3人の生徒
次回はリーシェ初の対人戦闘です。
廊下に出たリーシェは、周囲をしきりに確認しながら足音を立てないようにゆっくりと歩きリアスが居た部屋の右隣の部屋の扉のドアノブを音をさせないように両手で握り捻ってゆっくりと引いた。キィィィと蝶番が軋む音が僅かばかり立てながら少し開け、中を覗いた。
(居た!)
リアスの部屋と同じく木箱が無数に積まれた暗い部屋の中に手足を縛られた褐色白髪の少し幼い少女が横たわっていた。
黒色の制服から察するに、武戦学園の生徒のようだ。
(扉を開けても反応がない。とりあえず、生きてるか確認しないと。)
部屋の中に入り扉を閉めて褐色の少女に近づき横になっている体を仰向けにして、胸の動きと呼吸の確認する。
「んっ・・・すぅ・・・すぅ・・・」
どうやら寝ているだけのようだ。しかも若干幸せそうな顔で。
「もしもーし。起きてください~。」
声を掛けながら身体を揺らすが全く起きる気配がない。
「むはぁ・・・もぅ、食べられないにゃい・・・おしゅし・・・ぎゅうどん・・・かいせん・・・むにゃむにゃ・・・」
しかもお腹いっぱい何かを食べているような寝言である。
(・・・ダメだ。この子は後にした方が良さそう。)
見たところ怪我をしている様子や乱暴されたような感じは無さそうだし、とりあえず手足のロープだけほどいて、違う部屋を調べよう。
(それにしても、おしゅし?ぎゅうどん?どういう料理なんだろう?聞いたことないなぁ。後でみんなに聞いてみよう。)
褐色少女の部屋の戸を静かに閉めて周囲を確認しながら向かい側の部屋に静かに開ける。
「な、なに?!」
薄暗い部屋の中で手足を縛られた状態で身を捩りながら身体を起こし白い制服の兎人族の少女は、誰も居ないのにひとりでに開いた扉に身体をビクッと震わせて、耳を逆立てて此方を凝視した。
「誰か・・・居るんですか・・・」
リーシェはそっと扉を閉める。
「え?何?なんなんですか・・・やっぱり誰か居ますよね・・・」
薄暗い部屋を仕切りにキョロキョロしながら、誰かの姿を探していた。
リーシェはゆっくりと兎人族の少女に近づき小声で声を掛ける。
「あの―――」
「きゃぁ―――んむッ?!」
突然どこからともなくした声に驚いて叫び声を上げそうになった兎人族の少女の口を反射的に塞いだ。
「静かにして、見回りの人にバレちゃうから。」
「ん・・・」
リーシェの声に首を縦に振ると、手を離した。
「あの・・・貴方は、いったい・・・」
「細かい説明は省きますけど、助けに来ました。」
「本当ですか?!」
兎人族の少女は目を輝かせて思わず叫ぶ。
「しー!!だから、声が大きいって、見つかるよ。」
「あ、ごめんなさい・・・」
「今縄を切るから、動かないでね。」
懐から折り畳みナイフを取りだし、手、足の順番にロープを切る。
「ふぃ・・・助かりました。一時はどうなることかと思いましたよ・・・」
「ところで声しか聞こえませんが何処に居るんですか?」
ロープを解かれた兎人族の少女は手足が動くことを確認しながら助けてくれたであろうリーシェ姿を探していた。
「私の姿は透明化魔術の影響でそっちからは見えないよ。」
「と、透明化魔術?!そんなものがあるんですか?」
「まぁ・・・私は掛けて貰っただけだけどね。」
「それでもすごいです・・・」
兎人族の少女は目を輝かせてもっと詳しく聞きたそうな顔で此方を見ていた。
「あぁ・・・ごめんけど。今はあまり時間がないの、貴方以外にも3人捕まってる人がいるの。」
「私以外にも居たんですね。」
「その中の私のクラスメイトのリアスさんも捕まってるんだけど。」
「アスキード家の御令嬢ですね。知っていますよ。彼女も居るんですね。」
「それで、リアスさん案で、出来るだけみんなが一ヶ所に集まって、助けを待った方が良いてなったの。だからリアスさんの居る部屋に行って欲しいんだ。場所はこの部屋の出て、正面に見える部屋の右の部屋にいるから。」
「・・・分かりました。貴方は?」
「最後の一人と寝ていた子を起こしてリアスさんの部屋に行きます。だから、先に行っておいてください。」
「そうですか。ご武運を・・・」
「そちらこそ、バレないでくださいよ。」
リーシェが静かにドアを開け、周囲を確認して出ていくと、そのすぐ後に兎人族の少女が恐る恐る部屋から出ると、忍び足でリアスの部屋に歩いて行くのを確認すると、兎人族の少女がいた部屋の右隣部屋を静かにドアを開けた。
「待っとったで。助けに来たんやろ?」
黒髪セミロングに紫色の瞳の黒色の制服を着た女子生徒がドアを開けたリーシェの方を見ながら薄く笑った。
「もしかして、見えてるの?」
リーシェは目を見開いた。まさか透明化魔術で本来は姿は見えないはずなのに、この子には見えているのではないかと。
「うんや。見えてへんよ。」
黒色の少女は頭を振った。
「うちはな、もの凄~く、耳がええねん。せやから、お前さんがうちらを助けに来たっちゅうことも、リアスはんの部屋にみんな集まって、助けに待とうっちゅうことも全部な。」
「驚いた・・・あの会話が全部聞こえてたなんて・・・かなり小声で喋ってたはずだったのに。」
「さっきの会話だけやあらへんんけど・・・まぁ、そういうことやさかい。説明は要らへんよ。なんなら、寝とる奴運ぶの手伝うで。」
ロープから解放された手足の動きを確認しながら、リーシェの方を見て、にっこり笑った。
「本当に?助かるよ。」
「まぁ。お前さんの連れが助けに来るみたいやさかい、ついでやついで。」
そんな訳でトントン拍子に話が進んで、リーシェと黒色の少女で慎重に褐色の少女を持ち上げ、静かにリアス部屋に運び込んだ。
「これで、全員ですわね。」
リアスは部屋に入ってきたメンバーを見ながら、呟く。
「では、これから―――」
「ちょい待ちぃ―――」
リアスが話そうとするのを黒髪少女が抑止して、耳をそばたてる。
「登ってきよるで、階段を・・・」
全員の表情の青くなっていく。
「な、何人ですの?」
「声の数からして、たぶん、3人や。」
「ど、どんな事を言ってるんですか・・・」
「なんか。捕らえた女の声がした気がしたから、確認する言うてるで。」
「そんな・・・私のせいで・・・」
兎人族の少女は肩を落とし、泣きそうな顔をしていた。
「とにかく、どうにかして誤魔化さなければなりませんはね。」
「どないする気や?」
「き、木箱に隠れましょう。」
「横の部屋見られたら一発でバレるで。」
「では、魔術で―――」
「首輪をせいで使えんやろ。」
などど、3人で言い争っている間にも着実に足音は近づいていた。
「私が行く。」
3人は一斉にリーシェを見た。
「まだ、透明化魔術の効果時間だから、私が戦って時間を稼ぐ。」
「無茶ですわ!!貴方戦闘経験0じゃないですの!!!」
「見くびらないでよね。これでも、毎日修業してるんだから、少しは戦えるよ。」
「相手はCからBクラスの実力があるのよ?そんな数日の修業したぐらいでどうこうなる相手じゃないですわよ!!!」
「分かってる・・・それでも、今戦えるのは私だけだから―――」
リーシェはそう言い残すと、指輪に魔力を込め、ガントレットを纏い、扉の前に立った。
「それじゃあ、みんな行ってくるね―――」
「あっちょっと待ちなさ―――」
リーシェは扉を開けて、階段に向かって走り、登って来ている先頭の男にタックルをかました。
「ぐえぅッッ、何だ!?」
男は透明化したリーシェのタックルに体勢を崩し、階段から落ちて、いった。
「うわ、なんだ?」
「おいおい、どうした?」
いぶかしげ表情で階段を上を見つめていた。
(この先に行かせる訳にはいかない!!)
リーシェは拳を構え、ファイティングポーズを取る。
(自分が見えないのはセコいかも知れないけれど、今は有効活用させて貰うよ!!)
リーシェは一歩踏み込んで、拳を構えたまま階段を飛び降りた。
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