ―――はぁ―――不味い・・・このままだと・・・じり貧だよ・・・)
肩で息のしながら、このままではいずれ詰むと感じたリーシェは、後ろへ跳ぶと、前に居る大剣の男とショートソードの男の間から炎の槍がリーシェに向けて迫っていた。
「っ!?ここで魔術攻撃―――」
四人からの攻撃を防ぐのに必死すぎて、魔術師の存在を完全に忘れていた。
バックステップで浮いた身体をイナバウアーのように背中を重くして、無理矢理回避する。
ミシッミシッと骨の軋むような音がして、背中に激しい痛みが走った。
「ひぎぃッ―――」
一瞬、頭が真っ白になり声にならないような悲鳴が漏れた。
しかし、畳み掛けるように、氷の槍とがリーシェに迫りくる。
「っあぁぁぁぁぁッッッ―――」
リーシェは痛みを我慢しながらもう一度魔術を行使し、身体を左に捻って氷の槍を接触するギリギリの所で回避して、正面を向いた瞬間――――――
目の前に雷の槍が目の前にあった。
「うそ・・・こんなの・・・」
そう、接触まで30cmを切った距離では近すぎて最早、防ぐ事は不可能であった。そう理解した瞬間、身体に全身を焼かれるような激痛が走った。
「いぎぃぃぃぁぁぁぁぁッッッ―――」
頭が真っ白になり、自分の物とは思えない悲鳴を挙げながら、5mほど吹き飛ばされて、壁に思いきり叩きつけられ、うつ伏せで床へ落下した。
「ごふッッ―――ごほ・・・ごほ・・・」
口からは血を吐きながら、右手に力を込めるも震えるばかりで全身が痺れ、激痛と怠さが支配し、視界がぐるぐると回り、最早、とても動ける状態ではなかった。
「あ・・・あぁ・・・うぅ・・・」
全身麻痺状態で、動く所かまともに喋ることすら出来ないリーシェの様子を確認するとコートの男達は、警戒を緩め、勝利に浸り始めた。
「ふぅ―――どうにか、戦闘不能にはできたな。」
「ああ・・・あの連撃を防がれた時は正直驚いたが、まぁ、所詮相手は学生だしな。」
「ちげーねーや。それにしても、良質な生け贄だけでなく、 新種の固有魔術保持者まで、捕まえることが出来るとはな。」
「そうだな。こりゃ、出世確定だぜ。幹部にでもなれるかもな。」
そんな事を駄弁りながら、男達は、リーシェの元へと近づく。
「あっぁぁ・・・あぅ・・・あぁぁ・・・」
手足に力を込めて、必死に起き上がろうと足掻くも、生まれたての小鹿のように、立とうとしてはこけるを先程から繰り返していた。
(くッ、ちくしょォッッ―――寝てる場合じゃないのに・・・)
右手に力を込め、身体を持ち上げるも直ぐに倒れ込む。
(私が守らなきゃ・・・いけないのに・・・どうして・・・)
自身を奮い立たせようと、身体は言うことを聞かずに倒れ込む。
「おいおい、まだやってるぜ・・・」
「無駄無駄、雷槍をもろに食らったんだぜ。三日はまともにうごけねぇよ。」
「ははは―――生まれたての小鹿のみたいにプルプルしてやがるぜ。」
男達は起き上がろうとするリーシェを見て、馬鹿にしたような笑っていた。
(嫌だ!!こんなの所で・・・終わりたくない!!)
両手にありったけの力を込める。
「あっぁぁぁぁぁぁッッッ―――」
身体がゆっくりと持ち上がり、近くにあった木製柱を指が木にめり込むほど強く掴んだ。
「がぁぁぁぁぁぁぁッッッッ――――――」
柱を軸にしてガクガクと震える足を支え、リーシェは立ち上がり、男達を睨み付ける。
「嘘だろ・・・立ちやがった・・・」
「マジかよ・・・三日はうげねぇ攻撃を喰らってんのに・・・」
そして、柱から手を離し肩で激しく息を切らしながら、一歩前に踏み出す。
(まだ・・・まだだ・・・)
よろよろと更に一歩踏み出す。
(私は・・・まだ・・・戦え―――)
もう一歩を踏み出した途端に足が縺れて、前のめりに身体が倒れる。
(ちく・・・しょう・・・)
床に吸い込まれるように倒れる込むリーシェの身体は誰かに抱き止められた。
「見事だリーシェよ。よく頑張ったみたいだね。」
それは聞き覚えのある男性の声だった。
「べ・・り・・・あ・・・る?」
「そうだ。私だよリーシェ。君の召喚獣のべリアルだとも。」
「そっ・・・か・・・来て・・・くれた・・・んだね。」
べリアルはリーシェを床に寝かせ、上着を掛ける。
「あぁ。遅くなって済まないね。君はそこで休んでいるといい。私が全て終らせるからね。」
リーシェの頭を優しく撫でると、べリアルはゆっくりと立ち上がる。
「バカな・・・なんで・・・ここに・・・デルミア様と戦っていた筈―――」
「はっきり言わねば分からないかね?私が戻ってきて、彼女は戻ってこなかった。それが結果だろう?」
「そんな・・・ばかな・・・準魔王クラスで最高幹部のデルミア様が負けるなど・・・有り得ない・・・」
「君たち人間はいつもそうだね。自分が認めたくない現実を受け入れようとせず、すぐ否定するきらいがあるよね。」
「有り得ない・・・そんな・・・」
「さて。随分と私の契約者をいたぶってくれたようだね。君たち。」
「ひぃ―――」
べリアルに心臓を握り締められるような、おぞましい殺気にコートの男達は悲鳴を挙げ後ずさる。
「この世の地獄を教えてあげよう。全員楽には殺してあげないよ。」
さて、なんか凄く長くなってしまった二章も次話で終わり、作者が連載当初から書きたかった三章が始まります。
次話は2、3日後になります。




